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異世界列島  作者: 黒酢
第2.0章:友好の章―Friendship
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27.動き出す歯車

【前回までのあらすじ】

ダラクの暗躍により集められた十数人の男たち。彼らは皆、自称日本軍によって家族、親戚、友人を亡くした遺族である。彼らは日本への復讐心を胸に、藤原首相の来訪を待ち構えていた。

 ♢

【中央大陸/ウォーティア王国/港町ポーティア/港湾商業地区/3月18日_午前】


 港湾商業地区にある波止場。普段は木造の漁船や、北へ向かう小さな帆船が行きかう、ほのぼのとしたこの場所も、今日ばかりは厳戒態勢が敷かれていた。


 等間隔にズラリと配置された完全武装の近衛騎士が、立ち入り禁止区画に一般市民が入り込むのを防いでいる。


 市民たちはガヤガヤと周囲の人と談笑しながら、日本国の首相、藤原の到着を待っていた。彼らは皆、異界の大国の宰相を一目見ようと集まっていたのだ。


「日本の王様が来るらしいな」

「いえ。確か宰相では?」

「こんな時期に大丈夫かねぇ?」

「んだよ、おばちゃん。あの噂信じてんのか?」

「馬鹿だね。違うよ」

「店に使節様が来られたことがあります。あの噂は何かの間違いでしょう」


 港町ポーティアでは例の噂について、日本の無実を信じている市民が多い。それ故の歓迎ムード。ピリピリとした王国政府関係者に対し、町の治安は比較的保たれている。


 しばらくして、水平線の先に動く船影が現れた。


 それは、首相である藤原と官僚、政財界人、報道関係者などおよそ200にも達する大随行団を乗せた海上自衛隊最大()の護衛艦〝いせ〟と輸送艦〝おおすみ〟。そしてそれらを護衛する海上自衛隊の護衛艦〝まさなみ〟の巨影であった。


 〝いせ〟の甲板から飛び立った輸送ヘリコプターCH-47JA(チヌーク)が報道関係者を波止場に設置された仮設ヘリポートに運ぶ。


 護衛艦と回転翼機を初めて見るウォーティア王国の重鎮たち。まず護衛艦の巨大さに驚き、次いでヘリポートに降り立った回転翼機の威容に度肝を抜かれた。


「聞くのと見るのではやはり違うものだな」

「誠に。間近でみると如何に大きいかが分りますな」


 国王の発した呟きに、宰相プレジールも頷き返す。百聞は一見に如かず……この国にも似たような諺がある。諺はよく言ったもので、実際に対面するとグランの報告が、何の誇張でもないと実感できる。


 その後、官僚や政財界人が続き、最後に藤原を乗せた特別輸送ヘリコプター〝EC-225LP〟が仮設ヘリポートに降り立った。


 特別輸送ヘリコプター〝EC-225LP〟は、フランスのユーロコプター社が開発した回転翼機で、日本では海上保安庁の他、皇族や首相、国賓などの輸送を目的に陸上自衛隊が運用している。


 白と青のカラーリングという無骨な外観とは裏腹に、内部は広々とした作りになっており、機内にはレッドカーペットも敷かれているという。


 回転翼の作り出す風が細かな砂を巻き上げて、藤原を乗せた〝EC-225LP〟(そのヘリ)は異世界の地に降り立った。


 藤原がヘリから足を地面に降ろすと同時に、無数のフラッシュが焚かれる。


 民間人の渡航制限を定める外地法。その特例措置を受け、この異世界の地を踏んだ三〇人弱の報道関係者のカメラが歴史的な瞬間を捉えようと既に構えていた。


 列島転移災害時の人工衛星喪失の影響でテレビ中継こそできないものの、日本放送協会(NHK)のクルーがその歴史的な瞬間をビデオに収めようと唯一のテレビカメラを向ける。


