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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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帰還

「いやー心配しましたよ。一応ジュリアさんから事情を聞いていましたし、アスナさんからも一応は大丈夫でしょう、と言われていたので、私自身大丈夫だろうと思っていたのですが、やはりこのところのオケアヌスは問題は山隅なので......」


 砂浜に降り立った俺とベルに、そう真っ先に声を掛けてきたゾルさんの表情は、セリフ同様心配そうにしている。


 今この場には、アスナとジュリアさんの姿を見ることはできない。大方アスナが今の展開を予想して、ジュリアさんを説得して、面倒事に巻き込まないようにしたんだろう。多分、その勘は当たるような気がする。


「本当にすみませんでした。当初の計画だと、あの船という乗り物に乗って魚が釣れる場所まで行った後、この釣り竿というのですが、これを用いて魚を釣ったらすぐに帰ろうと思っていたのです。しかし、いろいろ問題が起こりまして、結果こんな時間になるまで帰ってこれなかったわけなんです」


 俺はできる限り申し訳なさそうにしながら、そして周りに聞こえる声量でそう弁解した。これなら誰も俺を責めようなどと思わない。そんでもって今回の事件は、ゼロに収束するというのが理想的作戦なのだが、俺の願いも空しく無限大に発散してしまった。


「ちょっと待ったー!」


 突然人混みの中から高らかな声が聞こえてきたからだ。


 ここはお見合い大作戦の会場じゃねえんだよ。ナイナイも来ねえよ。つーかホント一体誰がこの流れを止めやがったんだああん?


 ヤクザ精神で、その声の主にガンを飛ぼそうと思っていた。だが、人混みの中から出てきたのは、四人の少年少女達だった。年齢はベルと同じだと思われる。つまりは彼女の友達とかそんな関係だろう。現にベルは、彼らに向かって手を振っており、それに彼らも返しているからだ。


「こらこら君達、この人は悪い人ではないよ」


「そうそう俺は悪い人じゃないよ」


 すぐにゾルさんが、彼らを諫め始めたので、俺はニッコリスマイルを意識し、同調するようにそう言う。だが、彼らというよりも、先頭に立つ少年が一番納得していないように思える。


「なら証拠を出しやがれ!」


「え? 証拠って何の?」


「あんたが悪い人じゃない証拠だ!」


 いきなり刑事と容疑者という世界に迷い込んでしまったようだ。てかそんなに疑うとか俺ってそんなに悪人に見えるのか? 人は見た目だけでは判断してはいけないと習っていないのか? 俺は最近になってそれを学んだんだぞ。


「こらこら君達、何度も言うが彼はーー」


「ゾルさん、大丈夫です。ここは俺に任せておいてください」


 彼に頼ってばかりでは、彼らも納得しないだろうからな。ゾルさんの返事も聞かず俺はそう言うと、彼らに一歩近づく。


「証拠は、ベルが俺と一緒にいることだ。......君達なら、この意味分かるだろ?」


「くっ!」


 かっこよくそう言うと、またもや例の少年だけがダメージを受けたかのように膝を着く。君にはまだこのステージは早すぎる、一旦出直してくるんだな。そう思い、早くセルフィッシュことセルちゃん(幻の第ゼロ形態)でも公開しちゃおっかなーと思っていたが。


