克服と戦闘
アスナのゴースト系モンスター克服訓練が始まりはや一週間が経過した。そして俺達は徐々にボス部屋に近づきつつある。
そんな俺達は今ある二体のモンスターに追われるかのようにして戦っている。決して逃げている訳ではない! 戦う場所を変えなければうまく立ち回れないからだ。
俺は首越しにそのモンスター達との距離を確かめと、すでに10メートルほどの距離まで近づいている。
周囲を確認するとうまく開けた場所に来ていることに気が付いてので、俺は隣を走るアスナにその旨を伝えることにした。
「アスナ! ここらで相手をするぞ!」
「了解!」
彼女も俺の意を汲んだのか、そう言うと手に握るセレーネを握り直しているようだ。俺もそれに倣い黒刀を使う準備をするために走りながら黒刀を呼び出した。
戦う準備ができた俺達は、先ほどから追ってきている二体のモンスターとそれぞれ一体ずつ相手にするために別れるように左と右に走り抜ける。
そんな俺達の追跡者達はゴースト系上位種であるリッチとヴァンパイアロードであり、どちらも獲物を逃がさないような執拗な目をしている。
お前らゴーストだから人間食わないよな? なら殺してちゃあんでしょ。無駄な殺生をしては、だめよーだめだめ。
そんな俺の尻に留まったのはリッチ君である。決して金持ちではない、むしろ骨の体に黒いローブしか着ていないので、アンリッチである。
そしてヴァンパイアロードはアスナの方に向かったようである。あいつは女たらし決定だな。なぜなら俺の尻ではなくアスナの尻に留まったからだ。つまりリッチはホモ説が濃厚である!
「アスナ! そっちの相手は頼んだぞ!」
「分かっています!」
俺はアスナの貞操を心配しながらも自身の貞操の方を最優先に考えていた。彼女は作らないと言ったからって彼氏は作るとは言ってはいないからな。
俺は正面にいるホモ・リッチとの戦闘に気を引き締めるために、一度自身の尻を優しく撫でると黒刀に魔力を集中するイメージをし始める。
たしかホモ・リッチは魔法を得意とし、ヴァンパイアロードは剣術を得意とするといことをアスナが言っていたな。
そんなホモ・リッチの手の平から魔力が集中する流れを感じ取り、それが次第に具現化していき野球サイズのくらいの炎の球になるが、それが突然膨張するかのようにして1メートルほどの炎の球に変化する。しかし一瞬で収縮すると再度野球ボールサイズになり、それを俺に向かって飛ばして来た。
あれは炎系統下位の技『ファイヤーボール』だ。
白マリオみたいな跳ねながら飛んで行く方ではなく、一直線に飛んで来る野球ボールと同じだ。
そんな野球ボールは、初め黄色い炎をしており、それほど熱量は感じられなかった。しかし一度膨張してから収縮した様子を見せた後、その纏う色を変化させた。それは、真っ赤に熱せられたまるで血のボールのようである。
以前戦ったことのあるウィッチという魔術師系のモンスターもこの技を使っていが、奴よりもこのホモ・リッチの方が魔力量も力も上であるのは明確だ。つまり使用者の魔力量に依存してその技の威力も増大するといわけか。俺の使うスキルと同じ認識でいいか。
そんなファイヤーボールがとの距離が近づくごとに、その熱を感じてしまうほどの温度だ。現に首筋から汗かいている。そんなことを認識できるのはレベルが上がったおかげだろうな。
俺はスローボールのように感じるそれを右手に握る黒刀で切ろうと思い、居合道のつもりで構える。そしてそれが俺の間合いに入ったその瞬間に黒刀で横から真っ二つにするようにして切り抜く。
ファイヤーボールは一瞬自分が切れたことに気付かなかったのか、その形を維持していたがすぐに切り目から炎のしぶきを上げて俺の両サイドを通り抜け、そのまま地面に落下する。その落下地点はその影響で一瞬だけ爆炎を上げたが、すぐに地面を溶かすかのようにして己の体と一緒に消失させた。
あんなの当たったらデットボールだけじゃ済まねえわな。俺の体に穴が空くぞ、そしたら完全虚化してしまうんじゃないのか? でもセロが打てるからいいかもな。
そのぐらいの余裕があるくらいレベル的に差があるようだな。だが慢心はよくない、いつも相手に注意を払っておかなければな。特に今回のこいつはホモ・リッチだからだ......なんかこんな名前のサッカー選手がいたような気がするな?
