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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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釣り


「......釣れん」


「......だね~」


 煌めく太陽間違った、ヘーリオスの下で、ひまわり帽子を被ったベルと同じくひまわり帽子を被った俺は、言葉通り釣りをしている。気温はゆうに三十度を超しているだろう。時々目に汗が入ってかなり痛いと思うことしばしば。


 だが、そんな過酷な環境の中で俺達が釣りをしている理由は、というよりもその理由は俺にしか当てはまらない。なぜなら、それ理由は至ってシンプルの単純明快......魚人族の皆様方に認めさせるのだ! そう! 俺の存在を! 


 ただし、アスナは抜きだ。なぜならあいつはすでに認められている。これが外見至上主義社会、やはり外見はステータスなのだろう。カッツォ!!(イタリア語でくそっ!! という意味)


 俺の怒りはともかく昨日の夕食の後、これまでの経緯をジュリアさんに話した上で、どこかいい穴場はないかといった感じで尋ねたところ、今俺達がいる場所つまりはこの釣りをしている場所を教えくれたので、そこであっと驚くような魚を釣ろうと考えたわけだ。


 気になる初期装備をクジラでも釣るのかってぐらいの釣り竿だ。これはメイド イン ユウトの作である。


 なぜ釣り竿を創造したのかというと、ここに来る前に魚人族の人達に見つからないよう気を付けながら、村の中を探索して銛などは見つけることができたのだが、お目当ての釣り竿だけが一向に見つからなかった。


 後になってアスナに訊いたところ、魚人族は水中で狩りをするからそもそも釣り竿なんてもの使用しないと言われた。


 なので仕方なく、俺の親父が趣味で使用していた釣り竿を創造することにしたのだ。これはたしか、クジラの力を以てしても折れることがないほどの耐久力を持ち、使用している糸はただの糸ではなくダイヤモンドを加えて加工したワイヤを使用している。つまりは特注品というわけだ。あの人はなんてものに金を費やしているんだ......。(呆れ)


 だが問題がまだ解決していなかった。


 船がないのだ。魚人族の人達は、釣り竿に続き船すら使用しない人達だった。


 だが、安心してください......創りました! 自分で! 小型クルーズ船を! 後しっかり穿いていますよ!


 とくかく明るいユウトのことは置いておくことにしよう。これほど高級な船を創造できたのには訳がある。かつて一度だけクルーズ船を操作したことがあったので、もしかすると? そう思いながも創造してみると普通にできたというわけだ。加えてガソリンも満タンだった。それを知って、おったまげー! ホントむっちゃ便利だなこの魔法は、といった感じで神様から貰った魔法は徐々に便利道具と化していることもまた事実。

 

 そんなクルーズ船も親父の趣味だ。職業柄、こんな高級な船や特注品の竿を買えるぐらい稼ぎをしていたのだ、ホントあの人はなんて素晴らしいものに金を費やしてくれたんだ(羨望の眼差し)。


 そういう一連の経緯で俺はクルーズ船に乗り、その穴場まで行こうとしたのだが、肝心の場所までの道のりについて知らなかった。そこで頼りにしたのだが、今俺の横で釣り竿の浮きをじっと見つめているベルだ。ジュリアさんも快く同意したので、ベルに道案内を頼むことにしたというのが、ここまでの流れというわけだな。


 そして現在に至るのだが、前述通りまったく釣れない。ここに来て早二時間が過ぎようとしている。


「ところでベル隊員よ」


 呼び方は気にするな。こっちの方が雰囲気が出ると思ったからだ。


「何キャプテン~」


 同じくこれも気にするな。こっちの方が同じく雰囲気がでると思ったからだ。ホント俺って単純だな......。


「どんな魚を捕まえれば、村の皆を驚かせれると思う?」


「う~んとね~、多分セルフィッシュかな~」


「何それ? どんな感じの魚なんだ?」


 するとベルはジェスチャーでその魚の特徴を伝えようとしてくれている。その姿をあまりに愛おしくて、今この場で入水自殺をしろと言われたら、俺は何の迷いもなくするね100パー。『本人は至って本気です』