「そ、それだけじゃ不十分だ! ホントにあんたが魚を捕まえに行った証拠を出すんだ!」


 すぐに復活した少年がそう言ってきたので、それに従いセルちゃんを出そうしたが、ただし! そう少年が言う。


「普通の大きさの魚なんて冗談は言うなよ」


 それほどまでに必死になる彼を見て、俺の変なセンサーが働いた。


 ああなるほどね。この子、ベルちゃんのことがフォーリンラブなのね。なんかそれ知ったら、顔がニヤニヤし始めたな。ヤバイ、どうしよう。ちょっかい出したくなる。


「あね。オーケー、君の言いたいことはアンダスタンド。ならお望みの魚さんをハンドイン。ただし、その前に俺のクエスチョンにアンサーしてもらってもいいかな?」


「? ちょっと何を言っているか分かないけど、別にいい」


 ルー語を知らない少年は眉を顰めていたが、すぐに凛々しい顔付きで肯定する。なので俺はなるべき口を押え、ニヤニヤが見えないように気を付けながら言った。


「君って、好きな子いるの?」


「へ? ......ななななんでいきなりそんな質問をすんだ!? それこの場じゃその質問関係ないだろ!」


 一瞬俺が何を言っているから分からなかったようだが、すぐにその意味を理解した少年は、顔を真っ赤にして反論した。彼の後ろの控えている他の友人達は、彼の驚きように驚いている様子だ。たしかに彼の言うようにこの場では関係ない話だけど、君達が吹っ掛けてきたんだからその尻ぬぐいを自分達としないといけない。つまり展開的に面白そうなので、このまま質問を続けるということである。


「でどうなのよ。好きな子いるの? いないの?」


「あーもう分かったよ! いるよ! はいこれでいいいだろ!? 早く証拠を出せ!」


 観念した少年は、すぐ自白しているが、残念ながらまだ終わりませーん。どんどん行きましょーう。


「へーなら誰? 後ろにいる女の子達なのかな?」


「そんなわけないだろ! こいつらを友達だ! というか早く証拠を出せよ!」


 迷いなく断言する少年。彼らとの間には友情のようなものがたしかにある。それと尋問はまだ終わりません。


「ふ~ん、そ。......ならベルちゃんかな?」


「......」


 その問いかけに対し、不自然に顔を逸らす少年。やはりビンゴ。つまり尋問は佳境に突入する。


「ねえねえどうなのよ。うちのベルちゃんが好きなのかなあ?」


「別に......そういうわけじゃないけど......」


 ベル本人にあまり聞こえないよう少年に近付き、ウザイぐらいに彼の顔を覗き込むようにして更に訊く。


 すると周囲から、『ざわざわ......ざわざわ......』と擬音が聞こえてきた。よく聞き取ってみると、「本人達の目の前で、なんて残酷なことを......」、「なんでゾルさんは、あんな酷いことをする人族を招いたんだ?」、「若いっていいな~」などど声さまざまである。ゾルさんの言う通り、この村はなんか若干抜けているような気がするが、今も気にすることではない。


「ほら、お兄ちゃんに言ってみ。なんなら相談に乗っちゃうよ」


「お、俺は......」


 初めとは違い、ずでに立ち位置が逆転した俺と少年との一方的な攻防は続く。この時まで、俺も周囲もそう予想していた。だが、ここで調停者が介入してきた。


「も~キャプテン! 皆をイジメないで~!」


「メンゴメンゴ、ちょっと言い過ぎた。だからベルもそんなに怒らないで」


 おやすみプンプン怒っています、とよく分からない感じで調停者ことベルは、頬を膨らませそう訴えかけてきたので、俺はすぐに平謝りをする。こうすれば大体の場合良い方向に流れていくと、昔のドラマでやっていた......ような気がする。だからなのか、ベルは俺に疑いの目を向ける。つまり、ガセネタということだ。少年や周囲の人達は、ベルのいきなりの参戦に驚き、傍観している。よって、俺は針の筵である。つまり、形勢逆転ということだ。


「ホントに反省してる~?」


「反省してます反省してます。それにほら、ベルってそんなの分かるだろ? なら今の俺からそれを読み取れるだろ」


 すると、ベルは目を糸のように細くして俺を見た。そして、その判決はすぐに下る。


「......全然反省してな~い!」


「ごめんなさいすみません失礼いたしました申し訳ありませんアイムソーリーヒゲソーリー」


 土下座をする勢いで、覚えている限りの謝罪の言葉を用いて即座に切り返す。するとまた周囲から、『ざわざわ......ざわざわ......』と聞こえてきた。なので再度聞き取ってみると、「やっぱすごいな、ベルちゃんは......」、「この村の看板娘だな」、「若いっていいな~」などと聞こえてきた。今の会話の中で、一体どこに若い要素があるのか理解に苦しむな。


