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泪滴の紋  作者: 黒織黒
深獄
7/7

七ノ点 巫女-ミコ-

 都会の一角にある、民族博物館。設立間もなく、早急に成績を収めなければ、館長が政府に博物館設立を懇願し設立してもらった意味が薄れていくため職員達は多忙を強いられている。博物館の第四展示室、民族課に勤める私も同じく多忙を極めていた。

 博物館へ就職したのは、今まで趣味程度にやっていた民族学誌を執筆し出版していたせいかもしれない。そういった奇抜な趣味を行っていたせいか若干気味が悪いと思われる事も多々あった。その趣味が功を奏したのか、現館長代理秘書に声をかけられ館長と面談する機会があり。館長より博物館への就職を勧められた。

 現在も民族学について、博物館からの出版・展示するために研究を行っている。様々な地方の風習を調査するために各地方を回っていたりする。少々の旅行気分を味わえて、博物館に仕事のため長時間滞在するよりかは気が楽でいた。

 


 ある筋の詳しい方から情報を聞く限り、奇奇怪怪(ききかいかい)な風習やしきたり、祭りがあったそうだ。今まで各地方の風習を調べてきたが、奇妙な村であることに違いない。名前は水月村。

 汽車に揺られて数時間経ち、これからバスに乗り換えるところだ。今日は小さな民宿に泊まる予定でいる。言い方が悪いかもしれないが、民宿の質については期待していなかった。

 水月村自体には期待していた。今までにないほどの良い意味で特徴が有り過ぎる村。実際はそれほどの村ではないかもしれない。いったい、どのような風習があるのか。




 水月村の隣には最上町という町があり、数年前に村と村が統合して最上町になったらしい。元々の村の名前は福模村。元福模村というのは、神職者が多い村だと聞いた。その中心者というのは金澤家というらしい。僧も多く、不思議とそういった者が集まるらしい。昔は神社もあったらしいが、こんな辺鄙なところであるため、時代からか神職者も増えず出稼ぎへ出る者もおり、経営困難気味になっているらしい。


 


 

御免下さい。





 水月村の民宿の扉を開け、第一声をあげた。最上町から森へ入り、思いのほか早く水月村に入ることができた。道中嫌な視線を感じたが、気にしないことにした。

 少々待つと、奥の方からか声が聞こえ着物を着た女性が駆け足でやってきた。年齢でいうと50歳半ばといったところか。着物は淡い水色であり、相当着続けているとみた。

 予約していた、椎名大地(しいなだいち)と伝えると。その女将は笑顔で歓迎してくれた。





お待ちしておりました。いつでも御飯は用意できますが、如何(いかが)なさいますか?





 少し長旅で疲れていたが料理の方が冷めてしまったら困るので、御飯と伝えた。それから部屋へ案内され、二階への階段を上がってからすぐの部屋へと案内された。

 部屋は和室の畳が敷かれており、八畳ほどであった。部屋はしっかりと掃除されており、埃一つ見当たらない。障子二枚あり、開けると民宿裏に広がっている林が見ることができるだけだった。



 料理が運ばれて、女将に水月村について知りたいと相談したところ、そういった客がたまに来るということで村に(まつ)わることが記されているという一冊の本を持ってきてくれた。



 早めの夕食を食べてから、女将が持ってきた本に目を通すことにした。本はいつ書かれた物か分からないが、相当古びていて少々黴臭さがあった。表紙には其の二となっている。何故だか知らないが、二巻を持ってきたようだ。




水月村ノ伝承 其ノニ


巴祭迄に、巫女を設ける。其の巫女は、水の巫女と云ふ。


水の巫女は九月十七日生まれの女子を水の巫女とする。そして八月末期から十月中旬生まれの女子を雫の巫女として設ける。


もし、期日生まれの者が居なゐ場合は雫の巫女が水の巫女代理を受けることにする。雫の巫女が複数人居た場合、晩冬(十二月)に近い者を雫の巫女とする。正式な雫の巫女として選ぶ波の儀にて、雫の巫女は心臓を捧げる意を込めて左手の薬指を潰す。執り行うのは水の巫女となる。


その後、巴祭が近づく初秋(七月)の期に行ふ水面の儀で泥の巫女を選ぶ。泥の巫女は、雫の巫女候補の残りから選ばれる。


水面の儀は、手足を縛り、顔に粗袋を被されて村にある大きな池に落とされる。落とされた女子は、雫の巫女に救われるまで池から上がってはならなゐ。上がろうとした女子は池の周りに居る僧により竹棒により池の中へと突き返される。一番最初に救われた女子が泥の巫女となる。この儀式では死者がでてもおかしくはなゐ。仕方のなゐ犠牲となってゐる。


決められた巫女は、其れから人目につゐては断じてならなゐ。




 奇妙な風習どころか平気で人を殺してもいいと言う考えに驚かずには居られなかった。昔の書物であるからには、今は平気なんだろうとは思うが嫌な予感がして堪らない。

 二巻であるが故に脈絡が無さ過ぎていて、巫女がどういった役割かは次の貢にて書かれているみたいだ。巫女の決め方については粗方、理解した。

 




そして次の貢へ捲ろうとしたとき、部屋の襖が開いた。

 

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