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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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遭難


 よし、一旦落ち着くんだ。クール、クーラー、クーレストな俺よ。


 ここで焦っても冷汗以外何も生み出さないし、そのせいで返って現状悪化が悪くなったりする可能性がある。


 だからここは落ち着いて周囲の状況から考えていくべきだ。


 まず今はすでに夜の時間に突入している。現に、空には数多の星々が瞬いているからだ。加えて今日は月、じゃなくてセレネだな。それが浮かんでいないからか、いつも以上に星々がその光の強さを強調しているように見える。


 そういえば、星の位置から現在地を割り出すっていう方法があるみたいなそんな話をどこかで聞いたことがあるな。


「ベルってさあ、村までの帰り道を星の位置の関係から割り出したりできる?」


「何それ~、ベルそんなのできないよ~」


 うん、俺もできないね~。


 ヤバイヤバイヤバイどうすればいいんだ、この状況。このままでは、『十五少年漂流記』の実写化をしてしまう。そして、アカデミー賞の候補に挙がり、あわよくば主演男優賞も取れるかもしれない。あれ? よく考えると案外いいかもな、この流れも。


 だがしかし、その代償として、無人島0円生活を一生続けなければならず、村の皆様方に誘拐犯として一生認識され続けるだろう。よく考えると今俺って電流鉄骨渡りしているようなもんだよな。これで落ちてしまったらコンクリートの地面とキスとしないといけないし、焦って鉄骨を触ってしまってもやはりコンクリートとキスをしないといけない。


 つまり、このデスゲームをどうにかしてクリアし、利根川にぎゃふんとじゃなくて魚人族の村に帰ることが今の目標だ。


 そのための解決策があるものか、と俺は鼻を摘まみながら考える。


 そんな空気を察したのか、ベルは心配そうな表情でこちらを見ていた。


「キャプテン~、ベル達このまま帰れないのかな~......?」


 今俺ができることは、俺の不安をベルに移さないことだ。なので、俺はなるべくベルが安心できるように気を付け、胸を張ってこう言った。


「心配するな。どうやってしてでも、帰るぞ。皆の待つ村に」


 俺じゃなくてベルだけどな......今は!!


「キャプテン......。うん! そうだね~!」


 それを聞いたベルは、瞳を潤ませて俺のことを見ていたが、すぐに袖で涙を拭うと俺に呼応するかのように、そして自信を鼓舞するかのようにそう元気な声でそう言った。


 そんな様子を見ていたら、誰だって守りたくなるものだ。それが妹のような存在だったなら、なおさらその気持ちが強くなる。


 働くんだあぁぁぁぁ! 俺の脳みそよおぉぉぉぉ! 今がその時だあぁぁぁぁ!


 そう念じるように頭を抱えて考えていると、一つのある妙案を思いつく。


 それを実践するため、俺はすぐにそれを創造することにした。その創り出されたものを見たベルは、今自身が被っている帽子とそれを見比べるかのように見ている。


「それってこの帽子みたいに被ったりするの~?」


「一応被ったりするが、これは危険なところで被ったりするものだな」


 安全第一と記載されている、黄色いヘルメットを手に持ちながら簡単に説明した。一応注意しておくが、『がっぽり建設』ではないからな。それにしても自分で出しておきながら懐かしいコンビ名だ。彼らは元気にやっているのだろうか。


 彼らの生死はとにかく俺は、そのヘルメットを被る前に再度、現状打破の道筋を考える。すると......?


「ああそうか。ここはああやって、あそこをこうすればうまくいくかもな。そんでもってごにょごにょ......」


「?」


 いきなり身振り手振りし始めた俺を見たベルは、不思議そうにしながらも静観している。


 そのことに少しの安堵を思いつつ、俺は最後の締めを行うため、創造したヘルメットをすぐさま被った。そして、人差し指でヘルメットの側面を軽く突きながら、例のセリフを口にする。


「ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴーー












 ユウトドットコーーム!!」


 コーーム!! コーーム! コーーム......。波の音しかしない中、俺の声だけが木霊した。


 横目でベルは見ると、目を丸くしている。案の定ベルは、真っ先に思い浮かべるであろう疑問を俺に投げかけてきた。


「今のぴぴぴって何なの~?」


「何て言えばいいのかなあ......一言で言い表すなら、『発見』だな」


 他にも頭に電球やビックリマークを浮かべる方法や、虫メガネを使用する方法、後は、後は......何もねえな。


「? ......! もしかして帰る方法思いついたの~!」


 その意味を吟味するかのようにベルは考えている様子だったが、すぐその答えに辿る着いたようだ。おめでとうベル隊員! 君は本日をもって、私立シスコン大学を卒業すること証する! ちなみに次は、大学院だぜ!