 それを聞いてもなお、ベルは納得していない様子だ。てか、ベルって俺の味方だったはずだ。なのに、立ち位置は俺の方ではなく、少年を含む友人達の方に傾いているようだ。俺という存在が、彼らの友情関係を更に強くしたのだろう。こう改めて自分を省みると、なんか結構すごいんだな俺って。そんな感じで自信を元気づけないと目から、塩分多めの味噌汁が出てしまいそうである。


 俺は裾で目を拭いつつ、ベルの気を逸らすためにあることを提案するために、ベルだけに聞こえる声量で言うことにした。


「それよりもベル、俺達の本来の目的を忘れたのか?」


「目的~? ......あ! 思い出した~!」


「だろ。だから、こんなことしている場合じゃないだ」


「うん! そうだね~!」


 華麗なる大逆転を見事実現した俺。すぐにそのための準備に取り掛かるため、まだうまく状況を飲み込めていない魚人族の人達に聞こえるよう大きな声で叫ぶ。


「えー皆さん! いきなりのことで申し訳ないのですが、一旦後ろに下がってもらえないでしょうか?」


「なんで余所者のいうこと聞かないといけないんだ!」


「それに理由も言ってないじゃないか!」


 どこからともなく、そんな声が上がり始める。


「理由はあれです。捕まえてきた魚を、皆さんにお見せするためです」


「なんでそれで下がる必要があるんだ!」


「それに理由も、は言ったな。なら、なんで下がるってこれもたった今言ったな......そうだそうだ!」


 どんだけ否定したいんだこの村の人達は......。一応ゾルさんから、その辺の理由を聞いているので、あまり気にはならないが、このままでは一向に話が進まない。そんな俺の意思を汲み取ったのは、彼らを取りまとめている族長、ゾルさんであった。


「皆さん、彼の指示に従いましょう」


 まさか族長が!? そんな眼差しを、ゾルさんに向ける彼らに対して当の本人であるゾルさんは、周囲を見回すように言った。


「勘違いしてはいけませんよ、皆さん。彼、ユウトさんは、この村の決まりに則た上で、今こうしているわけなのです。つまり彼は、真摯にこの村の決まりと向き合ったということ。それに対し、私達がしっかりと応えないでどうするんですか? 彼に対し、失礼だと思わないのですか?」


 空間が静まり返った。ゾルさんの言葉が、この場にいるすべての人達の心に響いたのは言うまでもない。静寂を保ったまま、彼らは言う通りに後ろの下がってくれた。その中には、ベルの友人達も含まれており、彼らは最後までベルを心配しているようだった。そんな彼らや、その対象であるベルを見ていると、不覚にも少しの羨ましさを感じてしまった。今の俺が持っていないものを、彼らはもっていたからだと思う。


 心の中のモヤモヤ感を消すため、そして自分自身を落ち着かせるために小さく深呼吸をした俺は、ゾルさんの対応に応えるために真剣な顔付きになる。それから何かを悟ったのか、その場にいる人達全員が固唾を飲むかのように静かになった。


 それを確認した俺は、なるべく真剣にできるように意識した。


「レディースアンドジェントルメン! 今宵、この場にお集まりいただき誠に感謝します。先ほど私やゾルさんが伝えた通り、これから皆さんに認められるために捕まえてきた”ある魚”を披露したいと思います」


 収納魔法を発動し、その中にいるセルちゃんの尾鰭を掴む。彼らも、一体どんな魚を捕まえてきたのか、と興味津々の趣でこの後の展開に期待しているようだ。


「その”ある魚”とは、これです!」


 投げ飛ばす勢いで収納ボックスから、取り出し、そのまま砂浜に置いたつもりだったのだが、勢いが良すぎて叩きつける感じになってしまった。結果、大きな地響きとそれに見合った砂ぼこりが辺りを襲った。