「ベルは見たことないけど、なんかこう口のところが長い魚だって言ってたよ~」


 ああなるほどね、カジキのことね。加えてセルフィッシュって英語だね。もうツッコまないよ、可愛いけど。


「ならそのセルフィッシュ以外にも何かいるか? そんな感じの魚」


 俺としては、まだ見ぬ世界ならぬまだ見ぬ魚を見てみたいのだ。カジキなんてありふれた魚なんて、興味ないね。(クラウド風)


「あ~そういえば大人の人達が、なんか大きな蛇みないのがいるって言ってたね~」


 蛇? ウツボとかそんな感じの奴なのか、ならやっぱり興味ないね。でもこのどちらかを釣らないと村まで帰れま10だね。なら興味あるね、寧ろ興味しかないまである。


「ならそいつらのどちらかを釣らないといけないのか」


「だね~」


 フシギダネ......はい、スベッた。


 そんな会話をしているうちにいつの間にかヘーリオスが真上を過ぎており、すでに正午を過ぎていたようだ。なので一旦俺達は、ジュリアさん特製のサンドウィッチマンを昼食として食した後、後半戦に入ることにした。


「「......」」

 

 だが前半戦と違い、後半戦はワンチャン可能性があるかもしれない。その理由は、無言の俺達の目線の先にある。


 浮きが浮いたり~沈んだり~、ラジバンダリ!


 そして、ななななー、ななななー、なななななんつって! いきなり出て来てごめーんまことにすいまめーん!


「来たぞっ!!」


 魚の存在が出てきたと同時に、浮きがその姿を急速に消す。それを見た瞬間、俺はすぐさま釣り竿を握り締める。


「すっごい引きだ~! ガンバレキャプテン~!」


「任せておけ! 俺にかかりゃこんなもん一秒で釣っておぉぉぉやべえぇぇぇ! むっちゃ引くぞこいつ!」


 思った以上の引きに最後まで言えなかった俺は、ベルにかっこ悪いところを見せまいと腰を据えて竿に力を入れ、どうにか獲物を逃がさないように踏ん張る。


 その硬直状態が数十分ほど続いたように感じた。実際のところは数時間ほど過ぎたかもしれないが。それに運の悪い事にクジラを釣れるほどの耐久力を持つこの竿は、先ほどから怪しい音を立てている。このままでは竿が折れるか、ワイヤーが切れるかのどちらかだ。


 だが、あまり力み過ぎないよう気を付けながらリールを巻くことを忘れない。なぜなら、俺のステータス上、本気を出してしまうと獲物が釣れる前に、この竿を折れてしまうからだ。そんな焦る気持ちを抑えながら、力加減に気を付けて徐々に獲物との距離を縮めていく。


 そしてついに、その魚影が姿を見せ始めた。


 初めはそこまでの大きさでもなかったのだが、そいつとの距離が縮まるにつれてその大きさを目視できた。それを見た俺とベルの頬に一筋の汗が流れる......。


 でかい......単純だが、その言葉以上の表現力で言い表せるほどの冷静さを、この時の俺は持ち合わせていなかった。


 そいつの大きさは、約二十メートルほどだ。世界最大のシロナガスクジラには劣っているが、こいつは哺乳類じゃない......魚だ。地球で言うところのカジキ、この世界ではセルフィッシュという。


 その姿が見えた瞬間に止めを刺そうと思い銛を用意しようと思ったが、普通の大きさでは役に立たないと思ったので、俺は黒刀を召喚しそれに魔力を纏わせ大きさをいつもより大きくし、それを奴の弱点だと思われる場所を貫くつもりで刺した。


