開門
「冗談も通じないんですか?」
あの後アスナがこちらに近づいてきたので、珍しく謝るのかと思っていたが開口一番がこれだ。なんだよ冗談って、マイケルジョーダンっていいたいのか? 全然ワロエナイ。
「冗談でも暗に永眠しろ、なんて言うもんじゃない」
まったくこいつは、試練を乗り越えたのに全然以前と変化してないんじゃないか?
「お前ホントに試練乗り越えたのか? 以前と何ら変わりないぞ」
「人はそう簡単に変わりませんよ......しかしユウト様は、だいぶ変わりましたね」
彼女は感心するかのように目を大きくしながらそう言ってくれた。どうやらあの試練のおかげで更に磨きが掛かったという訳か。だが自分では判断できないし訊いてみるか。
「そ、そうか、分かってるじゃないか......ところでどんなところが変わったんだ?」
どこかが来るかな~どこかが来るかな~? と一人で心の中で新しく考えたシンキングタイムを言っていると、そのクエスチョンに対してアスナのアンサーは無言で視線を俺の頭部に向けるだ。
「おいっ! 俺の頭部を見んじゃねえ! ちょっと気にしてんだから!」
多分大丈夫なはずだ! 俺の家系は全員禿げてなかったはずだから! 自己申告しちまった!
「頭部もですけど、特にその綺麗なおでこですかね」
「言っておくが、これは禿げてる訳ではなく、生まれつきだ......って頭部もかよ!」
今度は口に出してそれを申告してしまった......一応でこについては説明しておく。シティーボーイである俺は、常にアップバンクにしており、そのせいか他の人よりちょびっとだけ、でこが広いのが目立ってしまうのだ。決して禿げているわけではない、大事なのことだからもう一度けーー。
「気にしなくてもいいですよ」
アスナが慰めるかのように微笑みながら俺にそう言ってくれるが、つまり俺が言ったことを理解した上でのこの様子である。そんな彼女の目線に含まれる感情がいつもと違うような気がするぞ......これはまさか......?
「禿げるかもしれないなんて」
どうやらアスナは感情の変化の仕方がうまくなったようだ......てかそれはいつも通りだな。
「おいっ! 更にカミングアウトすんじゃねえ! 口に出さなければそれ以上相手は傷つかないんだから」
それに言霊信仰を知らないのか? ある言葉を口に出すとその内容が実現するだからな。つまりワンチャンその可能性があるのだ......大丈夫か俺の髪は?
この辺りから俺はあることに気づき始める
「それにほら......禿げてるけどハリウッド俳優でもかっこいい人がいるじゃないですか。だから安心して禿げてもいいですよ」
「安心して禿げてもいいってどういう意味だ!? ついでに何の慰めになってないからな、ハリウッド俳優は」
それならそこらにいる禿げてる爺さんは全員ハリウッド俳優みたいなものじゃあねえか。大量発生しすぎだろインフレが起こるぞインフレがよってかジジイインフレとかどんな時代だよ。それにあいつら平日の朝から競輪新聞読んでいるんだからな。危うく将来の夢が競輪選手になりかけたわ『*ただしママチャリ使用』
そんな会話をして、俺はとうとう違和感の正体に気が付く。
俺ら何にも変わってねえぇぇぇ!! ということに。
「話の途中で悪いが、もういいか?」
この試練の必要性に疑問を抱いていると突然、俺達に対して声を掛けてきたのかそんな若い男性の声が聞こえたので声の主の方を見てみると、
「......あんた誰だ?」
紳士服を着た高身長、黒髪、加えてイケメンが立っている。なんで黒執事がいんだよ、坊ちゃんの契約しているからこんなとこいたらいかんでしょ。
それにこんなところに俺達以外の人間がいるはずはないしな。それとも試練を受けている間に来た攻略者か何かか?
「ん? あぁ我だ、ファフニールのリアムだ」
「何言ってんだ? リアムは馬鹿でかいドラゴンじゃねえか」
俺はこんなイケメン野郎なんて知らんが、黒執事なら知っているぞ。しかしリアムが見当たらないな、あんな馬鹿でかい図体は隠せきれないだろ。ならやっぱり目の前のこいつがリアム本人なのか?
