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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第五章:堕落した神々との戦い:パンゲア編
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青い炎⑦


「フンフン♪ フフン♪ フンフフフフ~ン♪」


「珍しいですね、鼻歌とは」


「ん~? まあ今日はあ、特別な日だからなあ」


 特にそちらの方に目を向けることなく答える。


「これまで一年に一人ぐらいのペースだったので、今日二人も戦士になるということはたしかに特別な日であると言えます。それはそうと先刻知ったのですが、上位十名を対象に抽選を行っていたと訊いたのですが」


「そりゃあ今日はあ、特別な日だからなあ」


 ローズルの対応に少しムッとした表情になる。


「それさっき聞きましたよ。一体何を行うつもりで?」


「一言で言うならあ、サプライズパーティー。観客もまた面白いものを見たいと思っているはずだからなあ」


「周知徹底のため、あとで文面でください」


「めんどいねえ。......そういやあ主任ちゃんは、ここに来て何年目だっけかあ?」


 主任ラウは、作業を行いながらそれに応じた


「唐突ですね。十五の時からここで、というよりあなたの傍で働かせていただいているので、今年で丁度十年です」


「ならもうベテランじゃねえかあ。こりゃあおいらの後任はあ、もう主任ちゃんで決定だなあ」


「後任なら、私ではなく本部長が妥当かと」


「ありゃあもう人財じゃなくて人在だからなあ、ついでに年食ってるからさらにダメだわあ」


 作業の手を止めて、ラウはローズルに向かい合う。


「若いよりご年配の方が経験も多く、適当だと思うのですが」


 が、それを否定するようにローズルは首を振る。


「主任ちゃん、これだけは覚えておくといい。種族、性別、立場に関わらず、いつの時代もその先を走り、導くのは、主任ちゃんのような若者だ」


「若者、ですか」


「だってそうだろう。長年の経験もたしかに大事だろうが、世の中は常に動き続けている。当時の物差しで今をはかろうとしたならば、それは時に奇抜で面白い可能性を潰してしまうかもしれない。年寄りが悪だって言いたいわけじゃない。あくまで後見人に徹しろってことさ。だから経験や知識は参考程度に、常識に捕らわれることなく、挑戦できる若さを兼ね備え、そこから得る成功はもちろん失敗もすべてが次に繋がると考えられる、そんな何者にも染まっていないからこそ、何物にも染まれる、柔軟な考えがある若者が必要なんだ。そうやって五年後、十年後と、今度は自分達が次の世代にそのバトンを託していく。そしておいらは、この役目は、主任ちゃんが適任だと思う」


「......そんな役目、私に務まるとは」


 委縮するラウを他所に、ローズルはあっけらかんに言いのけた。


「まあ大丈夫だろお。必要な経験や知識はもう全部主任ちゃんに教えたつもりだからなあ。最悪失敗した時にはあ、年長者にでもぶん投げればいいのさあ。そのための肩書きだからなあ」


「はあ......ところで、後任って」


「おおっと、そろそろ始めないいけねえからこの続きはまた今度だあ」











「あ、おはようユウト。今日は体調よさそうだね」


「まあ、な。ところでさっきくじ引きさせられたんだけど、ヒューゴも引いたのか?」


「もちろん」


 ヒューゴの手には、俺が持っているものと同じものがあり、同じく数字が書かれていた。


「僕は9、ユウトは」


「俺は10、ヒューゴの次みたいだ。にしてもこのくじ引きは何なんだろうな。理由を訊いても逆に係員の方が理由を教えてもらいたいっていう感じだったぞ」


「即席の企画だって言ってたから、もしかしたらその人達も知らないんじゃないかな」


「そうなん? ......ん」


『あーあー、マイクテストマイクテスト。主任ちゃん、これ聞こえてっかあ?』


 スピーカーは部屋には備え付けていないらしく、仕方なく部屋の外から聞こえてきたマイク音をよく聞くために、俺達は対戦場が見える位置に移動する。


『......オーケー。えーそれじゃあとりあえず、選手及び観客の皆あぁ元気してっかあ? こちら司会進行役のローズルだあ。いきなりで悪いんだがあ、本日をもって最高経営責任者ローズルは退陣することになったのでえ、リタイヤパーティーを開催することにしたぜえ』


 会場全体に動揺が走っているのが伝わる。それには特に思うことはなかったが、次の言葉に俺達もまたその波に一部になった。


『内容についてはあ、ランキング上位十名バーサス女帝直下十名とのさしの勝負』


 前を行くヒューゴの足取りが速くなったような気がする。離されないように俺も歩く速度を上げた。


『任意ではなく強制でえ、ただ負けても勝利数には影響しないのでえ、気楽に参加してくれるとありがたいぜえ。もちろん戦士に勝利した暁にはあ、残りの勝利数に関係なく繰り上げ1000勝になるのでえ、奮って以下省略ってことでえ。最後に対戦順を、主任ちゃん頼んだぜえ』


 転じて、女性の声に変わった。


『各選手の対戦順を発表いたします』


『一回戦 第7位ドット・ラングレ対第5席ハンニバル』


『二回戦 第10位シャビ・フルスト対第8席セクメト』


『三回戦 第4位ハオ・リーウ対第3席ラーヴァナ』


『四回戦 第5位ミゲル・フェルメール対第6席カリギュラ』


『五回戦 第9位ルカク・アルバ対第9席トールマン』


『六回戦 第8位トーマ・バレンタイン対第1席セト』


『七回戦 第3位ナセル・アルバーク対第7席ユノ』


『八回戦 第6位イリヤ・バロテリ対第10席トリックスター』


『九回戦 第2位ヒューゴ・ミュラー対第2席リゼ』


『十回戦 第1位ユウト・リンドウ対第4席マルドゥーク』


 向かいにあるローズル達のいる場所、その真下に10の席があった。事前に確認していた顔写真と一人を除いて全員一致していた。そして。


「リゼ......」


「......」



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