 その瞬間、奴は痛がるかのように水しぶきを上げ抵抗しようとしていたが、時間と共にその力も弱まり、ついには微動だにしなくなった。


「っとまあーこんなもんだ」


「すごいよキャプテン~! これなら皆びっくりだよ~!」


 ベルは、俺と釣り上げたセルフィッシュを見比べながら、最高級の褒め言葉を授けてくれた。それだけでこの魚を釣り上げるまでに消費したSAN値は、マックスまで回復した。


 やはりこれからの時代はポーションなどではなく、このような純粋な笑顔が市場経済を占めるのだ。といった変な方向にずれている俺の思考を、ベルのワクワク顔によってすぐに修正させられた。


「早く戻って皆を驚かせよ~!」


「まあ待ちなさい、ベル隊員よ。まだ俺達にやるべきことが残されている」


「?」


 俺がセルフィッシュを収納ボックスに丁寧に収納しながら、ベルにそう問いかけると彼女は頭を捻っている。どうやらセルフィッシュに圧倒されたから、もう一匹のことを忘れているのだろう。


「第一ミッションをクリアした。次に第二ミッションである、蛇のような生物を捕まえる。それがすべきことだ」


「でもセルフィッシュだけでも皆を驚かせれると思うんだけどな~」


 それを聞いたベルは、渋ってるかのようにしている。そんなに早く村に帰って、村の人達をびっくりさせたいんだな。たしかにあれだけの魚を釣ることができたのであれば、誰だって驚くだろう。だが、それだけでは不十分だ、無論村の人達ではなく俺達が。


「いいか、よく考えるんだ。俺達は皆を驚かせたいと思っていると同時に、まだ見ぬ世界を見たいとも思っているはずだ。そして、それにうってつけな生き物が、その蛇みたいな奴だ」


 一瞬ベルの体がピクリと跳ねた。今のベルは、浮きの先のエサが気になっているリトルマーメイドみたいなものか。なら撒きエサを投入して、誘ってみるしかないな。


「それによく想像してろ。セルフィッシュに続いて、その蛇みたいな奴を捕まえて、それを村の皆に見せた時の反応を。どうだ、見てみたいと思わないか?」


「見た~い!」


 どうやら食いついたようだ。この勢いを保ったまま、ベルの好奇心を釣り上げにかかるぜ!


「なら今、俺達がすべきことは!?」


「この勢いに乗って蛇を釣ること~!」


「ならこのまま釣りを楽しもうぜ!」


「お~!」


 完全にリトルマーメイドことベルの好奇心を釣り上げることに成功した俺は、すぐさま新たに針の先にエサを取り付け、それをできるだけ遠くに投げ飛ばした。というのが約二時間ほど前の俺達だ。


 時間はすでに夕方、空には昨日同様の茜色をした雲があり、遥か彼方の水平線から真っ赤に染めている。


 すでにベルの好奇心はどこかに飛んで行いったのだろう。今は船の上で文字通り船を漕いでいた。


 対して俺は燃え尽き症候群に陥ってしまっている。すでにやる気は何処へやら......。


 そんな諦めムードの中、そろそろ帰ろうかなと思って浮きを見た瞬間、いきなり浮きが勢いよく沈んだ。


「おいベル隊員! 起きるんだ!」


「ん~どうしーー」


 俺の竿の状態を見たベルは、眠気など吹っ飛んだかのようにその一点だけを見つめるている。


 そんな彼女の期待に応えるために力加減に注意しながら、俺はリールを巻いていく。すでにセルフィッシュを釣る際に、どれぐらいの力で引いて巻けばいいのか学んだので、今かかっている獲物を釣るのにもさして時間もかからなかった。


 だが、その魚影が見えたと同時に、俺達の口から落胆の言葉が出てきた。


「なんだ~セルフィッシュか~」


「なんだよ、セルフィッシュかよ」


 俺達の目の前に先ほど釣り上げたセルフィッシュと瓜二つのセルフィッシュがまた現れたからだ。


 てかもうお前の時代は、ついさっき終わったんだよ。今は蛇の時代だから、お前の出る幕じゃねえんだよ。それともあれか、俺達が釣ったあのセルフィッシュってお前の旦那か何かなの? それならもうお亡くなりになられているから手遅れだよ。でも俺って体の半分が優しさで出来ているから、そんな君を旦那と一緒とところに逝かせてあげるよ。