「捧げ―――剣」


 指揮官の号令がかかると、周囲に配置された近衛騎士は、一糸乱れぬ動きで腰に下げた長剣を鞘から抜き放つ。それを虚空で一振りし、胸の前に掲げた。それに合わせ、すかさず軍楽隊による〝歓迎曲〟が演奏される。


 特別使節団を歓迎した際と儀礼的には似通っているが、儀礼剣の鞘の色や歓迎曲の長さでもって、その辺りの調整はしているようだ。


 ちなみに、藤原の扱いは〝国賓〟である。日本における賓客接受基準によれば、首相に対する最大級の接遇は〝公賓〟で、国賓は国家元首に限られる。


 これはアメリカなどでも同様で、日本の首相がアメリカを訪問した際に国賓となることはない。日本の対外的な元首は、天皇陛下であるからだ。


 にも拘らず、ウォーティア王国は国賓として藤原を迎えた。これはこの世界との外交儀礼の差によるものだが、地球においても国によっては首相を国賓とする場合もある。


 そんな中、藤原が最も驚いたのは、国王が自ら出迎えてくれたことだった。余談だが、今回も例の如く、相馬と瀬戸が通訳として駆り出されている。


「お初にお目にかかる。日本国の宰相殿」

「これは、陛下。御自ら足をお運びいただけるとは」

「何ということはない。それだけ朕はニホン国との友好を切望しておるのだ」

「それは嬉しいことです」


 国王にエスコートされ、藤原は既に待機している黒塗りの箱竜車の前まで移動する。その間、藤原は時折笑みを零し、リラックスした様子で国王と言葉を交わしていた。


 ちなみに今回、藤原の移動のために用意された竜車は、王室保有の竜車の中でも最上級の車両である。


 当初は、内閣総理大臣専用車での移動も考慮されていたのだが、「竜車とやらに乗ってみたい」と言う藤原の一存で急遽、竜車を使用することになった。


 通常の竜車のおよそ二倍の横幅を有し、機密保持目的での高度な防音機構が備えられている。また、完全密閉故に籠りがちな空気を入れ替えるための排気口兼通気口を搭載。


 客車の椅子には王家御用達の家具職人お手製のソファを採用し、内装にも拘った、まさに王国の威信を掛けた車両でもあった。


 恭し気に開け放たれる竜車の扉。最高級の素材を用い、最高峰の職人の手によって仕上げられた、極上の空間がそこには広がっている。


「これは素晴らしい」

「気に入っていただけたようだな」

「それは勿論」


 藤原が乗るこの竜車には防弾性能が無いため、藤原と共に折り畳み式防弾楯を装備した二人の警護課員(SP)が左右を挟む形で同乗する。


 警護課員(SP)とは、警視庁警備部警護課に属する要人警護任務専従の警察官のことで、各道府県警の身辺警戒員とは区別される。その警護課員(SP)中でも、今回この竜車に乗り込むのは内閣総理大臣を担当する警護第1係の課員だ。


 彼らは時に、己の身体を犠牲にしなければならない過酷さ故、一定の条件を満たした者の中から選抜して任命される。


 警護課員(SP)の武装としては拳銃、特殊警棒、折り畳み式防弾盾などが一般的だ。今回任務に就く警護課員(SP)は拳銃として、装弾数が多く火力性能に優れたH&K社製の〝H&K P2000〟を装備していた。


 そして竜車の前後を挟み込むように警備に当たるのは警護車仕様のメルセデス・ベンツ〝W221〟と、トヨタ〝ランドクルーザープラド〟である。


 真っ先に竜車に乗り込んだ藤原。


「ほう……」


 藤原はそのソファの座り心地に思わず感嘆の溜息を漏らす。同乗する者を含めた数人の警護課員(SP)は藤原の乗り込んだ竜車の周囲を取り囲んでいた。彼らの前に死角など存在しない。完璧な警護と言っていい。


「宰相殿。また後程、ポーティア城で落ち合おう」


 笑みを浮かべて言う国王に、藤原も微笑みを返す。


「ええ。有意義な会談にしましょう」


 藤原の言葉に笑みを浮かべたまま頷いた国王。国王が藤原の乗る竜車から離れたのを素早く確認すると、警護課員(SP)もまた、隊形を変える。同乗する二人の警護課員(SP)は外への警戒を怠ること無く、竜車に乗り込む。


