魅影の8年【1】
あいつが来なくなってからどのくらい経つだろう?
毎日来るって言ってたのに。
そういえば......あいつ......
少し不思議な妖力だったな。もしかしてエリキか?
しかし、あいつはまだ幼い。今言うのは......というか言っても意味分からんだろうしな。
今すぐ言うことでもないだろう。
―数ヵ月後―
まだ来ない。
あいつは何をやっているのだ。俺がこんなに待っていると言うのに。いや、決して寂しいわけではないが。
しかし、本当に暇だ。
エリキのことについてでも調べてみるか。
この森で、いろんなことに詳しいのは――
「おい、キモリ」
「あー、魅影か。よう! 久しぶり!」
「ちょっと訊きたいことがあるのだが」
キモリは、木霊という木の精霊で、俺の幼馴染(?)だ。
一言一言が軽く聞こえるが、情報は正確で、とても物知りだ。
「おう! お前が俺に頼ってくるとは珍しいじゃねぇか」
「別に頼りにしたわけでは......」
「ん? よく聞こえねぇな」
「いや、ちょっと訊きたいことがあってな。お前なら物知りだし頼りになるからな」
「まぁ、そこまで言われちゃぁしょうがねぇ。で、なんだっけ?」
「ちょっとエリキについて訊きたいんだが、本当のところエリキっているのか?」
昔話みたいなもので聞いたことはあるが、エリキ自身に会ったことは無い。
(白夜の可能性はあるが)
「そりゃあいるさ。俺、会ったことあるぞ」
......マジか。
「......いつ?」
「結構、昔」
「......誰?」
「えーと、名前はあんま覚えてないけどよ、3人兄弟だったぞ」
「......」
それって、あの昔話の3人兄弟の闇夜、暁、陽昇じゃないか?
そう言えば、こいつは木霊だから、この世から木がなくならなければ消えることは無い。つまり、この世に木と言うものができた時からずっと居続けているということになる。
そうか。
だから、物知りなのか。そうかそうか。
......すごい爺さんだな。昔話の時代を生きたのか。
俺は、もう、これ以上驚くことは、無いな。
「おい、どうしたんだ? 考えことか?」
「い、いやなんでもない。それで?」
よし、今のは無かった事にしよう。
「いやな?会ったときはなんか喧嘩しててよ、俺が仲裁してやったんだよ」
「......ほう」
「それで、珍しい妖力だったから訊いたんだよ。妖力について。そしたら、なんか生まれた時間帯になると妖力が上がるって。そんなの聞いたことが無かったから、新しい、特別な能力だと思ったんだよ」
「......それで?」
「特別だと発見したのは俺だったから、俺が名づけた。『エリキ』って」
「......は?」