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彼女とクラスメイト達に裏切られた絶望者は異世界を夢想する  作者: 滝 清幹
第三章:堕落した神々との戦い:アルタイル編
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目的地

 


 すべての食材に感謝を込めて!


「「いただきます」」


 完成した生姜焼き風の料理を目の前にし、合掌をしてそう言うと俺はすぐ箸を料理というよりも、初めからメインであるお肉ちゃんを頂くことにした。


 口元まで持ってくると程よい色に焼けたお肉ちゃんから、どこかで嗅いだことのある芳醇な香りが俺の鼻腔をくすぐる。たしかこれは以前、ジャネットさんが料理を作る際に使用していたスパイスの匂いと同じだ。どうやらあのスパイスも貰っていたようだな。


 そんなことを考えつつ俺ゆっくりとお肉ちゃんを、俺の口の中に誘いぱっくんちょ。


 もぐもぐ、ごっくん、あ~美味しい! 一瞬目からオプティックブラストが出るかと思ったぐらいの美味しさだ。ホント我ながら感想がマイアックだな。これは伝わる人にしか伝わらず、伝わらない人はググるしか方法がないぐらいのマイナーな技だ。


 

「それしてもいつ食ってもうまいな。このぐらいの腕前ならこの仕事が片付いた後に、店を開いて金稼いで隠居生活いけるんじゃないのか?」


 この料理を食った感想から斜め方向に発展した結果、俺は今後の人生設計を考える羽目になってしまうのだが、ホントこれならどこでも通用するほどの味だからな。脱サラした連中向けに講演会を開いてがっぽがっぽするのも悪くない。これも名案だな、まさか今日一日で二つも名案を考え付くとは。やはり俺も天才の一人ではないだろうか。つまりそろそろ『天才てれびくん』からのオファーが来るかもしれないということ......以上証明終了イェイ!


「一体何年先のことを考えているですか、堕落した神々の数も分からないのに」


「前も真っ暗、後ろも真っ暗、ついでに周囲も真っ暗だ。こんな黒黒しい人生なんだ、楽しい人生設計を考えて気を紛らわしたいんだよ、俺は」


 どこか呆れた様子でアスナは俺のことを見ているが、今の状況はまさに『前虎後狼』が当てはまる。そんな俺のセリフ、長年の会社勤めに嫌気がさして家に帰って来た中年男性のようなセリフだ。召喚されていなかったら二十年後こんなセリフで家に帰って来たんだろうな......その時俺の頭皮は大丈夫なのか? ストレスや人間関係によって殲滅とかされてないよな?


「ユウト様......もしこの仕事が無事解決した場合、もちろん地球に戻りますよね」


 若干将来の頭皮の運命を心配していると、アスナが姿勢を正しこちらを少し真剣な顔付きになるとそんなことを訊いてきた。だがそんなことは訊かれるまでもない。


「もちろん帰る。あっちには俺の家族がいるんだから」


 これは堕落した神々と戦っている理由の一つでもあるからだ。


「もちろんお前も帰るんだろ?」


「もちろん帰りますが......」


 てっきり俺同様断言すると思っていたのだが、アスナは言い淀み顔を下げ黙ってしまった。


 わけが分からないが、一応理由でも訊いてみるかなそう思った次の瞬間!


「ブンブンブブブン」


 真っ暗な暗闇の中から例の接近音が聞こえ始めた。


 奴らだ......巨人だ! ではなく数取団だ! でもなく虫どもの接近音だ。


 くそっ! 最終日だから今日ぐらいはカモンベイビー虫ちゃん! みたいな心構えで若干踊っていたせいかもしれない。こういう時だからこそ注意しないといけないと何度も学んできたのに! だがどちらにせよこのままでは非常にマズい、フェアリーダンスは避けないといけないのだ。


 俺はすぐに安全地帯であるテントに向かって走る走る! 昔サードで『飛竜、走る走る!』みたいなドリクエがあったことを思い出したが、今はどうでもいい。なぜなら走っているのは飛竜ではなく俺! そして追ってきているのはハンターを模した虫達! つまりは俺が狩猟対象......このクエストだけは絶対に失敗させなければならない!


 後少しでテント(モンハンの)に! 




 


 だがこの時、ユウトはあることを忘れていた......テントを使用できるのはハンターであり、それ以外の者は使用できないということを......故に。





「あっ!」


 うっかりさんの俺は何と! そこで靴ひもを踏んでしまうというアクシデントに見舞われ、体勢を崩し倒れかける。その瞬きも許されない時間の中、俺は今から落下する付近にゲジゲジが待機しているのを発見してしまう。


「あ~や~め~て~」


 スローモーションのような声を出しながら、物理法則に逆らって倒れないようにした。だがこれで巻き戻しができたらそれこそ宇宙の法則が乱れてしまう。それを知ったらアインシュタインも驚いて舌を出してしまうってすでに舌出していたな。ならまだ一縷の望みがある! 逆らええぇぇぇぇ俺の体あぁぁぁぁ!