 それが合図となったようだ。ゆっくりと竜車の車輪が動き始めた。







 ♢

【同国/港町ポーティア/平民街地区/路地/同日】


 港を出発した竜車は軽快なステップで街路をひた走る。沿道には完全武装の近衛騎士が列を成し、その奥で詰めかけた住民が竜車と自動車の車列を眺めていた。


「まるで中世ヨーロッパ。……そうは思わないか?」


 無言の車内に、藤原の声だけが響く。この町の景色を眺めた者は皆、口を揃えてそう言っていた。しかし黒服の男たちは、興奮を示すこともなくその仏頂面を変えない。


「総理。あまり窓に寄られるのは……」

「そうです。この車には防弾硝子もありませんので」


 彼らは仕事に文字通り命を懸けている。彼らの仕事は藤原の身の安全を守ることであり、この瞬間も絶えず窓の外に視線を向けていた。自身のためを思っての忠告に、藤原も反論することはできない。


 藤原が仕方なく身体をソファに戻し、何気なく天井に視線を移すと、通気口からモクモクとした白い煙が漂っているのに気が付いた。


「おや?なんだか煙が……」

「「?!」」


 藤原の言葉に、外を警戒していた二人の警護課員(SP)も視線を天井に向ける。見ると、白い煙が天井から車内に漏れ始めていた。


 警護課員(SP)は警護対象である藤原を守るように、素早く防弾楯を展開し、無線で前後の警護車に状況を報告する。


『車内に煙が発生した。警護体制を整えろ』

『何?!了解した。脱出を援護する』


 指示が伝達されたとき、既に竜車内は真っ白な煙で覆われていた。藤原は取り出したハンカチで咄嗟に口を押えたが、煙に触れた目がジンジンと痛み目は開けられない。


「げっふげほ……」

「総理。扉を開けます」


 突然の白煙の発生。人為的なものであれば、扉を開けるのは危険だが、しかし、それもやむを得ない。前後の警護車両から飛び出したであろう仲間の警護課員(SP)の存在を信じ、男は扉を開け放った。


 それと同時刻。(せき)を切ったかのように、群衆の一部が車列の間に雪崩れ込んだ。


 警護に立っている近衛騎士もそれを止めることができない。いや……実際には、止めようとしていなかったと言った方が適している。


 ここの警備担当は南部辺境貴族の関係者ばかり。彼らは近衛騎士ロゲール・オリヴァーの息の掛かった存在だ。


 うぉぉぉぉお―――。


 雄たけびと共に、復讐を誓った十数人の男たちが竜車に群がる。


「て、敵襲!」


 前後の警護車から飛び出したばかりの警護課員(SP)たちは、突如乱入してきた暴徒への対応を余儀なくされた。


 折り畳み式防弾楯を展開し、腰にぶら下げた特殊警棒を構え、立ち向かって来る暴徒にそれを叩き込む。


「ぐぁあっ」


 一人、また一人と、暴徒は無力化されていく。


 一方、扉を開け放った竜車の車内。


 充満した白煙は、扉を開けると同時に外へと流れ出したのだが、通気口からは依然として煙が車内に入り込み、一向に収束する兆しが見えない。


 そこに、外から聞こえた突然の雄たけび。乗り込んでいた二人の警護課員(SP)は顔を強張らせ、腰から拳銃を引き抜いた。


「今の声は?!」


 煙で目を開けることが敵わない藤原は、取り乱したように状況を尋ねる。大体の状況を察した二人の警護課員(SP)は、努めて冷静に藤原に言葉をかけた。


「落ち着いてください。どうやらこの車は襲撃を受けているようです」

「何?ではこのまま車内に待機しよう。今、外に出るのは危険だ」

「いえ、総理。車内に留まるのは寧ろ危険です。ここは脱出を」


 その道のプロである警護課員(SP)の言葉に、藤原がそれ以上反論することは無かった。


 勿論、車外に出れば、当然暴徒の格好の標的となりかねない。しかし、煙が入り込み続ける車内に残るのに比べればマシな選択だ。二人の警護課員(SP)の頭に、この場に留まるという選択肢は無かった。


