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ドリームガチャ ~人の欲望は十人十色~ [無言]

作者: stb


男「はい3番テーブル ドンペリ頂きましたー! 」




新宿歌舞伎町のとあるホストクラブ、一夜にして何百いや何千万の金が動く夜の世界。


そんなホストクラブ“クラウン”で夢野翔也は働いている。




先ほどのドンペリが翔也のもとに運ばれてきた。




翔也「美咲、ドンペリありがとう。乾杯」


美咲「どういたしまして、私も翔也の笑顔が見れて幸せ」




翔也はクラウンではNo5の実力者である。甘いルックスと軽快なトークが売りで、多くの女性客が翔也目当てに訪れる。女性客の数だけで言えばNo1ホストには劣らないのだが、彼にはある欠点があった。




翔也「いやードンペリは美味しいから酔いが回るね」


美咲「翔也、顔赤いけど大丈夫?」


翔也「美咲に惚れてるから赤くなっただけだよ」




そう彼はあまり酒が強くないのだ。彼目当ての女性客が多く来店する日などは、客の前では平然とした顔でドンペリ・シャンパンなどを飲み干すが、閉店間際になると気持ち悪くなり、ひどい二日酔いで出勤できないこともしばしばあった。




彼の出勤日数が他のホスト達より少ないのはこのためである。


しかし、人気があるだけあって月給は100万を超えており、なかなかこの世界から離れれないのが現状であった。




~閉店~




翔也「うー気持ち悪い。頭も痛いし最悪だ・・・この体質さえなければ、俺はNo1ホストにだって勝てるはずなのに」




彼は今日も飲みすぎてしまったらしい。


自宅に戻り、倒れこむようにベットに入った。寝ようと試みるが頭が回転しており、眠れない。猛烈な吐き気に襲われてトイレに行こうとすると、スマホの画面が光っていることに気がついた。




翔也「ん・・・ドリームガチャ? こんなアプリインストールした覚えないけど。なんだろう開いてみるか」




彼はアプリをタッチした。




ドリガチャ君「はーい こんにちは ドリームガチャ支配人のドリガチャ君です。人の欲望は十人十色。あなたの欲望をガチャにかけてみませんか?」




ドリガチャ君と名のるジョーカーに似たマスコットキャラクターが急に出てきて喋り始めた。




ドリガチャ君「翔也はホスト~♪ ホスト~♪ 欲望にまみれた夜の世界~♪ 人間達の本能がうずく夜の世界~♪」




翔也「なんで俺の名前と職業を知ってるんだ?しかも陽気に歌ってやがる」




ドリガチャ君「翔也ー。お前は酒があまり強くないみたいだな。もっとお前にお酒を注文したい客もいるけど、お前が飲めなきゃつまらないもんな。“酒が強くなりたい”とか思ってるだろう」




翔也「気持ち悪くて幻覚でも見てるのか・・・酒に関してはいつもそう思ってるぜ」




ドリガチャ君「そんなお前に、ガチャを引かしてやる権利を与えてやるよ。もしかしたら願いが叶うかもな」




翔也「ガチャ?どうせ何かのゲームだろう・・・いいだろうやってやるよ」




ドリガチャ君「ほいきた。これからルールを説明する。説明は1回だけだぞ。よーく聞いときな」






・ガチャは1回だけ。何かの能力が身につく。人生を賭けて引くのでリセマラは当然できない




・全世界の人の欲望がガチャで出た能力の内容


(“毎日安全な水を飲める”という日本では当たり前のものから、“海でも呼吸できるようになる”という超人的なものまで多種多様な能力がある)




・ガチャのレア度は★~★★★★★まで


レア度が高い方が出る確率が低いが、能力は強力なものが多い




・能力は死ぬまで続く




翔也「ルールは分かったぜ。引かしてくれ」




ガチャ・・・


複数あるカードが回転し始めた。




スマホ上にはカードを引く手が表れている、どうやらこの手をタップして1枚カードを選ぶらしい。




翔也「いまだ!」




カードが1枚選ばれ、ゆっくりと表向きなった。




翔也「なにがくる?」






【★★★☆☆】能力名:不肝症


・二日酔いを感じなくなる




翔也「レア度は普通だが、俺が欲しかった能力が手に入ったぞ。よっしゃー」




ドリガチャ君「良かったな。能力は使い方次第。ドリガチャライフ楽しんでな。じゃーなー」




ドリームガチャアプリは勝手にアンインストールされてしまった。






~翌日~


美咲「翔也、昨日最後の方体調悪そうだったけど大丈夫?」


翔也「全然大丈夫!ほらこの通り美咲が入れてくれたドンペリも3本目だよ。連日来てくれたから肝臓も美咲に感謝して頑張ってるんだ」


美咲「昨日がたまたま調子が悪かったのね」




不肝症の能力のおかげか、酔いはするものの頭痛・吐き気などは一切感じなくなった。


つまり、お酒で気持ちいい状態だけを堪能できるというわけだ。彼は泥酔しても眠ってしまうタイプではなかったため、呂律が怪しくはなるものの、ほぼ1晩中飲み明かすことができた。




