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黒猫の静寂(ドレつかSS)

本編 第5章「13 月光を跳ぶ」「14 誓いのしるし」「15 助けて!」の裏側の、エイジとサラ。エイジ視点。一人称対話形式を使った掌編です。

 どした? 入っておいで。

 いつも知らない内にするっと忍び込んでる癖に、珍しい。

 そうやって窓枠に座ってても良いけど、落っこちんなよ。

 いくら一国の王子の執務室とは言え、窓枠までがそう立派な訳じゃないんだから。


 ん? 悪い。

 今夜に限って、お前が食べられそうなもんがないなぁ。

 そこで寝こけてる親衛隊長さんが、さっき苛立ち紛れに全部食い散らかしやがった。


 だから。

 それでもよければ、おいで。

 いつものように、俺の隣に座ればいい。


 ……まあ、そいつは寝かせておいてやろうぜ。

 旅から戻ったばっかりで、疲れてるんだろ。

 でも近付かない方がいい。帯刀したまま寝てるだろ?

 寝ぼけて斬られるのは、俺だったらごめんだわ。


 そうだ。そう言えば、こうやって夜中に入ってくるお前を見るのも久し振りだな。

 当然か。そもそも俺がどんだけ留守にしてたんだって。……悪い悪い。

 そうね、3ヶ月くらいいなかったかね。

 麗しの王子サマがお留守の間、お城に変わったことはなかったかい?


 まあ、お前が答える訳ないか。

 あーよしよし。悪かったよ、お前ついて来たかったの?

 知らなかったわ。

 だって、出発の時、お前いなかったんだけど?

 どこ行ってたのよ?

 事前に言おうにも、どこにいるかも分かんなかったのよ。

 羨ましいよな、気ままな生活……。


 ――ふうっ! じゃないって。怒んなよ。

 黙って触って悪かったよ。

 そんなぼわぼわになった尻尾振り回すな。


 まあお前がついて来たって、何にも良いことないよな。

 旅路の間は飯も保存食中心になるし、汚れるし疲れるし……。


 でも。

 お前がいれば、もっと楽に終わったかねぇ。

 さすがの俺もちょっと疲れた。


 聞いてくれよ。

 そこの親衛隊長に振り回された俺の苦労。


 ひどいもんですわよ、本当。

 どっちがお目付け役かって、どう考えても俺だよ。

 ほとんどそいつのお供のように旅をしながら、俺は何してたと思う?

 主にね、そこの剣術バカのブレーキ役。ああ、もう本当……。


 え、寝ちゃうの? 俺の話はつまんないかな。

 愚痴ばっかりに聞こえるかい?

 もっと、お前が興味持てそうな……。

 メシ? 魚? それともマタタビかい。


 ……あー、でもさ。

 多少は役得もあったかな?


 この国じゃさ、俺、遊ぶところなんてないじゃない?

 だからこう……あれよ。ハメを外したってやつよ。

 いや、良かったですよ。素敵でした。素晴らしい経験だったよ。

 いいかい? お前にゃ分からんだろうけど、女性の身体というものはですねぇ……あ、痛て。痛ててててて、ツメ! ツメ引っ込めて!


 全く。何なの、お前?

 可愛くないなぁ。


 そうね。お前なんか置いてって良かったよ。

 お前を一緒に連れてったところで。


 そう言えばお前、そこの親衛隊長さんが旅先で拾ってきた少年、知ってる?

 もう会った? ……よなぁ、きっと。


 ……何びくびくしてんの。

 何かやましいことでもあるの?

 何で分かるかって? さあねぇ。付き合いの長さじゃない?


 そうじゃなければ、お前。

 顔に出てんだよ、きっと。


 ……寝るんなら、毛布貸してあげようか。

 俺はいつだって優しいからさ。

 いくら獣人だって、腹出して寝たら風邪ひくだろ。

 圧倒的に毛皮部分が少なすぎるから。


 まあ、つっても。

 獣人のお前よりは、人間の俺の方が風邪ひきやすいかね?

 いいのよ。バカは風邪ひかないって言うでしょ。


 ……本当に、お前、無口だなぁ。

 ここ、笑うとこだぜ。


 そんなんじゃ何考えてるかなんて、分かったもんじゃないし。

 可愛いのは顔だけだって、お前なんかまるで子どもみたいだし。

 ほら、手のひらだって、こんなちっちゃいし……。


 うん。やっぱり女は身体だね。

 ロリボディなんか目じゃないよ。

 旅中で散々楽しんだボンキュッボンのダイナマイトバディが恋しいわ。


 ああ、はいはい。

 ロリじゃないって?

 怒るな怒るな。


 そうね、いっそずっと帰って来なきゃ良かったかも。


 そうすればさ。

 自分が王子様だなんて忘れて。

 誰とだって自由に恋愛出来るのにねぇ……。

一人称対話形式という小説形式については、キーワードで小説検索をかけて頂くと、素晴らしい作品群とエッセイが見付かるはずです。

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■奴隷商人は嘘をつかない
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