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神々

「......冗談だろ?」


 俺は上司がとうとう認知症か何かでボケている可能性を信じて再度訊き返した。


 しかし俺の願い空しく彼は当たり前のように、


「何を勘違いしているか知らんが、その二つの大陸も君達の仕事場じゃよ」


「......ふー分かった。なら何でその大陸まで行かないのといけないんだ?」


 これが縦社会だ......上司の言うことには対して、「はい元気です!」以外の返事をしてはいけないから諦めるしかないのだ......今の返事は何らおかしいことではないぞ、なぜなら学校は社会の縮図とも言う。それにどこかの会社では朝礼では、「オイショ! オイショ!」と言っていたのだからな、過去形なのは察してくれ。とにかくだ、会社はオールウェイズでフェスティバル状態、なら社会もそうなるのではないだろうか。

 

 デューイ先生に従って俺は豊田さんのことを考えているが、そんな俺を露知らずオーブリーはその理由を口にする。


「そんなこと決まっておるじゃろ。その二つの大陸にも堕落した神々がいるからじゃ」


「......ちょっと待って、そいつらはこの大陸にしかいないんじゃないか?」


 なんで世界各地にいるんだよ、そいつらってもしかして七つの玉なのか? レーダーとかないの? ないならそれこそ無理ゲーだよね? てかなんで俺達がこんなことしなければならないんだ?


「そう言えば、まだ説明していなかったのお」


 都合の悪い時に限って思考を読み取らないオーブリーは、その勢いで『衝撃の事実3!!』を俺に告げる。


「その二つの大陸にも儂ら同様にそれぞれの神々がおるからじゃ」


 これで質問し返すと話がややこしくなる。


「......分かった。仮にそうだとしてもだ、俺とアスナだけじゃ対処できないだろ?」


 俺達は千手観音みたくあんなに手は存在しない、だから百式観音の会長を呼んで、『無慈悲の咆哮である』をやってもらわんと無理だろ。


「そのことなら問題ない」


 オーブリーが迷いなく言い切った。


 まさか来ちゃうのか? 会長来ちゃうのか? まあ死んでっけどな......つまり幽霊! 圧倒的感謝! ただし兵藤ではない!


 会長ともう一人の会長もいいとして、今はその確信はどこから来ているのかを確認しなければない。


「なんで問題じゃないだ?」


「君達の他にも今のところ一人いるからじゃ」


 それじゃあそいつだけで別の大陸に行ってもらいたいな、ほら俺ってあんまし好奇心ないからさ......うそです好奇心旺盛です。そのことについて「私、気になります!」みたいな感じです。


「誰だそいつ?」


「ある天使族じゃ」


 ......あ~思い出した。


 さっきからカイジに会長、果ては古典部まで出て来たからな、それに合わせてスケールまででかくなるから完全に忘れてたわ。


「なあその天使族って俺と似たようなスキル使ってたらしいんだが......ホントなのか?」


「そういえば......セスとも話しておったな。その通りじゃよ」


 それと聞くと俺は堪らず聞いた。


「じゃあ俺の天職とも関係あるってことだよな!?」


「そうじゃな」


「俺の天職ってのは一体何なんだ!? 国の人間も分からないの一点張りだからな......」


 あそこの図書館にある本も天職について詳しい人でも、『ユウトの天職が一切分からない件』を見ているような顔をしていたからな......どんな顔だ?