 一人の警護課員(SP)が先行して車外に飛び降りる。男は手に握られた拳銃の銃口を忙しなく動かし、周囲に警戒の視線を向けた。


「クリア」


 男の言葉に、車内に残っていた警護課員(SP)は短く言葉を返し、目を抑えたまま藤原に先を促す。


「総理。どうぞ」

「分かった」


 意を決し、開け放たれたままの扉に手を掛ける藤原。


 しかし、その瞬間。天井裏の小さな隙間に潜んでいたラーシャが、転がり落ちるように車内に飛び降りた。天井裏と言ってもそこは狭く、本来、大人が入れる空間では無い。小柄なラーシャ故の芸当だった。


 ラーシャの衣装は黒に覆われた忍者スタイル。彼女の手には、研ぎ澄まされた刃渡り約三〇㎝ほどの鋭利な短刀が握られていた。


 ラーシャが警護課員(SP)の背後を取ったのは偶然か、必然か。


 ラーシャは持ち前の運動神経で、己の小柄な体躯を狭い車内で回転させ、短刀の(やいば)警護課員(SP)の首に滑らせる。それはまるで舞っているかのような、繊細かつ優雅なフォームだった。


「う゛ぁっ?!」


 背後から聞こえた鈍い叫び声が、竜車から降りようとしていた藤原の足を止めた。藤原は手を扉の枠に掛けたまま、背後を振り返る。


「どうし……た?」


 言葉を言い切るより先に、藤原の脇腹に激痛が走った。藤原は脇腹の状態を自身の目で確認しようと、痛む目を無理やりにこじ開ける。視界に飛び込んできたのは、腰に抱き着く体勢で固まった可憐な少女の短い黒髪。


「お、女の子……?」


 少女……もとい、ラーシャは混乱する藤原を余所に、手慣れた手付きで短刀を握ったままの手首を捻る。それによって動かされた体内の刃が、藤原の内臓をぐにゃりと掻き回す。


「いっ、ぐぁぁあああ゛」


 痛い。と言う、言葉にならない絶叫が反響した。ラーシャは密着させていた身体を素早く離し、腰にぶら下げたもう一つの短刀を抜き放つ。


 これは全て一瞬のこと。先行して車外に降りていたもう一人の警護課員(SP)が、異変に気付いたとき、既に全てが終わっていた。


 男は慌てて銃口を竜車に向けるが、既にラーシャの抜き放った新たな短刀は、男の身体を捉えている。


 ラーシャがいる方向へ向けられる銃口。その引き金を、しかし、警護課員(SP)の男は引くことができない。警護対象たる藤原に向けて撃つことになるからだ。対するラーシャはそんなことを考慮する必要も無い。その差が二人に勝敗を付ける。


 死体となった藤原を脇に押しのけ、ラーシャは馬車から警護課員(SP)に向かって疾駆した。男が反応できたとき。既に、ラーシャの手にした短刀は、彼の首を切り裂いた後だった。


「ぐぁ?!」


 警護課員(SP)男の悲鳴を耳に、ラーシャはつまらなそうに、血に濡れた短刀を殺したばかりの男の背広スーツで拭った。


「あっけなかったですね」


 数舜の出来事。藤原たちの断末魔は、竜車の高い防音性と漏れ出る白煙。そして外部の混乱と喧騒にカモフラージュされた。まだ、誰もこの暗殺劇に気づくことができていない。


 そこでラーシャはもう一つの短刀を藤原に突き刺したままであることに気が付いた。回収しておかなければ。そう思い、ラーシャは再び竜車の車内に戻った。


 そこには漏れ続ける白煙の咽るような匂いと、血生臭い匂いが立ち込めている。そして、ラーシャが藤原の身体に突き刺さった短刀に手を伸ばした時、死んだはずの藤原に手首を掴まれた。


