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冬のヒーロー2

作者: 高橋剣一郎

 今年も厳しい冬は始まったと思っていたが、いつもと違うのは雪が少ないということ。

少ないというか、チラチラと舞うことはあっても積雪はゼロと言ってよかった。


 毎年恒例となっている息子家族の年末年始の帰省を楽しみにしていた。

今年小学生になった孫にとっては、この田舎で過ごす日々は退屈かもしれないと思い、おもちゃ屋の店員と相談して、楽しい時間を過ごせる準備はしてきたつもりだ。

「あの、孫が幼稚園年長の男の子なんだけど、どの辺が今人気なんだべ。」

「ゲーム機は持ってますか?持っていればそのゲーム機にあったソフトが良いかと。まだゲーム機を持っていないのであれば、男の子でしたらまだヒーロー戦隊ものでも良いかもしれませんね。人生ゲームとかでも良いかもしれませんね。」

「お父さん、我々では決めらんないじゃない!店員さんのお勧めは?」

「はぁ、お子さんの好みが判らないとなんとも言えませんが、人生ゲームとかのテーブルゲームだったら、老若男女みんなで楽しめそうですよね。」

「んじゃ、それでいいな。」

「最近は人生ゲームにもいろいろと種類があるんですよ。」

「・・・」

「お父さん、我々では決めらんないじゃない!店員さんのお勧めは?」


人生ゲームを買うだけでも一苦労で、結局は一番普通な人生ゲームを購入。

何年も前にタイムスリップする人生ゲームなんて意味が判らん、ましてやまだ7歳子供が50年前にタイムスリップしたところで、まだ親だって結婚してないだろうに。

とか思いながら。


 ばあちゃんは、年末年始の食事、おせち、孫のためのおやつやジュース等、鼻歌を歌いながら準備をしている。

あいつはいい気なもんだと、ちょっとうらやましく思っている。

というのも、毎日かかってくる孫からの電話のたびに心苦しくなるからだ。

「あ、おじいちゃん?雪降った?」

「まだだ。」

その度に、降りそうで降らない雪を最初は恋しがったが、今では恨めしく思えてきたほどだ。


 息子家族が来る当日の朝。

外は待ちに待った雪。

早く孫に伝えたいが、今頃は高速を走っている頃だからと電話は控えた。

昨日までとはうって変わって、どこもかしこも真っ白の世界。

こうなると、出かけることも一苦労だろうから、やっぱり人生ゲームを買っておいて良かったと、我ながら感心した。


 ばあちゃんの年末年始の準備も終わり、こたつに入ってニュースを観てる。

「東北道事故がすごいみたいね。」

「まさかの事態にはならないだろうけど、到着は遅くなりそうだな。」

「お父さん、玄関で待ってても到着時間が早くなるわけでもないんだから。」

「ほれ、来たぞ!」

「嘘?」

どんぶく姿のまま、雪が中にもかかわらず外に出迎えに出た。

「おかえり。大変だったな。」

まだ車内に居る孫は顔をくしゃくしゃにして喜んでいる。

そんなに俺に会えることを楽しみにいたのか、とちょっと感動しつつ。


 年末年始で人生ゲームの出番は1度だけ。

しかも、昼間の雪遊びでクタクタの孫は、ゲームの途中で隣でよだれを垂らして寝てしまい、結局ゴールはできなかった。


 今年はいつも自分にピタッとくっついて来る孫に更に愛おしさを感じていた。

ゲームのときも「僕はおじいちゃんと一緒。きっと勝つから。」だと。

ゴールはできなくても、人生ゲームを買って良かった。

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