表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/37

7話 魔王、ギルドでからまれる その1

日間45位でした! ありがとうございます!

 セルリスの町まではレヴィテーションで飛行すれば楽なのだけど一応歩いていった。


 飛んでるのがばれると面倒だ。

 この世界でどれぐらい一般的な魔法なのかよくわからないからな。


 一時間かからずに着いた。モンスターっぽい足にも慣れてきたらしい。

 もちろん靴で足が見えないようにしている。


 町の案内役としてザフィーラにも来てもらっている。

 というか、ザフィーラのほうからついてくると言った。

「私は魔王様の奴隷ですから、できるだけそばを離れたくないんです」

 こんなことを熱っぽい顔で言われたら、離れたりなんてできない。


 もし、ザフィーラを知ってる奴に誰かと尋ねられたら、夫だとでも答えておこう。

 昨日、大人の関係になってしまったわけだし、必ずしも間違いでもないだろう。


 セルリスの町は街道が通っているため、人馬の往来も多く、かなりにぎわっていた。


 石造りの立派な建物も目立つ。

 ああいうのは商館だろう。

 街道の町だから支店があるんだろうな。


「なかなか栄えてるな」

「ええ。燃やし甲斐がありますよね」

「お前は放火魔か……」


 そういえば、俺と戦闘した時も火炎の魔法使ってきたな。


「あら、ザフィーラちゃん、そっちのお兄さんはどなただい?」

「おっ、ザフィーラちゃん、まさか彼氏……?」

「あら、男前じゃない。やっぱりザフィーラちゃんの器量ならそれぐらいの男でないとねえ」


 ザフィーラは普通に顔が広く、かなり頻繁に声をかけられた。


 その都度「夫のルシアです」と答えておいた。

 若い男が話しかけてきたケースは、露骨に相手が残念な顔をしてたので、ザフィーラを狙っていたのだろう。


 まあ、もし結婚しても、魔女だからリアルに魔法の生贄にされる恐れがあるけどな……。

「ちなみに、市民を生贄にしたりはしてないよな……?」

「このような下級の存在の魂と肉体では生贄としての価値が低すぎて使い物になりませんよ」

 なんか失礼な理由だが、生贄にしてないので、それでよしとする!


 あと、ザフィーラが手をつないでこようとしたが、目立ちすぎるのでやめておくように言った。

「奴隷はずっと縛っておいてくれないとダメですよ……」

「俺はそういう趣味はない」

「ルシアさんはむしろ放置するほうなんですか……?」


 こういう発言はもちろん小声でやってます。

 表面上は器量のいい女の子だからな。市民の幻想を守り抜こう。


「それにしても、ザフィーラ、かなり町になじんでるな」


「ええ、愚かな人間どもを欺くために表面上は『森で暮らすやさしい少女』を演じてますから。重い荷物を押している老人がいたら手伝ってあげたりしてますよ」


 それ、犯罪起こしたら、まさかあの人がとか言われるケース……。


「もう、そのまま、善人として生きたらどうだ?」


「魔族として、そんな恥ずべきことはできません!」


 なかなか人生ってままならないものだな……。


 しばらく町を歩いていると二階建ての目立つ石造りの建物が見えた。


 この国の言葉で「冒険者ギルド」と書いてある。

 どうやら転生した時点で文字も読めるようになっているらしい。

 実際、日本にいた時と同じようにしゃべって通じてるしな。


 まあ、当たり前と言えば当たり前か。

 転生者が異世界で言語がまったく通じなかったら、あからさまに怪しい。


「あそこですね。一階は酒場を兼ねていて、ガラが悪いゴロツキもいたりするので、あまり好きではありません」

 いかにもいそう……。

 絡んでくる定番のザコな。


「じゃあ、外で待ってくれてていいぞ」


「いえ、ルシアさんだけ危険な目に遭わせるわけにはいきませんし、私も冒険者登録をします! 前回、魔王様が先に封印されて、みんな途方に暮れたんです! ルシアさんが倒れるより先に私が倒れます!」


 重い宣言だなと思ったが、たしかに先にボスを倒されちゃった中ボスはいたたまれないだろう。


「わかった。まあ、気楽に登録しよう」

「ただ、難しい点が一つあります」

「何だ?」

「ルシアさんに絡んでくるだろうゴロツキに対する怒りを抑えられるか自信がありません……」


 入った途端、やたらと視線を浴びた。

 たしかにガラの悪そうな奴が多い。


 早速ばれたかと思ったが、そうじゃなかった。


 きれいどころがいるからだ。

 もちろんザフィーラな。


 男率が高い空間だから、美少女の存在がどうしても目立つ。

 初日は実質、ザフィーラ以外の女性を見てなかったので比較しようがなかったが、町を歩いててもザフィーラより美人の女はまったくいないと言っていい。


 前代の魔王はもしかして幹部を顔で選んだのでは疑惑が浮上するぐらいだ……。

 いや、まさかそんなことないよね……。ないよな?


 で、そんな美少女と一緒に俺がいるのだから、俺のほうも目立つ。


 声かけられる前からじろじろ見ると絡まれるので、そのままカウンターへ行く。

 まだ二十代なかばのメガネの美人のお姉さんが、受付をしていた。


「あの、ギルドに登録したいんですが」


「おいおい、兄ちゃんみたいな優男やさおとこじゃすぐに殺されちまうぜ」

「お嬢ちゃん、そいつが死んだら俺のところに来いよ。もっと、かわいがってやるからよ」


 うわ、一言発しただけで、こういう発言飛んできたよ!

 どんだけテンプレなんだよ。あふれ出るNPC感!

 なんか、定番の観光地に来たような気分だ。

 本当にこういう人いるんだなあ……。


 視線を向けるとトラブルになるからやめておこう。


 ケンカしたらステータス的に絶対勝てるだろうけど、突如町に現れた男が超強いとなったらどうしたって目立つ。絶対に目立たないほうがよい。


「すいませんね……ここはこういう場所ですので……」


 受付のお姉さんが苦笑した。


 この人も、多分一日五百回ぐらいセクハラ発言されてんだろうな。


 でも、あんな荒くれ者みたいなのにも来てもらうことも想定して、ギルドも若くてかわいい子に受付させてる面もあるから、どっちもどっちか。


「別に俺は気にしてません。ギルド登録ははじめてなんですが、教えてもらっていいですか?」


「だから、ビギナーが生きてやっていける世界じゃねえんだよ! 女だけ置いて帰って、家で自分の○○○でもいじってな!」

「どうせ、女を楽しませられねえほど小せえんだろ!」

「「ゲハハハハ!」」


 ついに直球の下ネタ来たぞ!

 うぜえ……。

 ヘルファイアで焼き尽くしたい……。


「本当にすいませんね……」

 また受付のお姉さんが頭を下げた。


 いや、こちらこそお姉さんのせいじゃないのに謝らせてすいません。


「ヘルファイアで焼き尽くしたいです……」


 ぼそっとザフィーラが言った。

 まずい。

 本当にザフィーラが怒りを制御できなくなりつつある!

「ルシアさん、ミディアムとレア、どちらがお好みですか?」

「この場では焼くなよ!? 絶対焼くなよ!?」


 ギルドを焼いたら、魔王認定確定だぞ!

 冒険者になって金を稼ぐどころじゃなくなる!

次回は夕方6時頃の更新です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