そんなことを考えていると、
「ん? あれはたしか『エクスプロージョン』か、めんどいな......」
先ほどの技が対処されると分かっていたのか、奴の周囲に火の粉が舞い始めている。
炎系統上位の技『エクスプロージョン』。空間全体を灼熱の地獄に変える技であり、これを使えば料理の完成スピードも格段に早くなるだろう。つまり奴は使い道を間違っているということだ。ちなみに『本能寺の変』のほうではないからな、そこんところ注意をよろよろ。
それにこのままだとアスナまで巻き込んでしまうし、あっちはあっちであの女たらしの対処で手一杯だろうからな。
仕方ない、あれを使うか。
「影穴!」
それと同時にホモ・リッチの「エクスプロージョン」が発動してその場を灼熱の地獄に変えようとしたが、それと同時に俺の手の平から黒い靄が出始める。それは瞬時に空中で何もない黒い穴のようなものを形成すると、奴の放った攻撃はその効果を発揮する前にその穴の中に吸い込まれたのだ。
『影穴』は、言い換えると小型ブラックホールという認識でいいが、本物みたくなんでもかんでも引っ張るってわけではなく、俺の意識した相手だけを吸い込むことができる技である。以前どのくらい吸い込むのか確認するために、このダンジョン内部に地底湖のところが存在してそこに住んでいる水タイプのドラゴンを倒して時に、その地底湖の水をどのくらい吸い込むかどうかで判断することにしたのだ。結果としては、すべてを吸い込む前に俺の魔力が底を尽きたので詳しく検証することはできなかった。このことからこの影穴も魔力量に比例してその吸収量も増えるのである。
実際に使ったのように今のような攻撃や物質系の攻撃を吸収することができし、今までのダンジョンでの戦闘で吸い込めなかった攻撃はない。
「ギャッ!」
そんな断末魔のような声が聞こえたので、アスナ方を見ると女たらしは振られたのか奴の首が空中に飛んでいた。
どうやらアスナのゴースト系への抵抗意識は無くなっていると見ていい、加えて女たらしには容赦がないということも......。
「俺も終わらせるか」
再度こちらを睨んでいるホモ・リッチに相対する。
すまないがお前の気持ちに応えることができないんだ。地球に生まれ変わればレインボーフラグがある、だからそちらの可能性に賭けるんだな。てか生まれ変わるなら貝になることをオススメするぞ。海の底なら、戦争もホモも女たらしもいないからな。
「無極剣!」
そのままホモ・リッチに接近する。しかし俺の俊敏が高かったのか奴は驚きの表情を作る前に、奴の首が飛び、俺の勝ちが確定した。
俺は彼の願いが叶うことを願いながら黒刀を自身の影に戻すと同時にそのまま倒れこんだ。
「はぁ~終わった、もう動けん。アスナ〜おんぶして」
俺の状態を見れば分かるかもしれないが、今使った『影穴』と『無極剣』は、確かに強いのだが魔力の消費量が半端ないのだ。今のところ、一回の戦闘では『影穴』が二回、『無極剣』が一回しか使えない。言い換れば俺にとっての切り札だ。
『俺のディエマは、まだ終わってねえぇぇぇ!!』いやすでに終わっている、だから倒れたのだ。
ちなみに先ほど使った『無極剣』は、今のところワンパンでモンスターを倒している、つまり俺は禿げてないハゲマントである......禿げてないのにハゲマントと言ったりする、これが矛盾の例だ。覚えておきなさい。
そんなディエマやハゲマントである主が、こんな状況のはずなのにこいつときたら、まるで駄々をこねる子供を見るかのよう見下ろしている。
「子供じゃないんですから自力で立ってください」
......なるほどね。
「ふーん、そんなこと言ってもいいのかな?」
「なんですか? また主に対してとか言うんですか?」
「それはもう諦めたからいい」
普通は諦めるという言葉は出ねえけどな。これはすでに末期症状だ、レベル4を軽く飛び越える勢いである。つまり俺は重篤患者、誰か名医呼んできて! あっ! アスナさんは名医だった......ただし逆ベクトルである。
「では何ですか?」
そんなやぶ医者であるアスナは面倒くさそうにしながら俺の言いたいことを訊いてきたので、俺はどこからともなく取り出したパーティーハットを取り出してそれを被った。出所についてはノーコメントだ、異世界は不思議で一杯なんだからな。
俺はアスナにある問題を出題してあげた。
「デデン! ここで問題です。あなたが初めてレイスに遭遇した時助けてあげたのはだれでしょーか?」
「そ、それは......」
「シンキングターーイム!! ズンズンカチャカチャズンズンチャ! ズンズンカチャカチャズンズンチャ!」
俺がBGMを歌ってあげるとアスナは先ほどよりも更に面倒くさそうな顔をしている。まったく乗りに乗れない奴は嫌われんだぞ......ソースは僕ちんでーす!
そしてシンキングタイムが終了したので俺はアスナのアンサーを聞くために、その顔を覗き込むというかなりうざい行動してあげた
「さぁー答えをどうぞ!」
「......はぁー、ユウト様です」
溜息と共に俺の望んだ答えを出してくれた。この年で溜息するとか年寄りに見えるかのやめなさい、まったく、はぁ~!
「正解です! ではあなたが今しないといけないことは何ですか~?」
「ユウト様に借りを返すことです」
まったく最初から素直になっておけば俺もあんな恥ずかしい行動を取らずに済んだんだからな。つまり絶賛後悔中!
「ではお願いします」
「はぁー、分かりました」
俺は両手をバンザイするかのように上げてアスナにおんぶをせがむと、再度溜息をしながもそう言って俺をおんぶしてくれた。
そこで今更ながら気が付くのだ......女性に男性が『おんぶ』してもらってるこの風景。
『見てあの人、あの年で『おんぶ』してもらってるわよ。しかも女性に』
『恥ずかしくないのかしら、『おんぶ』なんかされて。まるで赤ん坊ね』
そんな声が心の中から聞こえてきたのだ......ここがダンジョンでホント良かった。街中なら俺の高野豆腐が潰れるんじゃなくて弾け飛んでいたぞ。
そんなこと考えながら、アスナのゴースト系モンスター克服訓練は終了するのであった。