「その通りだぜアミーゴ! だから答え合わせと卒業記念に俺、キャプテンの後に付いてきなーさい!」


「おーけーだぜキャプーテン!」


 盛り上げようしている俺に合わせ、ベルも変な発音ながらも張り切るように言った。いつのまにか俺から学んできたんだろうな。教え子の成長とは、やはりいいものだな。今更ながら、セスの気分を理解できたかもしれない。そんなセスは、元気にやっているのだろうか......。


 セスの安否が気になりつつも、俺はベルは引き連れて船の操縦室に向かうことにした。そして、その部屋に到着した後、俺は引き出しを開けて船の手引書を開き、ある項目を探す。


「え~と......ああ、これか」


 探していた項目の内容を見ながら、操縦席に座ってその手順を踏んでいく。最後の仕上げでボタンを押すと、一本の波打つような線が、設置されてあるディスプレイ上の画面に浮かんだ。


「この線って何なの~?」


「これは、ここまでの道筋を表した線だ。つまりは、この線を辿って行けば村に帰れるということになる」


 ベルの疑問に答えつつ、俺は手動から自動モードに切り替える。この暗い中、疲れ切った体で運転するとか面倒くさいからな、ホント技術の進歩に感謝感激。転じてこの船を使用者の親父には、五体投地をプレゼント。


 というわけで、史上最大の危機? は一応去った。この後は、この自動君に任せておけばノープロブレム。気が付いた時にはあら不思議、すでに村に到着しているだろう。


 降りかかろうとしていた危機が去ったので、俺はベルを引き連れて屋外に出た。先ほどはそれほどではなかったので、あまり注視してみなかったのだが、今日は星の観察日和だな。


「帰り着くまで暇だし、星でも見てるか」


「うん、暇だしいいよ~」


 ベルの同意を得た俺は、寝っ転がっても痛くないように毛布を地べたにひいておくことを忘れない。引き終わった後そのまま俺達は、仰向けの状態になるとその体勢のまま星を眺めることにした。


「......」


「......」


星々の光以外存在しない暗闇の中、俺とベルはただぼんやりとその光景を見ていた。今見ている星々の光は、過去から送られてくる光。つまりは、今存在するという確証はない。だが、それでも今だけは確実に存在するという確信だけはあった。そんな若干かっこいい風なことを考えていた時だ。


 一筋の光が駆けたのを見たのは。それはあまりに小さく、一瞬の出来事だった。それでも俺はたしかに見たのだ。それまるで、誰かの一生を表しているように思えたからなのかもしれない。


「流れ星......」


「何それ~?」


 てっきり寝ていたと思っていたベルが、俺の独り言を聞いていたようだ。


「見たまんま、流れ落ちる星。だから、流れ星って言うんだ。たしか、流れ星が見えている間に心の中で願い事を三回ぐらい願ったら、その願いが叶うらしい」


 特にこれといっての理由はないのだが、つい賢しぶって知識を振舞ってしまった俺の言葉を聞いたベルは、飛び起きて俺の顔を覗き込んできた。


「それってホント!?」


「お、おう。ホントのホントだ。男に二言ない」


 すぐに訂正しようと思ったが、ベルの勢いに押された俺は、それが事実だとつい認めてしまった。これはあれだ......仕方ないんだ。兄という肩書を背負っている俺にとって、ここでそれを否定してしまったら、俺は今後兄であると世間に宣言できなくなってしまう。


 しかしよく考えると、一応今のは嘘ではない。インターネットで、そんな感じの情報が載っていたのを見たことがあるからだ。だが、もし仮にそれが叶えられなかったならば俺が嘘をついているとベルに勘違いされるかもしれない......あぁぁぁぁぁぁ!! 俺は何で否定しなかったんだあぁぁぁぁ! あそこで否定しておけばこんなに苦しまずに済んだのにいぃぃぃぃ! 兎にも角にも、ベルに訊かなければならない。


「それで流れ星君に何を願うんだい?」


 俺は俺の力で叶えられる範囲の願いなら、どうやってでも叶えるように努力するつもりだ。それでダメなら、俺の命を差し出すほかあるまい。


「皆の悩み事がなくなりますようにってお願いするの~」


「......へ?」


 ベルの願いを聞いた俺は、素っ頓狂な声を思わず出してしまった。だがよく考えてみると、ベルの性格上この願いに行き着くであろうことは予想できたかもしれない。そんなベルの願いである悩みは、多分このオケアヌスを取り巻く問題についてだろう......だよね? これでいいんだよね? 皆が村の人達じゃなくて、この世界中の人達とかそんなんじゃないよね? この仮説が正しかったならば、俺の手に負えないぞマジで。


 流石にそこまで値掘り葉掘り訊くわけにもいかないので、俺は少し心配になりつつもベルと一緒に次の流れ星が来るのを待った。そして数十分後、流れ星が来た。先ほどは気づかなかったが、あの流れ星や最初の流れ星は今後の俺の人生を物語っているように感じてしまう。イコール俺は死ぬってことだ。ワァーオ!


