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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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会談所

 

「それでつかぬ事をお訊きしますが、この村へはどのようなご用件で?」


 今俺達は、あの巨大な会談所の中で族長さんであるゾルさんから、前述通りこの魚人の村への入所理由について訊かれている。


 なので、噓偽りなく真実をありのままに話すことにした。


「簡潔に申しますと、人助けですね」


「なるほど、人助けと......え! それだけのためにこんな辺境の地まで来たんですか!?」


 なんか竜人の里でもこんな展開だった気がするな。だがそれが真実だ。真実はいつも一つ! とは限らないがこの場合は一つである。


「えぇまあそのためにここまで来ましたね。ですが、ここに来る前は竜人の里にいましたし、そこまで辺境というほどでは」


 あそこは辺境を通り越して秘境みたいなところだからな、そういう意味において大体のところはそれほど遠いとは感じない気がする。


 それを聞いてゾルさんは納得しているようだ。


「なるほど、たしかに竜人族の方々がお住みになっている場所は、ここ以上のところにありますね」


「でしょ。まああそこ以上に、ここまで来るのにいろいろと手を焼きましたが......」


 俺は収納ボックスの中に静寂を保っている、二本の妖刀のことを思い出すとあの時のことを思い出して疲れた気分になってしまった。


 だが、それを知らないゾルさんは、更に質問を重ねる。


「それにしてその人助けというものは、そちらでは流行っている活動なのですか?」


 なんかゾルさんの言動がおかしいような気がするな。


「どういう意味ですか?」


「いやですね、以前というよりも十数年前に、この村に一人の人族の女性の方が訪れたことがあるんですが、その方もユウトさんと同じことを言っていたので、つい人族側ではそのような活動が流行っていると思ったのですが、違うんですか?」


 ああなるほどね、それって例の天使族の人のことね。それと流行ってのは、そんな長いスパンじゃなくてもっと短いスパンだね。


「多分流行っていませんね。俺やその女性は、仕事や義務みたいな理由からこういう活動をしています。多分俺達以外で、それをしている人はいないと思いますが」


 実際のところ、その天使族とは会ったことがないので、その胸中がどのようになっているのか話してみないことには分からないけどな。


 それを聞いたゾルさんは、俺達のことをキラキラした瞳で感心するかのように見つめている。


「それでも凄いですよ。人族の方々はこのような素晴らしいお考えをお持ちになっているんですから」


「いや~照れますね。それほどのことではないんですがっと話が逸れているようですし、単刀直入にお尋ねします。ここ最近、何かこの村で困ったことはありませんか?」


 大部話が逸れて俺達の業績博覧会のなりそうなので、急遽話を戻し、ゾルさんの方を真剣な顔付きで見ると、それに気づいた彼も同様な顔付きなった。


「そうですね......今現在、困ったことは二つあります。一つ目は、このオケアヌスの汚染問題です」


「たしかに、ベルもそのためにごみ掃除していると言っていましたね。それでそんなに酷いんですか、その汚染問題は」


「目に見えるごみはそれほど多くはないのですが、それ以外の目にも見えないものとなると魔法などを使わないといけなくなります。しかし何分、分かっている範囲ではここから数十キロの範囲で、その汚染問題が確認されているので、人手がかなり必要なのです」


 その時のゾルさんの表情は、現状をどうすればいいのか苦悩しているように見えた。たしかに、地球でもそんな感じの問題が度々世間を騒がせてるし、今も解決できてないからな。それに、俺達は陸に住んているから物凄い影響を受けていると言えないが、彼ら魚人族はこのオケアヌスに住んでいるようなものだから、その問題が生活に密接に関わってくるのだろう。


「なるほど、分かりました。では、二つ目は?」


「二つ目は、ダンジョン問題です」


 おっとこれは、非常に気になる問題ですね。


「ほうほう、詳しく」


「かなり昔から、この付近に一つのダンジョンが存在しました。しかし、それは存在するだけで特にこれといった問題はなかったものですから、その人族の女性にもそのことを言いませんでした。ですがここ最近、そのダンジョンからモンスターが湧くようになり、漁をする際にそれらが邪魔し、それどころの騒ぎではないのです。なので、つい先日からそのダンジョンに調査隊を送り込み、その原因を調査しているのですが、このままでは埒が明かないと思い、是非お二方にどうにかしていただけたらなと」


「もちろん構いませんよ。是非!」


 ダンジョンといえば、秘宝があるかもとかオーブリーが言っていたしな。それに芋っている堕落した神々を引っこ抜くチャンスだ。なので躊躇う必要なんてない。決して秘宝があるかもしれないが大半の理由を占めているわけではないので、勘違いしないでください。


「そうですか! いや本当にありがたいです!」


 肯定の返事を聞いたゾルさんは、俺の手を握りぶんぶんしているが脱臼するかもしれないでやめてもらいたい。それに彼には悪いが、俺には深刻な問題が残っている。


「ところで、一つご相談があるのですが......」


「はいはい何でも申してください!」


「この村の人達からなんか不審な目で見られるんですが、これってどうにかできませんかね」


 それを聞いたゾルさんは、どこか納得顔になる。どうやら思い当たる節があるんだろう。


「あーなるほど。それは簡単なことです、ご自身のお力を証明すれば解決しますよ」


「つまり、誰がと戦えばいいんですか?」


 一応アスナに続いて人類ナンバー2と思っているからな、アスナや堕落した神々以外には勝てるし、問題はない。だが一体誰が俺の相手をするんだ?


 そんな疑問を汲み取ったゾルさんが、その力の証明について説明し始めた。


「そうではなくてですね、このオケアヌスで魚を捕まえてくる。以上です」


 一文で説明終わったな.......。竜人の里では、ギルちゃんと決闘をして滞在に許可を得たからな、それが普通だと思っていたんだが、ここではそれが普通のようだが、ホント大丈夫かこの村は? 全員ゆとり世代とかじゃないだろうな。


「それだけでいいんですか? 簡単すぎやしませんか」


「いえいえこれも重要なことです。私達魚人族は、竜人族や獣人族といった戦闘民族と違い、あまり戦闘を得意としません。ですので、これぐらいが丁度いいのです。それにーー」


 そこで一旦、ベルをちらりと見ると、


「その子がいるので大丈夫だと判断したからです」


 何か釈然としないが、魚釣りぐらいなら楽勝だしいいけどな。ちゃちゃっと釣って俺の魚釣りの実力を見せてやろうじゃないか!


「なら早速捕まえてきますね」


「あっその前に、滞在場所についてなんですが。この会談所でも構いませんか?」


 ゾルさんはどこか申し訳なさそうにしているが、こちたとしては寝泊まりする場所があるだけマシなので、その申し出は快く受け取ることにした。


「えぇよそ者の身分ですし、どこでも構いませんよ。アスナもいいよな?」


「はい、特に問題ありません」


 だが、それに納得していない人物が一人、俺の裾を引っ張りながら訴えかけ来る。


「え~ベルのうちに来なよ~」


「俺は構わないけど、どうしてなんだ?」


これはあれじゃないか、「お兄ちゃんが好きだから~!」が来るんじゃないのか? 勝ち組決定か!? 有罪判決出ちゃうんじゃないのか!?


「う~とね~、楽しい話が聞けるかもだから~」


「とっておきの話を聞かせてやろうじゃないか!」


「ユウトさんは、いつもこのような感じなんですか?」


「はい、大体このような感じだと認識してもらって構いませんね」


 そういうわけで、俺達の居候先はベルの家に決定した。




 


 




 



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