食べれるシャボン玉 その2
その1からの続きです。
「なにか食べてみたいものはあるかな?」
「そうですねぇ、目移りしてしまってなかなか決めれないです」
そっか、とおっさんは呟いた後、のんびりコーヒーを飲んでいた。待たせるのも悪いので、早く決めれなくてはと思っていたその時だ。ふと気になるページを見つけた。
「……かき氷だ」
「あぁ本当だ、もう特集してるんだね」
「ちょっとはやくないですかね?」
「確かに」
ふふっと二人で笑ってしまった。まだ冬の寒さが残っているというのに無性に食べたくなってしまった。どうしてだろうか?
「これで決まりかな?」
「そうですね、ちょっと冷えそうですけど食べたいなって思ってしまって」
「直感は大事だよ。きっとなぜか食べたいって思えるほど魅力的だったんだ」
「そうですかね」
「そういうもんさ、食べたらわかるかも」
そういっておっさんは、隣に置いてあった鞄をごそごそとあさり始め、またあの小瓶を取り出した。
「じゃあちょっとその雑誌を返してくれるかな?」
「えぇ、どうぞ」
かき氷のページを開いた状態で、おっさんに雑誌を返した。おっさんはそれを膝の上に置き、左手で小瓶を持ち、右手を雑誌の上にかざした。
「少しの間、お借りします」
次の瞬間、おっさんの右手が光り始め、それと同時に雑誌から文字が浮かび上がり、おっさんの手に集まっていった。隣で見ていた私は唖然としていた。ちらっと雑誌に目をやると、やはりというか、かき氷のページが白紙になっていた。 おっさんは、右手に集まった文字を優しく掴み、左手の小瓶へと丁寧に入れていった。
「こうやってね、レシピをシャボン液に混ぜたらあっという間に出来上がるのさ」
はい完成、そういうと右手からは光が消え、おっさんはドヤ顔を私に向けてきた。言葉を失っていた私は、両手でパチパチとするのが精一杯だった。摩訶不思議現象を前回見たというのに、やっぱりドキドキしてしまう。魔法ってすごいな、綺麗だなって。
その3に続きます。