「?!」


 今日初めて見せる動揺。まさかあの致命傷を負ってなお息絶えていなかったとは……ラーシャは驚きを顔に浮かべ、藤原を見る。


「……な、ぜ。このような」


 藤原は最後の力を振り絞り、ラーシャに疑問をぶつけた。しかし、当然、ラーシャは藤原の話す日本語が分からなかった。


「すみませんが、私にはあなたの国の言葉は分かりません」


 藤原は今日、この日がこの世界での日本の新たな門出となると信じていた。それなのに、こんなところで自分が死に絶えようとは。藤原は無力感を滲ませる。


「ただ......あなたに恨みはありません。上の指示なのです。ご理解を」


 ラーシャはそう言うと、藤原の手を払い除け、短刀を引きずり出した。藤原はそれに抵抗することなく、その手はだらりと床に横たわる。藤原の亡骸に、ラーシャは簡単に祈りを捧げ、そそくさとその場を後にした。


 ラーシャが全てを終わらせたときになっても、警護課員(SP)はまだ事態を把握できていなかった。


 街路には白煙が撒かれ、視界は悪い。加えて、危険を感じた市民は蜘蛛の子を散らすように、その場から逃げようと身を翻した。その怒号と喧騒が聴覚を遮る。


「気を抜くなぁ!!ここは敵陣の只中だっ!竜車の周囲に人を近づけることは許さん!騎士も含めてだっ」


 ベテラン警護課員(SP)の怒気を孕んだ叫び声が響く。


 襲撃者が十数人だけだとは誰も思っていない。その瞬間、周囲に群がる多数の市民や騎士もまた、襲撃者かもしれないと彼らの心に疑心が生まれる。「対日感情が急速に悪化している。市民の動きに気を抜くな」とは警備部長の忠告だった。


 乱戦状態の警護課員(SP)の視線を掻い潜り、白煙が立ち込める街路の喧騒を背景に、ラーシャは悠々とその場を脱出し、騒然とする群衆の中に紛れ込んだ。


 ラーシャがこの場を離れてから少しして、囮となった男たちは全員、警護課員(SP)の前に無力化された。







 ♢

【日本国/同日_夕刻】


 異世界に来て初めてとなる首脳会談と国交樹立。その行方に全国の国民の注目が集まっていた。


 人工衛星の喪失により現地からの報道には時間差(ラグ)があるものの、首脳会談当日ということもあり本国では夕方の情報番組を中心にウォーティア王国関連の特番が放送されている。


『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えいたします』


 その時間ほぼ全てのチャンネルが、画面をスタジオから報道部に切り替えた。


『今日午前、ウォーティア王国を訪問していた藤原総理大臣を乗せた車が、会談場所となるポーティア市の路上を走行中、乱入した暴徒の手によって刺され死亡しました』


 手元の原稿に視線を落とすことなく、淡々とした声音で事実を伝えるアナウンサーの声が、数度繰り返し放送された。


 現職の総理大臣の暗殺は、〝5.15事件〟で暗殺された犬養(いぬかい) (つよし)首相以来の出来事である。


 当然、この藤原首相暗殺事件。通称、〝ポーティアの悲劇〟の報せは瞬く間に全国民の知るところとなった。


 藤原が思い描いた日本の新しい門出は、最悪の始まりを迎えたのである。この世界を包む激動の時代の荒波は、戦後に牙を抜かれた日本を、その荒波の中に呑み込んでいく……。

【第2.0章:友好の章ー Friendship 完】


最後までお読みくださりありがとうございます。よろしければブクマ、感想をお願いします。


【第3.0章:激動の章(予定)】

現在、私用により執筆が出来ない日が続いており、不定期投稿になっています。ご迷惑をおかけしますがご理解いただきますようお願い申し上げます。

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