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悪魔の囁き

あのオタクが死んで三か月が経とうとしている。


 当初はやっと冬島を手に入れると思ったが、なぜか彼女が俺の誘いに乗らない。


 それになぜあいつが邪魔をするのかも分からない。


「あー! イライラする!」


 俺ー須藤剛は現在の状況にイラつきながら森の中を一人で歩いている。


「クソッ! どうすれば冬島は俺のものになるんだ」


 ”そんなの簡単なことじゃないか”


 突然俺の脳内に誰かの囁きが聞こえた。


 ここらは俺のような勇者以外絶対に人がいるような場所じゃないはずだ。


「おい! 誰なんだ! いるなら出てこい!」


 今度は鮮明にその声が聞こえてくる。


 ”ごめんね、ここに実体はないから出て来れないかな”

 

 声から判断すると若い男のようにも思える。


「じゃあお前は一体誰なんだ!?」


 ”ん~そうだねえ......一言で言うと神様だね”


「神......?」


 まさかオタクを殺したことで何か罰するつもりなのか!?


 ”そんなつもりは全然ないから安心して”


 まるで今の俺の考えが聞こえたかのようにその神という奴は答えた。

 

「お前......俺の心が読めるのか?」


 ”ん~まあ一応神だからね。そのぐらい御手の物だよ”


「それで、その神が一体俺に何の用なんだ!?」


 ”そんなの決まってるじゃないか......君の要望に応えるためだよ”


「俺の要望?」


 ”そう君の要望。彼女、冬島さんだっけ。手に入れたいんでしょ?”


「当たり前だ! だからオタクを殺したんだ!」


 ”うん、君すごくいいね。だから僕もそんな君に力を貸すよ。”


「そんなの後で命を寄越せとか言うんだろ。俺は騙されないぞ!」


 ”まさか、そんな罰当たりなことしないよ。それに君にあの魔法をプレゼンとしたのもこの僕なんだから”


 あの魔法? 一体何の話をしているんだ?


 俺の心を読んだのかその神は今抱いている疑問の答えを教えてくる。


 ”ほらあれだよ、君がオタク君? だっけ。まあいいや、彼を殺すために使ったあの精神魔法は僕からのプレゼンだったんだよ”


「......何で俺にそれを寄越したんだ?」


 ”僕は優しい神様だからね、君のように現状に困っている人を見過ごすことはしたくないんだ”


 たしかに困っていた......オタクがいたせいで冬島が俺のものにならなかったからな。


 俺はどこにいるか分からない神に対して少し頭を下げることにする。


「......そうか、それについては助かった」


 ”気にしなくてもいいよ、それに君の願いはまだ叶ってないからね”


 その通りだ、俺の願いである冬島を手に入れることがまだできていない。


「その言い方だと......まさかまだ俺に力を貸してくれるのか?」


 ”もちろんだよ、僕は一度決めたことは絶対にやめたくないからね。君の願いも......そして僕の願いも”


「神なら願い事なんてものないんじゃないのか?」


 ”ん~それが難しいんだよね、君の願いは目の前にあるものだけど......僕の願いは君のような困っている人に手助けすることによって、初めて一歩近づくからね。だからかなりの年月を懸けてきたんだ。そしてやっと、それに手が届きそうなくらい距離にまで近づくことができたんだ”


 それはまるで幼い時から夢見てきたことが今まさに実現できることに歓喜しているように俺には感じた。


 神が願うことだ、誰だって気になるだろ。


「ふ~ん......それであんたの願いってのは何なんだ?」


 大方、世界平和といったありふれたものだろうと考えて上で、俺は神の願いってものが何なのか訊いてみた。


 ”やっぱり気になっちゃうか~......うん、仕方ない特別に教えてあげよう”


 俺は脳内に聞こえてくるはずなのに何故か耳を澄まして聞く体勢に入る。


「それで何なんだ、その願いってのは?」


 ”......俺の長年の願い。それは”


 そう問いかけると突然、いままで親しみやすさがあったその神の雰囲気と口調がガラリと変化したのに気が付いた。


 しかしそこで俺の意識は飛びかけてようとしたが、その一瞬たしかにこう聞こえてきたんだ。


 ”この世界を絶望で染めることだ”


 

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