おっさんと少女とシャボン玉
少女は帰宅途中、それはそれは綺麗なシャボン玉に遭遇する。
それが、少女の日常が少し変わる前触れだったと今はまだ気づかない。
それは、帰り道での出来事だった。
私の視界に、それはそれは綺麗なシャボン玉がたくさん現れた。赤、青、黄、緑、他にも色とりどりのシャボン玉があたり一面に広がっていた。
私は思わず見とれていた。夜空に輝く星をただじっと眺めている時のように、私の心を一瞬のうちに虜にしてしまった。
「綺麗……」
自然と声が出た。まさか帰り道にこんな素敵なことが起きるなんて。
私はこのシャボン玉がどこから飛んできたのか気になった。あたりを見渡すと、そこには私が子供の頃によく遊んでいた公園があった。まあ今も子供といえば子供なんだけど。
「誰だろ……こんなところで」
私は気になり、その公園へと足を伸ばした。興味津々、気になることは自分の目で確かめたい性分なのだ。
公園に入りあたりを見渡す。そして見つけた。遊具のパンダに跨り孤独にシャボン玉を吹き続けるおっさんの姿を。
(おっさんだ……)
あまりにも衝撃的な光景だった。公園遊具のパンダに跨るおっさんはどう見ても不審者にしか見えなかった。
ただ、それに似合わないほど綺麗なシャボン玉を飛ばし続けていた。絵面は酷いがおっさんのシャボン玉が気になる私は、遠目で観察していた。
シャボン玉を眺めていたらふと私も吹いてみたいなと思った。よく子供の頃遊んだよなと思い返していたその時だ、ふと目の前にシャボン玉が飛んできたのがわかった。
「気になるかい?」
まさかのおっさんから声をかけられてしまった。というか隠れてジロジロ見ていたのがバレた。もしかして最初から気づいていた?
「……うん」
ぎこちない返事をしてしまった。私はらしくなく顔を赤くしてしまった。だって恥ずかしいでしょ。
「そんなところで見てないでこっちに来て見たら良いよ」
おっさんは笑顔でそう言った。
隠れているのもバカらしくなったので、私はおっさんの近くまでてくてくと歩いた。
「綺麗なシャボン玉ですね」
「でしょ。おじさんの特技なんだ」
さすがに自分のことはおっさんとは言わないか。一瞬どうでもいいことを思った。シャボン玉が特技なおっさん、変わった人だな。
「変わってますね」
思わず言っちゃった。それでもおっさんは、
「ははは、よく言われる。でも楽しいから気にしてないけどね!」
なんて笑顔で返事をしてくれた。口調は穏やかで優しい印象を受ける。見かけによらずすごく話しやすいおっさんだった。
それにしても、このおっさんはどうして公園でシャボン玉を吹いているのか。
それにこの綺麗なシャボン玉。シャボン玉って無色じゃなかったっけ? 色がついて見えるのは光が当たって、だっけなんかそんな感じだったような。
シャボン玉について詳しく知ってるわけじゃない、けどそれにしてもここまで鮮やかに綺麗な色をして飛んでいるのが気になった。
「よくここでシャボン玉を吹いているんですか? 私、ここ帰り道なんでよく通るんですけど初めて見かけたので」
「この公園はよく来るよ。けど私はいろいろな場所で吹いている。ここに限った話ではない。今日は天気もよくて風があまり吹いてなかったからね。ここが絶好だったんだよ。だから君はついている」
「シャボン玉に出くわしたのも、おじさんに会えたのもラッキーだったと」
「そういうこと、私は神出鬼没だからね。それにシャボン玉に気づいても私に近づく人は滅多にいないから」
「そうなんですか?」
「そうなんだよな、悲しいことに。シャボン玉って飛ばしていたらいろいろな人が集まってくるはずなんだけどね」
それは、あんたがパンダに跨って吹いてるから不審に思って近づかないだけなのでは? と思ったがさすがに本人に言えるはずもなかった。初対面でしかも年上の人にそんなこと言えるか! というかそんなおっさんに近づいた私大丈夫なのかな……?
「いやぁそれにしてもシャボン玉を褒めてもらった上に、こんな可愛い女の子とお話できておじさん嬉しいよ」
「私もこんな綺麗なシャボン玉が見れて良かったです。最近のシャボン玉ってこんなにいろいろな色がついて飛ばせるなんて知りませんでしたよ」
「そうか、君にはそういう風に見えているんだね」
「?」
私は困惑した。そういう風に見えている?
「どういうことですか?」
「ああそうだな、説明してあげよう。実は私のシャボン玉はね……」
今でも忘れない、この時の出会いからだったかな、私の日常の中に、非日常が加わるようになったのは。
なんだか意味深な終り方をしてしまいました。
もう少し続きを書いて次にいっても良かったのですがなんとなくここで区切ろう!
と思ってしまったので仕方ない。
初めて書く小説なのでドキドキですが書いてて楽しかったです。
これってあとがきで書くことなのかな・・・
よくわかっていませんが、これから続いていくのでよろしくお願いします。