「とにかくこいつも止めを刺し、ん?」


「どうしたの~?」


 先ほど同様黒刀で止めを刺そうと思ったのだが、俺はあることに気が付いた。そんな俺のことをベルは不思議そうに見ている。


 そんなベルに分かるように俺は指をさして教えてあげることにした。


「あのセルフィッシュの下、水中からなんか来てないか?」


「? あ~ホントだ~。なんか来てるね、何だろう~?」


 この時俺の脳裏をある可能性が横切った。


「もしかすると、例の蛇みたいな奴かもしれないな。多分、このセルフィッシュをエサだと思っているかもしれないから、このまま釣りを続行するぞ」


「うん、分かった~」


 ゆっくりとしたスピードでこちらに近づいている魚影を発見した俺は、そう判断してベルにも同意を得た上で釣りを続行しようと思ったのだが、その魚影は急にそのスピードを上げ、俺達の獲物であるセルフィッシュに肉薄する。


 それに気が付いた時には、もうすべてが終わっていた。


 目の前に巨大な水しぶきが上がり、それが消えた時にはすでにセルフィッシュの姿はなかったからだ。


「み、見たかベル? あいつを」


「み、見たよ。なんかすっごく大きかった」


 俺がロボットのように首をベルの方に向けそう尋ねると、彼女もいつもの口調が崩れるほどの衝撃を受けているようだった。


 一瞬だけ見えたのだが、あのセルフィッシュを奪った奴は、口だけであの巨大なセルフィッシュを咥えていた。二十メートルもあるセルフィッシュを咥えれるということは、それに見合った口、そして何より想像できないほどの体格の持ち主だということだ。


 そんな奴の体表は、ベルの言った通り蛇のような青い鱗で覆われていて、それらすべてが光沢を放っていた。そいつは、セルフィッシュでさえ噛み切れなかったあの特注ワイヤーを噛み切り、セルフィッシュを水中深くに持ち逃げしたのだ。


 俺とベルはいきなりの出来事に、その後奴が去った水中を呆然と見ていることしかできなかった。


 その時、ふと俺はあることを思い出した。たしか深海の調査は、1パーセントぐらいしか進んでいないという話だ。だが、これは地球基準での話だ。地球ほどの技術を持っていないこの世界だと、地球以上に調査されていると思えないな。つまりは、このオケアヌスにはさっきの奴みたいな生き物がわんさかいるかもしれないということだ。


 それに、もし仮にあの時ワイヤーが切れなかったら、俺はすでにここではなく深海にいたかもしれない。そう思うと体がガチガチと震えるのを感じた。


 それを抑えるために俺は、体をさすりながらいまだ水中をジッと見つめているベルに声を掛けることにした。


「と、とにかく、時間も時間だしそろそろ帰るか」


 すでに地平線からは、微かな夕日の残滓が見えるだけで、辺りは暗闇包まれようとしていた。


 そろそろ戻らないとジュリアさんに迷惑を掛けてしまうし、アスナから変なレッテルを貼られるかもしれないってすでに貼られてたな......。


 そのことに気が付いたベルは、こちらを見ると頷く。


「そうだね~。早く帰って皆を驚かせないとだね~」


「たしかにな。なら早く帰るためにも、ベル。帰り道よろしく」


 ここまでベルの指示に従い運転していたので、俺は詳しいルートを正確には把握してない。だから、帰り道をベルにお願いしたのだが、何かベルの様子がおかしい。


 俺の言葉を聞いたベルは、船に取り付けられているライトの下、辺りを一周するかのように見回すと、頭を傾げているからだ。


「あれ? ベルちゃん帰り道はどうしたの?」


「......暗くて分かんなくなっちゃった~」


 一瞬の間を置いて誤魔化すかのように笑顔でそう言うベルの言葉を聞いた俺は、ある言葉が脳裏を掠め、ついさっきまでの震えとはまた別の意味で震え始めた。










 ーーーヤバイ......遭難したかも......ーーー


 



 


 

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