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試験結果

「もー機嫌直して下さいよ、ユウト様」


「くそっ! 絶対に許さん!」


 俺はある人物に猛烈に怒っていたのだ。なぜなら俺のことをあそこまで弄んにも関わらず、教壇の上に立っているその人物は呆れるかのようにしながらこちらを見ているからだ。


「彼女の言う通りだ。心の小さい人間はモテないぞ」


 そんな失礼なことを言う、ノーライフキングに。




 


 俺は目を覚まして知らない部屋にいることに気が付いた。


 そんな俺に被せるかのように毛布が乗せてあった。これがアスナがしてくれたんだな。


 この直前までの記憶がないので俺は思い出すようにして目を瞑ることした。


 たしか俺達は......800階層のボスである、あのノーライフキングと戦ったんだっけ、それで......そうか、俺は彼を......。


 その気持ちをぶつけることができる場所がなく、俺は毛布を強く握り締めるほかなかったのだ。


 すると少し離れたところにある扉が開く音が聞こえると同時にある人物が部屋に入って来た。


「あっ! ユウト様起きたんですね、心配しましたよ」


 そう言って入って来たのは俺の相棒であるアスナである。彼女は俺の意識が戻ったことに対して安心したような顔をしながら扉から入り、近づいてきたので俺は現状を把握するために質問することにした。


「ここはどこだ?」


「戦いに勝ったら突然この部屋が現れ、安全そうだったので運んできました」


 アスナも完全に把握していないからなのか、再度周囲を確認するかのように辺りを目回している。


「まあ大丈夫だと思いますよ。彼もーー」


「そうか、やはり俺は彼を......」


 アスナの話の続きを聞き終える前に俺はそれを遮り不意に涙を流してしまう。

 

 彼は悪い奴じゃない......むしろ良い奴だったのだ。あの戦闘の際に感じた感想からそれは一目瞭然だ。それなのに俺は彼の首を綺麗に切ってしまったのだ。つまり打ち首だ......彼は犯罪者ではないのに!


 そんな良い奴を俺は!


 勝手に泣き出す俺にアスナはかなり気まずそうな顔をしながら、


「え、えっとですね、そのことでお話があるんですけど......」


 どうにかして俺は泣き止むことに成功したので、少し赤く腫れた目で彼女の話の続きを促す。


「それでなんだ、話って?」


 彼女が口を開こうとした瞬間扉の開く音が聞こえた。『ダンジョンの部屋で発見! こんなところに異世界人?』俺はあの番組を思い出しながら、入ってくる人物が誰か注視したのだが、


「は~い席に着け~試験結果を発表するぞ~」


 そう言って扉から入ってきたのは、俺が綺麗にその首を切り打ち首に刑に処してあげたはずの、つまり殺したはずのノーライフキングだったのだ。






「というか、ノーライフキングは不死の王なんですから死ぬわけないじゃないですか。記憶障害でも起こしているんですか?」


「うっせ! あの場面だとなんか死んだように感じたんだから仕方ないだろ!」


 アニメだとそれが定番のお約束なんだよ。まあ言っても分からないだろうし、言ったら言ったで変な目でこちらを見てくるからな。


「は~い静かにしろ~試験結果を発表できないぞ~」


そんな俺達を教壇の上で注意してくるノーライフキング、問題はこいつである。


「おいてめぇ! なんで死ななかったんだよ! あの場面は普通死んで、主人公が悲しみを背負って強くなるのが常識だろうが! ていうか試験結果って何だよ!? 聞いてねえよ!」


 俺の言い分に、彼はやれやれとした様子をしながら、まるでアメリカ人のように両手のひらを上に少し上げる。それやられる側はかなりウザイな......張っ倒したくなる。


一瞬黒刀出して、彼で試し斬りでもしてやろうか、そう思ったのだが、不死であることを思い出したので......やっぱ斬ってやるか、と仕切り直すことにした。てか俺は山田浅右衛門か、そう思いながらも黒刀を出そうとした瞬間、有り得ないことが起きる。


「仕方ないだろ、不死の王なんだから」


「というかユウト様主人公だったんですね(笑)」




 こいつら揃いもそろって言いたいことを......それにアスナに至っては(笑)が付いている。なんか二人の距離近くな〜い?