翔也「二日酔いを感じなくなるって最高だぜ。どんなに酔っぱらっても翌日はすっきり目覚めるからな」




二日酔いで休みこともなくなり、出勤日数も増えていった。




~1か月ほどたち~


給料日がやってきた。




オーナー「これから給料を渡す。今月も皆よく頑張ってくれた。そのなかでも翔也。お前の売り上げは素晴らしい。給料大幅アップだな。皆も翔也を見習うように」




翔也はNo3の地位まで来ていた。No1との売り上げも微々たる差であり、追い越すのは時間の問題だった。




翔也「給料袋が立ってる。すげーぜ。これで俺は金持ちの仲間入りだな。本当能力に感謝だな」




No1ホスト「翔也のやろう調子に乗りやがって・・・」




それからというもの、翔也は毎日のように出勤し、どんどん固定客を増やしていった。


毎日の酒量も相当なものであったが、酒の値段の半分がバックとして入ってくるため、飲んで飲んで飲みまくった。






翔也「お酒を飲んでお金がもらえる。こんな楽しい仕事他にはねーや」




来月は彼の誕生日であった。誕生日はホストにとって一大イベント。彼は誕生日を機にNo1ホストになろうと意気込んでいた。






~誕生日~


女性達「翔也おめでと~ 誕生日がお祝いできて私も嬉しいわ」


翔也「ありがとう 何のお酒でお祝いしてもらおうかなー」




100万単位のお酒が次々に注文された。彼はこの店の最高売り上げの新記録を達成できそうなこともあり、シャンパン・ワイン・ウイスキーなどをどんどん飲んでいった。




さすがに閉店間際は呂律が怪しくなったものの、売り上げ新記録達成&No1の座に輝いた。




翔也「ついにNo1だ。今日は人生で最高の日だな」




一度火のついた人気は留まることなく、甘いルックス・軽快なトーク・気持ちのいい飲みっぷりで1年以上もNo1をキープしていた。




翔也「No1の眺めは良いもんだ。・・・ただ最近顔色が良くないのが気になるな」




翔也の顔色は土気色っぽくなってはいたが、特に症状等はない&夜になれば酔って楽しくなってしまうこともあり、生活は変わらなかった。






~さらに数か月後~


翔也がホストを始めてから7年の歳月が経とうとしていた。


元々売れる素質はあったため、今まで稼いだ金額は1億の大台を突破しそうになっていた。




翔也「俺もそろそろオーナーのように経営面に携わってみたいもんだな・・」


とはいえ、No1ホストである彼を目当てに次々と客はやってくる。忙しくてそこまで動ける余裕はなかった。


そんなある日事件が起きた。




翔也がシャンパンを一気飲みしている最中であった。


翔也「・・・ガハッ」


客「きゃー翔也大丈夫?どうしたの?」


翔也「なんでもないよ。おい、タオル持ってきてくれ」




彼はいきなり吐血したのだった。


客「翔也、顔色も前より悪くなってるし、一度病院いったら?」


翔也「心配かけてごめんな。今度来た時はたくさんサービスするからな。ありがとう」




翔也はその日早めに上がらせてもらい。翌日病院に向かった。






~病院~


翔也「昨日お酒を飲んだら吐血してしまって・・・体も何となくだるいのですが」


医者「検査してみましょう」




彼はホストという会社に勤めているが故に、健康診断、人間ドックの制度はなく、今回初めての検査であった。




医者「検査結果ですが、今日から入院してください」


翔也「・・・は? そんな大げさな」


医者「大げさではありません。むしろよく今ま平気でしたね。肝臓含めあなたの内部はボロボロです。当然、今日から禁酒。治療に専念しないと命にかかわります」


翔也「そんな・・・」




そう、能力“不肝症”二日酔いを感じなくなるだけであり、毎日の相当量の飲酒は彼の体に深刻なダメージを与えいていた。もうお酒が飲めなくなるほどに・・・・




~入院数日して~


翔也「酒だー酒を飲ませろー」


医者「発作だ。鎮静剤を注入して」




毎日の飲酒は彼をアルコール依存症にもさせていた。


これから先の治療費、飲酒できない人生・・・彼は今後どう生きていくだろうか。








ドリガチャ君「沈黙の臓器である肝臓が更に不感症になってはね・・・普通の会社員であれば肝臓の数値が異常であることは健康診断とかで気づくはずなんだけど。ハードラックだったね。飲酒は適量が一番ってことだな」




人間の欲望がある限りドリガチャは存在する。


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