「そう言えば、ファフニールは人間にもなれると神話に書いていましたね」
「......へぇー、そんなこともできんのか。すごいのなー」
どうやら黒執事改めリアムで間違いなさそうだな、よかったよかった。
しかし内心では、『神がイケメンなんてもの生み出すから外見至上主義社会が生まれてしまったのだ、やはり俺は神を殺さないといけないらしい』と決意を固めていた。
「うむ、その通りだが一つ間違っているぞ」
「どういうことだ?」
「我は普段は人間で、戦闘の際には竜になるのだ」
「......それじゃあ何で試験前は戦闘モードだったんだよ。人間モードでもよかったんじゃないのか?」
その質問にリアムは下手な口を吹いて横目で俺の方を見るながら、
「いや~竜の方が威厳も出るし、かっこいいと思ったからだな」
小学生かよ! かっこいいとは思うが、今ので威厳は消し飛んだんな。だが俺の主として威厳もすでにどっかに行っちまったからな、つまりお揃いだな......全然嬉しくねえなこのペアルック。
俺は竜モードの時の彼の顔付きを思い出していると、それに連想するかのようにある種族のことを思い出した。
「.....,そういえば竜人族もいるけどお前の子孫か何かなのか?」
「いや、竜人族は我の子孫ではない」
その言い方だとお前もいんの? てかこんなのが父親とか奥さんもかわいそうだな......子供も同じ感じの価値観を持ってしまうという意味で。
だが今気になるのはその竜人族なので更にその踏み込んで質問する。
「じゃあ誰の子孫なんだ?」
するとリアムは、嫌いな食べ物を食べた小学生のような嫌そうな顔をしていたが、
「......我と対をなす白竜神だ」
「そういえば神話の話の時も出てたなそれ。何者なんだそいつは?」
しかしそれ以降は嫌なのか口を開かないリアムに代わって、アスナがその続きを答える。
「白竜神、名前はカミラと言い、神話にはこの世界の守護竜と書かれています。戦闘をあまり好まず当時の人々に崇拝されていたと言われています」
「その情報は断じて! 違う」
言い切りやがったぞこいつ。それだけ否定したいってことなのか。
「......そうか、それでどこらへんが違うんだ?」
俺がそう尋ねると、リアムはまるでマルフォイのようにブルブル震えながら、
「せ、戦闘をあまり好まずというところがだ。あああのお方は我をいつもサンドバックにして楽しんでいたぞ。」
おいおいマジかよ、こいつとはサンドバック同盟が結べるんじゃないのか? 俺は須藤の恰好をしたゴリラだったがな。
「ただし二人いる姉の内の一人でもある」
なんだよ、ぬか喜びかよ。それはじゃれ合いって言うんだよ。
「しかし割と本気のサンドバックだった」
まあたしかにライオンとかは、剥き出しの牙でじゃれ合ったりするしな。そういう意味ではリアムとその姉なる人物はじゃれ合いをしていると取ってもいい。しかしマルフォイ化するとかノーチャだわ、同盟はなかったことでオナシャース。てかこいつ姉なんていたのかよ、それに驚いたわ。
するとリアムがはっとして何かを思い出す仕草をする。
「おっと無駄話すぎたな、取り敢えずお前達は無事試練に打ち勝てた。これから上司達に会うことができるぞ」
ゴクリ、とうとうセスとリアムの上司達に会えるのか
内心ウキウキしている俺を他所にリアム、真剣な顔をして忠告してくる。
「上司達には偉大な御方たちだ、間違っても無礼のないように頼む」
「大丈夫だ、問題ない」
俺はイーノックを意識して言った。あれ? これフラグじゃないのか? でも何のフラグなんだ?
だがリアムは気にしてない様子なのか、俺達に手招きをする。
「ならいい。ではこちらに来い」
俺達はその手招きにしたがってリアムの近くに寄ると、それを確認すると突然彼が大きく手を空中に伸ばした。
なんだ、神龍来んのか? それともポルンガなのか? 大穴超神龍でも俺は構わん! ギャルのパンティおくれー! こういうのを『豚に真珠」というのだ......豚だけに、なんつって♪
「開門!」
俺の期待と会心のボケ空しく、空中に現れたのは神龍やパンティではなく神々しい扉である。それは各階層のボス部屋の扉を更に神格化させたような感じて、全体が黄金色に輝いている。
「おぉ! なんかすげえな」
ちなみに小学生なら「かっけー!」である。つまり俺は幼稚園児から小学生へと進学することができたようだな......だが実年齢17歳と半年であることを忘れてはいけない。
「この扉の先に上司達が待っている。ではいくぞ」
そう言うとリアムはその神々しい扉に力を加えいると次第に開き始める。そしてその隙間から漏れ出す黄金の光に包まれると同時にそのあまりの眩しさに堪らず俺達は目を瞑る。
そして瞼越しに光が無くなったと分かったので、瞼をゆっくりと持ち上げていくとそこは......?
会議室だった......。




