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手当て

 俺はその時、となりの関くん間違ったアスナ君からの視線を感じ取った。


 どうやら俺が雇い主としっかりと交渉して仕事現場の環境をできるだけ底上げしようとしている、その熱意に感動しているのだろう。


 そう思って見ると、


「......」


 虫を見るような目に加えて、エタノールブリーザー級の凍てつくような瞳でこちらを見ていた。


「Why!?」


 思わず英語で訊いてしまったぞ。


「世界の危機かもしれないのに、それはさすがに......」


 しかしアスナは、そんな俺の乗りには乗ってくれなかった。


「ストップ! 流れを見極めろ! 俺は労働環境の改善に努めてるんだぜ。それはお前のためにもなるはずだ。そうだろ?」


 しかしアスナは無言でこちらを見つめおり、どうやらまだ俺の考えに納得してくれていないようだ。このままだとアスナは社畜なってしまう可能性が限りなくグレーに近い黒......つまりレッドカードで退場まである。


「いいか、よく考えてみろ。世界の危機の前に俺達の生命の危機が訪れるかもしれない。それじゃあそもそもの問題を解決できないだろ。だから俺の考えは正しいんだ。Do you understand?」


 アスナの瞳が次第にエタノールブリザードから通常のブリザードに戻っていく。つまりこれが普通......ある意味では俺はアスナの社畜、レッドカードはすでに切られていたのだ。


「......はぁー、Yes,I do.」


 とりあえずは説得完了である、そう思って俺はオーブリーに目を向ける。


「分かっておる。さすがに何かしらの対価は用意するつもりだ」


 なんだよ、分かってんじゃねえか。そう言うのは話す前に言うのが鉄則なんだぞ。なので念のために厚労省の労働基準監督署には来てもらうからな。


「一つ目に軍資金を毎月1000万メガをあげよう」


 パケットならあり得ない量であるが、この世界で言う1メガは日本円で言うところの1円に等しい。


 分かりやすい設定をありがとう! 


「ん~まあ妥当だろうな」


 これぐらいあれば何の苦労もせずに老後の人生を迎えることができそうだな......生きてればな。


「では二つ目に『状態異常の加護』を授けよう」


「それって『神々の祝福』に含まれるんじゃないのか?」


 なんか加護よりも祝福の方が、字的に見てランクが高いような気がするんだけどな......つまり適当。


 その言葉にオーブリーは少し申し訳なさそうにしながら、


「すまんがあれは堕落した神々に最も効果が働くからのう、一般的な戦闘ではあまり意味をなさんのじゃ」


「そうなのか」


 そんなに戦闘向きなものなのか『神々の祝福』は......サイヤ人が所持している可能性が高いな。


 そんな疑惑を抱いていると、


「だが、今の君達なら勝てない相手はあまりいないじゃろう」


「あまりってことは、勝てない相手がいるってことか?」


 ジレンとかヴァドスとかなら敵わないだろうが、ビルスならワンチャン勝てる可能性があるだろ。ちなみに縞模様(全王)は論外、あいつは違う意味でのキマグレンだからな。

 

 それにしても俺達はすでに人外のような存在になっているのに、そんな相手がいるって分かると逆に気になってしまい、「オラワクワクすっぞ」という気分になってしまった......俺サイヤ人説の浮上して来たぞ。


「一応いるにはいるが、その者達はあまり姿を見せんし、こちらが何もしなければ向こうも何もせんから心配せんでもよい」


 そんなのがいるなら見つけて名刺交換してみたいのだが、ここはオーブリーの指示に従っておくか。


「分かった。一応気を付けておく」


「うむ、では最後にこの世界の地図を与えよう」


 そう言った瞬間に俺の脳に大量の情報が流れて来く。


 かなり痛い......偏頭痛並みだ! それじゃ痛くないな。

 

 そう思ってアスナを見ると、彼女も俺同様に片手で少し頭を押さえながら痛がっているように見える。


 その痛みが徐々に治まるにつれ、俺はこの世界の常識に照らし合わせて考えると、明らかにおかしいある一つの事実があること気が付き、アスナも同様に怪訝な表情をしている。


「......ではそのことについて説明する」


 オーブリーが真剣な表情でそう言った。


 

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