 数秒後、それが治まり、俺が捕まえてきた魚の正体を見た時、俺とベルを除くその場にいる人達の反応は異口同音であった。


「「「「「............」」」」」


 そんな中、最初に落ち着きを取り戻したゾルさんだ。彼はすぐさま、俺に詰め寄って来た。


「ユウトさん! この魚はセルフィッシュではありませんか!」


「ええその通りですが、そんなにすごいんですかこの魚は?」


「すごいなんてものじゃありません。セルフィッシュとは、このオケアヌスにおいて一番危険な生物であり、ここ数十年私達も捕まえたことがありません。加えて、もしこの魚を捕まえようと思うなら、ある程度の犠牲を覚悟しなければならないほどの危険度でもあるのです」


 ゾルさんは額に汗を浮かべながらも、理路整然に説明してくれた。


 ベルから詳しく訊いていなかったので、その危険性がどれほどのものか判断できなかった。しかし、ゾルさんの様子から考えてみるに、それほどこのセルちゃんは危険であるということが分かる。だが、それを聞いた上で一つ気になることがある。


「ですが、それは正しくないと思いますよ」


「? 何かあったのですか?」


「こいつを捕まえた後、もう一匹捕まえれる機会があったのですが、その際に海蛇のような生き物に横取りされてしまいました。なので、セルフィッシュではなくその海蛇が最も危険な生物だと思いますけど......」


 その瞬間、ゾルさんの顔色が先ほどまでとは、明らかに変化した。


「その話は本当ですか?」


「ええ、ベルも一緒に見たので。なあベル、あの海蛇みたよな?」


「うん、見たね~」


「そうですか......」


 一人納得しているゾルさん。まったく理解できない俺。ベルからも詳しく聞いていなかったので、それが裏目に出てしまったが、ベルよりもゾルさん方が詳しいだろう。


「その海蛇ってどんな奴なんですか?」


「......私も実際に見たことがなく、今から話すこと聞いた話です。その海蛇、名はシーサーペントといい、それは災いと共に現れる言われています。過去に一度だけ、現れたそうですか、その際はすぐに帰って行ったと、この村の伝承では言い伝えられています」


 なんかこの世界妙に伝承多いな。竜人の里でもパシリババァの伝承があったし。


「ということは、今オケアノスで起こっていることが、その災いということですか」


「そう考えるのが妥当だと思います」


「それで、そのシーサーペントは敵、味方どっちなんですかね」


「伝承によりますと、シーサーペントの意思は、このオケアヌス全体の意思であり、それ反する者は、すべてを飲み込まれると言われています。なので、敵、味方はっきり言い切ることはできませんね」


 どうやら俺はとんでもないものを捕まえようとしていたようだ。あの時のことを再度思い出してみても、あんな生物と戦っても勝てる気がしない。仮に敵だったらどうしよう......。


 それにしてもなんか周囲が騒がしいな、そう思ってやっと今置かれている状況を思い出した。村の人達は、セルフィッシュを初めて見るかのような目で興味津々であり、時折俺の向けられる視線は、先ほどまでとは違い、若干の尊敬のようなものが含まれているような気がする。もちろんその中には、例の少年も含まれているのは言うまでもない。


「キャプテン! 俺にもそいつの捕まえ方教えてくれ!」


こちらの近づくなり馬鹿なこと言い出す少年。さっきと明らかに態度が違うぞコイツ。


「ばっかこっち来んな! お前さっきと態度ちげえじゃねか! それとキャプテンはベル限定だ! お前が言うんじゃね!」


「いいじゃんかよキャプテン! さっきは相談に乗るって言ったじゃんか!」


 くっそ! 言質を取られちまった! 


「ああ分かった。だから、キャプテンはやめろ。いいな?」


「よっしゃー! ありがとキャプテン!」 


「......はあー、もういいや」


 この日、村の人達から向けられる嫌な視線はなくなった。しかし、それに伴い新たな問題が俺に降りかかったのは言うまでもなかった。



 



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