新教徒
話し終えたアスナ。
「そうか......」
そんな風に呟く俺......ひじょーに気まずい。ある程度予想していたが......ここまでとは。
逆に考えてあれだよな、俺は彼女とクラスメイト達に裏切られて彼女を作らないと決意したのがかなり霞んでしまう。
「......あ! すみません。しんみりした空気にしてしまって......」
どう返答しようかと悩んでいると俺の様子に気が付いたのか、すぐにアスナが謝ってきたので俺はなるべく柔和な表情を作りながら、
「いや、別に気にしなくていい。それにつらい経験をしたのはお互い様だ」
よし! 空気洗浄完了!
なにか話題を変えなければ......。
「えーと......そう言えば気になったんだけど、ここってダンジョンのどのくらいなんだ?」
「たしか.......多分記憶が正しいならば600階層ぐらいかと」
ダニーが言っていたのがたしか500階弱だったはずだな。
「記録よりだいたい100階層くらい深いのか」
「しかしユウト様が知っている記録は、二年前の記録なので」
なるほど、強くなったからまた再チャレンジしている最中に裏切らてしまったのか。
「ちなみにアスナのステータスってどのくらいなんだ?」
「えっとですね......」
名前:サカイ アスナ
年齢:21歳
種族:人族
天職:元勇者
レベル:214
体力:12200 (+2000)
攻撃:12200 (+2000)
防御:12200 (+2000)
俊敏:12200 (+2000)
魔力:12200 (+2000)
魔抗:12200 (+2000)
知力:12200 (+2000)
運:3000 (+2000)
スキル:聖竜 四龍 流星群 神速剣 治癒魔法 召喚魔法 限界突破 言語理解 鑑定 etc......
称号:異世界人 召喚されし者 英雄 超越者 絶望者 魔人の友
召喚されし者:異世界召喚されて再度召喚された者が貰える。
超越者:レベル200を超えた者がもらえる。戦闘の際、ステータスを補正される。
英雄:魔王を倒した者が貰える。戦闘の際、ステータスを補正される。
魔人の友:魔人と友達になった者が貰える。魔人とコミュニケーションを図りやすくなる。
へ~21歳なのか~、地球だと大学生でリア充していたんだろうな。まったくリア充爆発しろ! 今の俺はリア充に含まれないからな......なんだこの事実、むっちゃ悲しいわ。
それにいろいろツッコミたいがところがあるが......。
「どうやら絶望者の称号を貰えたようだな」
「ん? 絶望者? 何ですかそれ?」
俺の納得顔をしながらそう呟いたので、それを不思議に思ったアスナが自身のステータスを見る。
「うわぁ! 何ですかこれ!? ステータスおかしいですよ!」
案の定彼女のは目を広げて驚いていた。
またもや俺の予想通りの反応である。これなら年末ジャンボを越えてパワーボールで億万長者も夢じゃない、まあ地球に帰ってからの話だがな......つまり有言実行!
しかし今は、この称号を得ることができたアスナを褒めてやらないといけないのだ。
「どうやらお前も『hopeless person』として認めれたようだな」
なので英語でかつネイティブにそうかっこよく言ってやった。
「なるほど、わかりました」
......気持ちの良いスルーをありがとう! 潰れないぞ、俺の高野豆腐は......。
「それと称号に英雄ってあるけど、魔王倒したんだよな? なんで帰らなかったんだ?」
先ほどから気になっていた、ある意味俺達にとっては絶対に訊いておかねばならないことである。
「いえ、帰りたいのは山々だったのですが、どうにも帰れなかったんですよね......」
「そういえば、女神からの天啓では、『世界が安定したら元の世界に帰れる』だったな。どういう意味なんだ?」
「さぁ?」
俺とアスナは首を傾げて考えてると......あ! 俺は大事な事を思い出した。
「お前さ、もう女神の教徒じゃないよな?」
俺がそう訊いたのは、先ほどのステータスの称号のところに女神の加護がなかったからだ。大方お亡くなりになられたその影響のせいで、例の称号も一緒に消えてしまったんだろうな。
それを聞いてアスナは自分のステータスに再度目を通し、それに気づいてたか頷いている。
「確かに女神の加護が消えてますね」
よし来た! 第一印象を良くするために営業スマイルに、ついでに意識もあれにチェンジするか。
「お前さ、死教に入信してみない?」
完了した結果、顔と意識共によく子供を連れて家に尋ねてくるババァAになってしまった。
「うわぁーなんですかその顔。人相最悪ですよ」
それを見て聞いたアスナは、俺との距離を一瞬で数メートル離れるという現実ではあり得ない動きをした。その考えで行くならばあのババァAの人相は最悪なんだな。それにしてあれって子供可哀そうすぎるだろ、なんか指くわえてこっち見るもんだからなんか恵んであげたくなっちゃうだろが。
「顔のことは言うな、気にしてんだから。とにかくどうなんだ」
ババァは仕方ないが、俺に対しては失礼な子だなまったく。
「そもそも死教って何ですか?」
先ほどの距離が戻すかのようにして数十センチだけ近づいてきた。
ここでの回答次第で俺とアスナとの距離が決まる、慎重に答えなければならない。
「よくぞ聞いてくれました。説明しましょう。死教とは死神様を崇拝する宗教です。ちなみに教祖は俺、教徒は0だ」
「いえ、聞いたことありませんね。そもそもそれってユウト様だけで成り立っているのですか?」
それと聞きアスナは馬鹿にするかのようにそんなことを言っている。あっ体感距離が縮まったけど、精神距離はかなり広がったな。てかこいつはあのことに気づいていないようだな、ふっ馬鹿な奴め、今に見ておくんだな。
「安心しろ。一応加護もある。今のところ教徒予備軍もいる......アスナ、お前だ」
ステータスを見せるために手招きをすると、アスナは眉を顰めながら広がっていた距離を縮めるようにして近づい来た。そして俺のステータスを見ると目を大きくして驚いている表情する。
「うわぁ、ほんとにあるんですね。しかもスターテス補正もかなりヤバイですね......ていうか私予備軍なんですか!?」
「当たりまえだ。俺はお前の主だからな。ここは日本じゃねえ、異世界だ。だから宗教の自由は適用されねえんだ、諦めろ」
この世界にそんなものがあるかは知らないが、俺が主である以上この考えに従ってもらわないといけないからな。
「はぁー、仕方ありませんね、加護の効果も魅力的ですし」
よしよし、どうやら納得してくれたようだ。素直な子は嫌いではないが、主である俺に対してあの言動がどうなんだ?
俺の言い分に溜息をしながらも、アスナは最後笑顔でこう言った
「分かりました。死教に入信します」
その日、俺は旅の仲間&教徒を手に入れて、次の街に向かった。
アスナ、ゲットだぜ! ピッピカチュウ!