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自己紹介2

 あの後どうにか泣き止んでくれたアスナ。

 

 もしこれで、鼻を赤くして前田さん状態で、「ユウドザマァァァァァ!」 なんて言われたら本当に手のつけようがなかったぞマジで。


「お見苦しいところをお見せしました」


 アスナが恥ずかしそうにしたがすぐにジト目になる。


「でも女性が泣いてたら普通慰めてくれるものでしょう?」


「すまんな。俺にはそんなスキルはないんだよ」


 何でよそのスキル初めて知ったわ、あぁでも神谷君が使っていたのは見たことがありますねえ~、もちろん女子にですよえぇ、大穴狙ってホモ説を正人と賭けてたんんだぞ、ホモになっちまえよ。孤高の王子(笑)がワンチャンホモ説があるからいいカップルになるんじゃないのか?


 そんなことを考えているとアスナが更に追い打ちをかけようとしてくる。


「いえ、これは日常スキルなので普通誰でも持っているかと。あ! 申し訳ございません、だから彼女さんに裏切られっちゃったですね」


 そんな感じでアスナは俺の心を抉るのが得意なようだし、ついでに全然申し訳なさそう顔をしてないなおい。


「おいちょっと待て! あんまトラウマ思い出さすんじゃねえ! また役者モードに入っちまうじゃねえか!」


 あれになると何ターンか身動きが取れなくなるんだからな。


「しかし、いつまで引きずっていけば、戦闘の際命を脅かすものになってしまいます。ちなみに私はもう引きずっていません」


「......分かったよ。なるべく引きずらないようにする」


 すまし顔で正論を言われので、俺は渋々だが納得するしかなかった。


 次に俺はずっと気になっていたことをアスナに尋ねてみた。


「それであの~アスナさんはなぜ裏切られたのでしょうか?」


「......分かりました。ユウト様が話して私が話さないのは、不公平なので話させていただきます。」


 彼女は少し沈鬱な表情をしたがすぐに真剣な顔になると、自身の過去を話し始めた。








 あの日、私たちのチームはダンジョン攻略のために記録があったところよりさらに深い階層を探索していました。

 

 チームメンバーは勇者である私、治癒師のサラ、重剣士のドン、盾使いのケン、魔法使いのマリ、そして荷物役のダリーでした。

 

 私達はチームを組んでそれなり時間が長かったので仲も良かったはずでした。


 しかし、あの日は......。



「ねえアスナ、この先どちら道がモンスターが多いと思う?」


 治癒師であるサラがそう尋ねてきました。


「多分地面の擦れ方からして右のほうがモンスターが少ないと思うわ」


「ファイヤー・ブレイド!」


 二人でそんな他愛のない会話をしていたら突然後ろから、炎系統の攻撃が一直線に私達二人目掛けて飛んできました。


 不覚にも私達は会話をしている最中だったのでその攻撃を受けてしまい、私は軽傷だったのですか、サラを見てみると致命傷を受けているようでした。


「すまんなアスナ。お前たちがいると不都合なことが多いんだ。だからここで死んでくれ」


 私は振り返って魔法を打った張本人であるマリに問いただそうしたのですが、突然ドンからそんなことを言われました。

 

 その時の私には、私達二人を除いた四人が結託しているように見えのも束の間、そのままの勢いで、彼らは私達を殺そうとしてきました。

 

 いつもの私なら余裕で勝てるのですが、この時は先ほどの攻撃で負傷したサラを守りながら戦っていたので防戦一方だったのです。


 仕方がないので私は、サラを背負ってモンスターのいない右側の通路に逃げることにしました。

 

 この時もし魔力薬を持っていれば何か変わってくれたと思うのですが......荷物は全部ダリーが持っていました。 

 

 加えて四人に襲われる前にモンスターとの戦闘があり、回復する前に四人に襲われてしまったので私もサラにも魔力があまり残っていませんでした。


「アスナ、私を、置いて逃げて......」


逃げている最中に後ろからサラがそんなことを言ってきました。


「ふざけないで! 置いていく訳ないでしょ!」


「......自分の命ぐらい、分かるの......もう、あまり長くない......だから......」


 どんどん背中越し冷たくなっていくサラをどうすること出来ず、私は焦り始めました。


「黙ってて! 何か方法があるはずだから!」


「......アスナ、ありがとう」


 そう微笑むような声でサラが言いました。


「それでね、私、みんなに、隠してきたことがあるの......」


 彼女は少し躊躇いながらもそう言ってきたので、私はその隠し事について気になりましたが、何も言わずに彼女がその続きを言うのを待つことにしたのです。


 すると決意したのか、サラは私にこう言いったのです。


「......実は私、魔人なんだ」


「......えっ?」

 

 私は一瞬戸惑いました。

 

 魔人というのは、人族と魔族が交わってできた少数の種族なのですが、そんな魔人は両種族からの嫌われ者でもあったからです。


「なんでって、思ったでしょ......皆には、家を追い出された、って言ったけど......実は私、人族や魔族の人達と、仲良くなりたくて、家を飛び出して、冒険者になったんだ......」


 サラは過去を懐かしむかのように言いました。


 たしかに彼女と初めて会った時、家を追い出されたから冒険者になることにしたと話していたのはたしかです。

  

 しかし、人族と魔族は戦争中、加えて彼女は魔人、叶うはずのない......願いだったのです。


「私も、最初は、ダメかなって、思った......けど、みんなに、会えた......それに、冒険もできた......」


 だけど私達は......。


「うん、裏切られちゃったんだけどね......でもね、最期は、一番仲がいい、アスナが、いるから、よかった......」


「最期って言わないでよ! まだ私達......ダンジョンの攻略出来ていないじゃない!」


 そんな遺言のようなこと聞いて、私は泣きながら叫びましたが、


「ダンジョンは、きっと、攻略できる......あなたなら......信頼できる、大切な人と共.......」


「そんな人いらない! だから......お願いだから!」


 しかし、サラにはもう聞こえていないのか。


「アスナ......最後に、私からの、贈り物を、受け取って......」


 息遣いも荒くなり、多分、彼女はもう......。


「サラ! あなたはーー」


 私は背負っている彼女に一言言おうと首越しに振り返ろうとしました。


 しかし、私の声が彼女に届く前に......。


「魔人の私と、仲良くしてくれて、ありがとう......」


 サラが泣きながらそして笑いながら言い終えると、彼女の目が光り、その光が私の目の中に飛び込んできました。

 

 すぐに私は彼女が贈り物が心眼の魔眼だったと気が付きましたが、それを見届けたサラは、安心するかのようにすぐに息を引き取りました。






「後のことはよく覚えていませんが......モンスターとの戦闘の際、四人と戦った時の傷と疲労が原因で不意打ちを受けて殺されました」


 そしてアスナは最後にこう言った。


「これが私の経験した......すべてです」




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