高野豆腐改
「すんませんでしたっ!!」
驚くことにあの後何故か俺の高野豆腐は潰れなかったのだ。多分予想なんだが、あの試練に打ち勝ったおかげで高野豆腐は進化することに成功したのだろう。デジモンよろしく、「高野豆腐進化ぁぁぁぁ! 高野豆腐改!」のように以前より強度が増した......高野豆腐改に。
ちなみにリアムは気絶していたので、黒衣によって担架で運び出された風景はかなりシュールだった。
まあ会社勤めってのはこんなこともあるんだ、だからその度に慣れていくことに成長、進化するのだ。そう「新人進化ぁぁぁぁぁ! 社畜!」とまあこんな感じだ。奥さんと子供がいるんなら労災にだけは気を付けておくんだな......これって経験者が言うことだよな?
まあそれは置いとくとして後でリアムには飴ちゃん持ってて少しは労ってやるか。
そんな俺の謝罪+DOGEZAに対してオーブリー様は優しく首を横に振ると、
「いや気にせんでもいい。誰にも間違いはある」
彼の言う通りだ、母さんだって俺に誤りの情報を教えたのだから。つまり先ほどのあの殲滅宣言も仕方ないことなのである。
そんな風に優しく彼が言ってくれるのだが、
「恐れ多きながら申し上げます、天神様」
しかしここで伏兵が現れる。
「うむ、申してみよ」
嫌な予感しかしないぞ、むしろこいつの場合いい予感は......しない!
「ユウト様は甘やかさない方がいいかと」
案の定俺の予感は的中した。このダンジョンに入ってからなんか更に磨きが掛かってきたな、これなら『平成のノストラダムス』になれるのも時間の問題である。
しかしそれはともかく今の発言は問題大有りだ、すぐに訂正せねば!
「おいアスナ! そういうのは一回でも甘やかしてから言え!」
俺は堪らず立ち上がって声は荒げながら言い返すが、アスナは余裕の表情でそれに対抗する。
「一回でも甘やかしたらユウト様は堕落してしまいますよ?」
その時微かだが、天神様が反応した気がした......まさかあんたもそう思ってんのか!? しかし俺はそれに構わずアスナに反論する。
「なんで堕落決定なんだ! やってみないと分からないだろ!?」
仕方ないんだ、俺はやってみないと気が済まない主義なんだから。そこから生まれるものにも何らかの意味があすはずなのだ、だからレッツ・アプライ!
「やったら後悔しますよ......一生」
最後だけ真顔でかなり深刻な表情を作りその重大性をまざまざと伝たのだが......そんなに俺って堕落しそうなのか!? まあ平日の昼間からゴロゴロ~ゴロゴロ~しているが。
しかし突然、
「ハッハッハッハッ!」
「フフフ......」
「フッ......」
俺達の口喧嘩を静観していた他の神様達が笑いだした......というか一方的な口喧嘩ではなく殲滅戦だな。
「ホッホッホッ、どうやら他の者達も君達のことを認めたようじゃの」
おいおいマジかよ。今ので認めるとかこの神様達ヤバいんじゃないのか?
ついでに笑い方も個性的だし、俺のクラスメイトといい勝負するんじゃないのか?
「一応儂らは考えていることが分かるんじゃがの~」
おいおいマジかよ。俺終わったんじゃないのか? それに俺の物語もここで終幕なのか?
「そんなことで儂らは気にせん。安心するがよい」
おいおいマジかよ。アスナより優しいじゃないのか? この神様達はよ
「ユウト様」
「ひっ!」
笑顔なのに目が笑っていない表情で、俺の方を見たので思わず悲鳴を上げてしまった。
おいおいマジかよ。俺の考え読むとかアスナ神様説出て来たんじゃないのか?
「では本題に移るぞ。君達もそこの席に座ってくれ」
俺の悲鳴を無視してオーブリー様の指の先を見ると、入り口付近に二つの席がある。
「分かりました」
俺またはアスナかどちらかの声を聞いた彼がその発言者である俺の方を見て、
「それと君、ユウト君は敬語ではなく普通に話してよいぞ」
「いえ、流石に......」
先ほどのタメ語は仕方なかったのだ。
「君が敬語で話すとアスナ君と区別が付かんのじゃ」
......ここで誰にとは言ってはいけない......ここにいない人達のことだからな(意味深)。
「分かったよ、天神でいいのか?」
「いや皆、名前呼んでもらっても構わんよ」
「そうか、分かった」
俺の返答に満足したオーブリーが再度全体を見回す。
「ではこれから会議を始める、一同礼」
「お願いします」
ますーますーますー......。
全員が無言で頭を下げる中、俺の声だけが会議室に木霊する。
それはまるで高校物理で習うドップラー効果のように。
そして先ほど進化したはずの高野豆腐改は跡形もなく......木端微塵に爆散した。
パァッン!! ............ベチョ。




