出会い。
人の本当の値打ちは
持っている宝石の数
でもなければ
黄金の数でもない。
地位でもなければ
名誉でもない。
ただ信念に尽きる。
―カツン、カツンと誰もいなくなった廊下を歩いている
窓では寒空の下植物が風に揺られていた。
とても暗い景色に気持ちも下がっていく
『職員室』そう名前が書かれた部屋の前に居直る
「失礼します。」
声をかけ建付けの少し悪い扉を引く
すると一人の教師が自分の存在に気付き
「おお、志波。こっちだ。」と女性が声をかけてきた
他の教師はどうやら皆帰ってしまったようだ
担任と学年主任しか椅子に座っていない
少し散らかっている灰色の机の前で止まる。
「まだ、決まらないのか?」
少し聞きづらそうに聞いてくる
「はい...。」
とりあえず持って来ていた進路用紙がくしゃりと音を鳴らす
担任は眉間にしわを寄せ小さく溜息をついた。
「頑張るのは大いに結構だ。だけどいつまでも待ってくれる訳じゃない、折角合格した進路を捨ててまで追いたいのか?」
返すべき言葉がわからなかった俺は、ただ黙り込むしかなかった。
しばしの静寂が流れ、痺れを切らした担任が口を開く。
「わかった。今日はもう遅い、帰ってじっくりと考えてから明日の放課後に職員室まで来るように。いいな?」
こくりと頷き、職員室を後にする。
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教室に置いていたカバンに紙を乱雑に入れ、帰路につく。
マフラーをしていても冷たい風が顔に刺さる。
(進路かぁ...)
担任からの言葉がフラッシュバックする
自分にだってやりたいことが無い訳ではない、しかし、置かれている家庭環境や将来がわからない不安。
それに加えて自分なんて...といった低い自尊心が決断を遅らせているのだ。
年半ばもいかない自分には重すぎる決断なのだ。
(やっぱり、今合格している所に行くのが最善なのかなぁ)
自分という存在が揺らぐ選択に少し身震いしたが、それが自分の為と反芻した。
帰り道にいつも眺める公園がある、公園はさほど大きくも小さくもないが
一本の樫の木が公園には不釣り合いなほど仰々しく根を張っている。
風景が好きなわけではないがぼーっとするのは好きなのだ。
そんないつも見る公園に一人の少女が見えた。
(ん?)
自分は少女趣味があるわけではないが少女が気になってしまう。
なぜならその少女はその公園で浮いていたからだ。
大きな蝙蝠傘を彷彿させるスカート、ゴスロリとでも呼ぶのだろうか、普通の服よりかは多めに付けられたフリル。
そして、随所に散りばめられた人間の目の形の柄。
風が吹き、少女の髪が月夜に煌めく――綺麗な白い髪だ。
俺がその姿にあっけに取られていると
少女がこちらに歩み寄り、にんまりと目を細め笑った
「我は王。又の名をソロモン。」
「お主と契約を交わしに来た」
0nis.