「キャプテンは何かお願いしたの~?」


 願い事をし終えたベルが、そんなことを訊いてきた。初めは、『戦闘ではなく寿命で死にますように』、と願うつもりだったが、あくまでこの行為は禊ぎのようなものだ。


 だからーー


「俺もベルと同じ、皆の悩み事がなくりますようにって願ったよ」


「ならベルと一緒だね~」


 一緒一緒、ペアルックだね。若い子と同じってなんだか嬉しいものだね。やっぱ若いっていいね。セリフから俺は年寄り確定だね。やったね! 年金貰えるよ!


「そうだな、ん? 何かこの辺り妙に明るいな」


 たった今まで暗闇の中にいたばずなのに、突然周りが明かるくなり始めた。まだ夜が明ける時間帯ではない。何気に気になった俺は、立ち上がりその光源があると思われる水中を覗き込んだ。


 そこに見えるのは、辺り全体を照らす青白い光。その光は水中深くから漏れ出ていると思われるが、どのような仕組みでこの現象が起こっているのか想像できない。


「あ~これは多分、アングルフィッシュかもね~」


 いつの間にか起き上がったベルは、手すりの間からその光を見てそう言った。これまでのことから推察するに、今のも英語名だ。たしか......チョウチンアンコウだったはずだ。ならこの光は、あの提灯状のところの明かりということか。徐々に目が慣れてきたので、光源の先を見てみた。中心にたしかに何かあるように思えるが、それが何であるかは判断できなかった。やはりベルの判断が正しいのか? なんとなく喉に魚の骨が刺さったかのような違和感を感じたが、今はそれどころではないので、それ以上思考することを諦めることにした。


 そんな出来事やこれまでの災難に見舞われた俺達だったが、その後何とか魚人族の村が見えるところまで戻って来た。ちなみにあの青白い光は、あの海域特有のものだと推測することができた。なぜなら、あの光はあの海域を抜けた後、ここまで来る間に再び目にすることなかったからだ。


 そして徐々に、砂浜に近づくにつれて俺はあることに気が付く。


「あの砂浜にある光って村の人達......かな?」


「うんそうだよ~。ベル達のことが心配になって探してくれてるんだよ~」


 ベルは嬉しそうに言っているが、それは誤りだ。その理由は、砂浜にいる人数はかなり多いように感じるからだ。もう少し少なくてもいいんと思う。なぜなら、俺がベルと一緒にいることはすでにジュリアさんが伝えていると考えられる。そしてジュリアさんが俺にベルを任せたのは、俺がゾルさんに認められていることと、ベルが俺に危険性がないというのを証明しているからだろう。以上のことより、あそこにいるほとんどの人達がジュリアさんやゾルさんの認識仕方に疑問を浮かべ、俺のことを危険視、あるいは不審人物だと考えてあそこで待機していると思われる。


 よって前述のことから、心配が適用されているのはベルただ一人。俺はついでの漬物にすらならないだろう。よくて弁当に色合いを付けるあの緑色の草を模ったやつだ。つまり、俺は誰かの人生に色合いを付ける役目というわけだ。


 だが、このまま砂浜に到着した場合、ゾルさんやジュリアさんは俺の言い分を聞いてくれるだろうが、問題はそれ以外の魚人族の人達だ。その問題をどうにかしない限り、今後この村で活動していくなんて困難を極める。


 それに今更に考えてみると、村の人達に認めてもらうため俺は釣りに出掛け、セルフィッシュというすごい魚を釣ることに成功したが、それによって更なる問題を引き起こしたという見方もできる。俺って運がいいのか悪いのか......。


 そんな感じでこの後どうするか検討している間にも、砂浜との距離は徐々に近づきつつある。


 これ以上考えてもしょうがない。もしもの時は、ベルにも手伝ってもらおう。


 思い立ったら即行動! 俺はベルに耳打ちし、今後の計画を軽く伝え、彼らが待つ砂浜に上陸する準備を始めることにした。


 

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