「いてっ」


 見事物理法則に逆らえず地に落ちた俺。倒れ嫌な汗が出ているのを感じつつ、目の前に見る。


 






 ゲジゲジ様のおなーりー!



 

 『力尽きました。これ以上復活出来ません』









「ん~~はっ! ゲジゲジは!」


 すぐに起き上がり周囲の状況を確認して、ここがテントの中であることに気が付いた。さっきのアナウンスは誤作動のようだな。てっきりそのままぽっくりあの世に行ってしまうと思ってしまったのだが、今の俺のは元気ピンピンハレールヤー!


 なんとか落ち着きを取り戻した俺は、同じテントの中で寝ているアスナを起こして、目の前に控えていたゲジゲジ様と、それを見た上でいきなり今の状況にタイムトラベルした理由を彼女に訊こうと思い、肩を揺する俺の身の上に起こったことを訊こうと思い彼女の体を揺さぶる。


「ふぁー......何ですか?」

 

 アスナは、そんな大きな欠伸をし終えるとこちらをジト目で見ているが、今は気にしない。


「おいアスナ、俺ってあの後どうなったの?」


「あの後ユウト様が気絶したので私がここまで運んできた以上です」


 一呼吸も置かないでそう言い終えと俺の反応など無視して眠りに着き始めた。


「......」


 それを聞き俺は無言で一度外に出ることにした。テントを出ると、昨日の焚火の跡があるのだが、それは朝露で湿っているように見える。続いて周囲を見回すとまだ暗い......だが、東の方角にある木々を見るとその隙間からかすかながら明かりが漏れていることに気が付いた。


「もう朝か......」


 誰もいないと分かりつつ独り言つ。タオルを手にし、近くにある小川で顔を洗うことにした。今はエアルからテトスに移る季節だ。若干水が冷たい気もするが、手で水を掬い顔を洗う。


「あー気持ちいー、けどやっぱ冷てえー」


 朝から肌男のメンズビオレを終えた俺はタオルで顔を優しく拭くと、あること事実にたどり着いた。


「そういえば、初めてだな......」


 

 

 昨日のこと思い出す。




「虫に気絶させられたのは」


 ドンゲバビー! 今回のような状況に陥って初めて俺は、自分の弱点に気が付いたのだ......。






 数時間してヘーリオスの姿が見える時間帯になるとアスナが起き上がる。その後、朝ごはんとしてスクランブルエッグ風の料理を作ってもらい、完食し終えた俺達はすぐに目的地に向かって進み始めた。


 今日でこの森ともおさらばだ。いろいろあったがまた戻って来たいな、みたいな感想は決して出てこない。願うならばもう二度と森には入りたくないな。


「匂いがしますし、そろそろかもしれません」


「匂い?」


 突然アスナが鼻をスンスン鳴らすと、そんなこと言うのでそれに倣い鼻呼吸をする。......なるへそ、たしかにあの特有の匂いが鼻腔をくすぐる。


「ホントだな。それに植物が今までとは違うし」


「それに土壌も砂に変わってきています」


 俺達の言うように、先ほどまで辺りに生えていた森特有の木々は姿を隠し、その代わりにヤシの木や海浜植物と思われる植物達が姿を見せ始め、土壌も黒い褐色森林土からサラサラとした砂に変化しつつある。


 


「よっしゃー! 到着だ!」


 


 目的地であるその場所に着くと同時に俺はそう叫んだ。そこはすべての生命の源であり、その広さは地平線まで青で埋め尽くされ言葉では言い表せないほどの大きさだ。仮に言い表すとしたならば、俺の器のでかさと同じくらいだろう。ホント俺の器ってでけぇな、そろそろ俺の愛で世界が救えるじゃないのか? 番組名変更して、『24時間ユウト ユウトの愛は世界を救う』にしたほうがいいだろう、うんそれがいいね!


 そんな俺の器を体現している気がする目の前のそれは、地球とは呼び名は地球と違い、この世界ではオケアノスと呼ばれている。だがそれでも心が叫びたがっているので叫びます。


 


 その名はーー



「海だぁぁぁぁぁ!!」


 

 俺は脇目も振らず走りながら器用に重荷になるジャケット類だけを脱ぎ捨て、そのままの勢いで海改めオケアノスにダイビングしたのだ。

 


 


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >「海だぁぁぁぁぁ!!」 そこは「ウェミダー!」にしてほしかったw
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