縁の下の力持ち
俺、クロサキ シュンは、ある人に感謝していた。
あれはまだ俺が高校に入学したばかりの頃だった。
俺の家は父、母、俺、弟のどこにでもいるような家族だ。
そんな弟はまだ小学四年生で、加えて内気だったのでいつも公園で遊んでいた。
そして俺の日課はそんな弟を公園に迎いに行くことだ。
ある日俺がいつものように弟を迎えに行くと、柄の悪い高校生が数人で俺の弟を取り囲んでいた。
俺は喧嘩とかしたことないから、内心ビクビクしながどうしようかそんなことを考えている......そんな時だった。
一人の男子高校生がその柄の悪い奴らに走って行き、ドロップキックを食らわしたのを見たのは......。
案の定そいつらは反撃しようとしたが、見回り中の警察官が来たので一目散に逃げて行く。
その後その男子高校生が弟に何か言って、頭を撫でるとまた何処かに走り去ってしまった。
俺は弟に近づいて聞いた。
「さっきの人になんて言われたんだ?」
弟はニコニコしながら口を開く。
「俺の名前を呼べばいつでも来てやるって言ってたよ!」
そんなまるでヒーローのような人の名前が気になったので俺は弟に訊く。
「それで名前は何ていうんだ?」
「竜胆悠斗だって!」
その日、俺は竜胆悠斗という人の存在を初めて知ったのだ。
そして二年生になった時、初めて彼と同じクラスになる。
どうにかしてお礼を言いたいが、彼の近くにはいつも仲の良い男子生徒と女子生徒がいたから近づけずいつも遠くの席から眺めることしたできなかったのだ。
時々目が合ったりしたので誤魔化すのが大変だった。
勘違いしてほしくないが、俺はホモではない。
......だが羨ましく見えた。
彼のような人を友達に持っている彼らが......。
多分その頃から俺は彼と友達になりたかったのだろう。
しかしその願いは叶わなかった。
ある日、俺達は突然異世界召喚などと言ったものに巻き込まれたからだ。
そしてその後のダンジョンでの実戦訓練で歯車が狂ってしまう。
結果、彼、竜胆悠斗が帰らぬ人になってしまったからだ。
俺はとても後悔した。
いつでも言えたはずだったのに......感謝の言葉を。
その後の彼の友人2人は変わってしまう。
しかしそんな俺も変わってしまってたのだ。
それに気が付いたのはダンジョンでの訓練に力が入らないからだ。
最初は実感しなかったが、最近になってその理由に気が付く。
多分......本来の力を使う場所を間違っていたからだろう。
俺は亡くなった彼のことを思い出す。
彼には彼女がいた。
彼の友人である冬島雪さんだ。
もし俺が、今は亡き彼に感謝を伝えれるとしたら、それは......。
「おいスドウ、ちょっといいか?」
「何だよクロサキかよ、俺はフユジマに用事があるんだ。早くしてくれ」
彼女に纏わりつく......。
「すまないが、フユジマさんが嫌がっているんだ。もう関わるな」
「なんでお前にそんなこと言われないといけないんだよ!」
害悪を......。
「それが彼の意志だからだ」
排除することだ......。