 そんな俺の言い分を聞いた後にオーブリーは俺の目を見て確認するかのように、


「君の天職は暗黒魔術師じゃな?」


「あぁそうだが......」


 俺の返答に彼は満足そうに頷く。


「そしてその天使族の天職は光明魔術師というもので、それらは対になって初めてその真価を発揮するそうじゃ」


「......真価ってのは何だ?」


 真価ってことはそのものの持つ真の価値や能力っていう意味でいいだろうけど、そもそもその天使族がどんな奴なのかも知らないっていうのも問題だろう。


 しかしオーブリーは申し訳なさそう顔をしながら、


「すまんが今は言えんのじゃ」


 ......なら仕方ないか、彼にも自分の立場があるだろうし。


「......じゃが、彼女とは時期会えるじゃろうからその時まで辛抱じゃ」


 彼が俺を気遣ったかそう言ってくれたが、ある重要な代名詞を俺は耳に拾うことに成功する。


「彼女って、その天使族は女性なのか?」


「そうじゃが、それがどうかしたのか?」


 そうじゃがじゃないだろ、そう言うのはもっと早く言ってくれ。もしこの場でそれを聞かなかったらいろいろと問題になるかもしれなんだぞ。


 だが今知れたことだし、水に流してやるか。


「大丈夫だ、問題ない」


 はーいといわけで何かのフラグ立てましたってか、この世界に来てフラグ建築に磨きが掛かったな。それに誰かが『日本のガウディ』とか言っているような気がするぞ、俺は『一級フラグ建築士』ではあるが『ガウディ』ではないからな。俺が彼なら『サグラダファミリア』はすでに崩壊している。だって俺は『フラグ建築士』だからな、常識に当てはめて考えない方がいい。


 なのでそそくさとフラグを回収した匠は、次の物件である天使族についてビフォーアフターすることにしたのだ。


「それでその天使族はなんでこの世界に来ているんだ? それも一人で」


 するとオーブリーはかなり難しい表情と皺を作っている。そんなに扱いにくいのか......今度の物件は。俺はどんな物件が来ても大丈夫なように『三角スケール』を、ではなく『心』の準備をするが、


「......それは本人に会った時に自分で尋ねるべきことじゃ、儂らの口では言うことができん」


「そうか、すまなかった。話の腰を折ってしまって」


 たしかに先ほどからかなりの頻度で『ボキボキ』と話の腰を折っているな......いや違う、この音はとなりのアスナから聞こえてくる。あんま指の骨鳴らすと太くなるんだ、だからやめなさいって指じゃなくて首かよ。どこかの女番長に見えてくるな。


 そんな俺の思考を読んだのか、アスナが豆腐クラッシャーの口を開く前に、


「気にするでない、同業者のことなんじゃからな」


 オーブリーが無意識のうちにその会話を止めてくれたのでなんとか俺の豆腐ちゃんは超新星爆発しなくて済んだ。


 心の中で彼に感謝を述べていると彼はそれに気づいていない様子で、


「堕落した神々は様々な理由で禁忌を起こしておる。彼らが言うことをあまり鵜呑みにするではないぞ。それと......」


 そこでオーブリーは、その続きを言うか言わないか迷っているかのように俺には見えたので、


「それと何だ?」


「......いや、堕落した神々は一応元は神じゃから強敵じゃ、だから油断せず緊張感を持って戦ってほしい」

 

 俺はなんとなくだがオーブリーが言おうとした言葉を変えたような気がしたが、彼の言葉を信じようと思ってそれ以上口を出さなかった。


「分かったよ。まあどちらにせよ俺にはアスナがいるし、その時は背中を任せるよ」


 俺はそう言いながら、隣に座る女番長ってすみません間違えました相棒様を見ました。


「まあそうですね。一応『相棒』ですし、その時は守りますよ」


 彼女は俺の太ももを割と本気で優しく、だがステータスマックスでつまんで少し笑って挑発するかのようにそうおっしゃったのだ。


 とにかく意見が一致した。


「そうか、なら二人ともこの世界の命運を託したぞ」


 机の下の抗争をしらないオーブリーが嬉しそうにそう言っていた。


 ......世界の命運を託すと俺がストレスで禿げる可能性があるからそこまで言わないでほしい......俺は最後にそう思ったのだ。

 






ーー竜胆悠斗side

 

 どちらにせよ俺はオーブリー達の申し出を断るつもりは微塵もなかった。


 それは俺の道に反するから......もう誰かの信条に縋ったりしないために......この世に絶望している人を救うために。

 

 だから俺は戦う......堕落した神々と......それが、俺の決めた道だから。



ーー坂井明日奈side

 

 私は分かっていた、ユウト様がこの申し出を受けることを。


 私同様彼もあの試練で自分の道を決めたから......だから信じる、彼の道を。


 どんな神が来ようとも、私はそれを切り捨てる......たとえ......この命に代えてでも......それが、私の決めた道だから。


 

 

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