「もういい! 俺の涙を返せ!」


 キレた俺を見かけたねか、彼は何故か俺の裾を指差している。


 なんだ何かついているなら取ってくれよ、そう思っていると、


「涙はお前の裾に付いてるから返してるぞ」


「比喩だよっ!」


 それにすでに涙は蒸発して空中の水分の一部になっているんだ。だから完璧に返しているとは言わない。


 さらに言い募ろうと思う前に、彼が教壇の机を軽くノックするかのようにコンコンしながら、


「と・に・か・く、試験結果を返すから席に着いて静かに」


 これ以上言ってもあまり意味がないな、俺は仕方なく席に着く......ていうかこの席いつの間に出したんだ? 小学校にある木製の机と椅子なんだが。


 周囲を確認して全員着席したのを確認するかのように見回している。


 俺達以外に誰もおらんからその動作の必要性を感じなんだが、そんなことを思っているともう大丈夫だと判断したのか彼は満足そうに頷く。


「よし、全員席に着いたな。それでは試験結果を発表する。では最初にアスナ君」


「はい!」


 めっちゃ元気にはきはきとして返事でアスナがそれに返事を返している。


 ......何だこいつ、なんかこの流れに乗っているような気がするんだが。


「合格です!」


「やったー!ありがとうございます!」


 アスナがあんなに喜んでいる姿を見るのは初めてなんだけど......ていうかホントお前らいつの間に仲良くなったの? 会ったから戦闘以外の何もしてないよね? 俺が気絶している間に同盟でも組んだの?


「最後にユウト君」


「ん? あぁはい」


 考え事をしていたので一瞬だけ出遅れてしまったが、すぐにそれに返事をする。


 彼はミイラ顔で俺の顔をジッと見ると......。


「ん~ギリ! 合格です」


 おい!


「なんだよギリ! 合格って! 試験ってさっきの戦いだろ! 俺結構動いてたと思うんだけど!?」


「主観的に見ればそう見えるかもしれないが、客観的に見るとそれが妥当だ」


 たしかに人は自分自身を客観的に見ることができない、つまり主観と客観の不一致であるという意味だな。これはデカルト先生か、カント先生の考え方から推測したものでもある。ちなみに歴代総理の福田さんは、自身を客観的に見ることができるらしい。


 彼のその意見と主観と客観の不一致を吟味することにより諦めてそれを飲もうとしたが、


「異議な~し」


 何故か相棒であるアスナから賛成の声が上だったのだ。これには『仏の顔も三度まで』を常に意識している錆びた剃刀のような俺も反旗を翻すを得ない。


「おいアスナ! お前俺の仲間だよな!?」


「う~ん......はい、一応」


 俺が確信するかのようにアスナに訊いたのだが、アスナはそれに対して一瞬だけ悩む様子を見せると渋々ながら面倒くさいに認めた......えっ? 面倒くさいの!? 


「一応ってお前......あの時お前俺のこと相棒って言ったよね!? あれウソなの!?」


 あの戦闘の際にアスナの俺にそう言ってくれのだ。だから確信して訊いてそれを否定されてしまったが、ワンチャン間違いの可能性がある。


「ウソではありません。それに試験結果は先生の判断なのですから、諦めてください」


「うむ、アスナ君の言う通りだ。それに試験結果はギリだったが合格は合格だ。気にすることじゃない」


 一応相棒であることをアスナが認めてれたのだが、試験結果については俺の高野豆腐ちゃんが許さないんだよ。 

 

 しかし俺は溜息をして諦めることにした。このままでは傷物にされてしまう可能性があるからだ。


 それを確認すると彼は再度口を開く。


「では話を戻す。君達は合格だ、だから次の階層に進むことができる」


「なんでそもそも試験なんてするんだ?」


 ダンジョンだからすべて一方通行じゃないのか? アクセラレータならそのまま一気にダンジョンの底である最下層に行けると思うけど。


 俺の指摘に彼はさも同然そうな顔をする。


「そんなの簡単なことだ。どれだけ力があっても常識などといった面がダメなら会わす訳ないだろ」


 よかった、どうやら俺には常識があるようだ。だが気になる一言を口にしたぞ。


「会わす? 誰にだ?」


「......私の上司達にだ」


 上司達って......ここって会社か何かなの? 給料出てんの? そもそも会社名を教えてプリーズミー。


「お前の上司達って一体何者なんだ?」


「最深部で君達を待っている。時期に会えるさ」


 最深部ってことは1000階層ぐらいってアスナも言っていたしな。てか酸素ってあんのか? あんまし深くまで潜ると酸欠状態で死ぬんじゃないか? あっでもここもそれなりに深いしあんまし変わらんな、なら大丈夫か。


 一人で生命の危機について考えていると彼が何か思い出した様子なのか、俺達に声を掛けてきた。


「あぁそうそう......あの時の話の続きをしようか」


 

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