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5話 魔王、ヒモになる

すいません、予定より30分ほど遅くなりました!

 ザフィーラのアジト(ただの森の中の一軒屋だが)で、いろいろとこの世界の話を聞けた。

 ついでに小腹がすいていたのでリンゴのパイもいただいた。


「私たち魔族は魔王様を頂点に20の軍団に分かれて、人間世界の土地の征服を目指して動いていました」


「そのうち第7軍団長がザフィーラってわけだな」


 俺はリンゴパイを食べながら言う。


 どうやら、この世界は魔王がしょっちゅう現れ、そのたび勇者に退治されるということが繰り返されているらしい。

 いわば人類の歴史は魔王との戦いの歴史だ。


 なお、魔族というのはその魔王に従うものを差す広義の概念だ。

 だから、見た目は人間の魔女ザフィーラも魔族に入るらしい。


 まあ、日本国籍でも西洋人にしか見えないなんてことは普通にあるので、見た目との違いがあるという意味はわかる。


「私も第7軍団長に選ばれた時は喜びで打ち震えたものです。軍団長というのは魔族における出世の頂点ですから」


「国会議員が大臣に選ばれるようなものだな」


「こっかいぎいん?」


「ああ、気にせず続けてくれ」


 あまり日本のワードは使わないでおこう。通じない。


「魔王の登場に合わせて、人間の国家でも勇者のパーティー五名が結成されました。普通はこの勇者たちが各地の軍団長を倒して、魔族の支配から人間を解放していく、そういう流れになっています」


 うん、俺のやってたゲームもそうだった。


「ただ……今回の勇者は封印の魔法に特化してすぐれていて……いきなり魔王様のところにいって、魔王様を封印してしまったのです……」


 ものすごく、寂しそうにザフィーラは言った。


「我々、軍団長も魔王様がいない以上、戦い続けるわけにもいかなくなり、軍団を解散し、各地に潜伏したというわけです……。せっかく軍団長になったというのに……」


 勇者、空気読めよ!

 中ボスクラスがすごくショック受けてるぞ!


「ちなみに封印はいつか解けると言われてはいるので、魔王様が完全にやられたわけではないのですが、五年先か百年先かはまったくわかりません。しょうがないので、私もここで復活のその日を待ち望んで暮らしていたというわけです……」


「魔族も大変だな……」


「しかし、そんな逼塞の日々も今日で終わりです!」


 そこでザフィーラの声が大きくなる。


 それから立ち上がって、俺の手をつかんだ。


「こうして素晴らしい魔王様が降臨されたのですから! 魔王ルシア様! 世界を滅ぼしましょう!」


「え……別に世界を滅ぼすつもりとかはないんだけど……」


 というか、世界滅んだらどこに暮らすのか。

 魔族の世界とかあるの?


「いえ、滅ぼしましょう! これまでの魔王様の中でも、ルシア様は間違いなく最強の魔王様です! 人間たちに絶望を味わわせましょう!」


 音楽業界にいた身としては、人間って絶望しすぎると音楽聞く余裕もなくなってくるので、ある程度楽しく生きててほしい。


「う、うん……。まあ、ほどほどにね……」


「それより、ザフィーラは普段の生活はどうしてる?」


 俺が人里に出ると確実に騒がれるので、生き方を考えねばならない。


「私はこの姿のまま、普通に町に買い物に行っていますが。二年間はこの生活を続けています」


「よかった。じゃあ、これからは二人分の食材を買ってきてくれ。俺が買い物に行くと、町の人間が逃げ出して滅んでしまう」


「はい、その程度のことならなんなりとお申し付けくださいませ」

 また丁重に頭を下げられる。


 ファンを奴隷と呼んではいたが、こんなにへりくだられると逆にやりづらい。


「うん、お願いする。料理は俺も作るから。掃除もやるし」

 ツイッターで料理の写真はアップしていたし、けっこう得意だ。

「いえいえ! ルシア様はごゆるりとなさってください!」


 ごゆるりと言われてもな……。


「私のことは奴隷だと思ってください! 血の一滴までもルシア様のものです!」


 なんか重いぞ!

 そういえば、バンド時代も生涯捧げます的な人、たまにいたな。


 正直、生涯捧げると言われてもすぐ結婚するわけにもいかないし、こっちも背負いきれないので、もうちょっとカジュアルにファンやってほしい。


 あと、ここに引きこもっててもやることないんだよな……。


「そうだ、今度、町に行った時にすごい地味な服と靴、それと、帽子を買ってきてくれ!」


 別に俺の顔がツイッターで拡散されてるわけでもない。

 髪の毛の色やら足が見えなければ、誤魔化しもきくだろう。

 牙だけならぎりぎり、こういう体質ですと言って乗り切れなくもないと思う。


 さっき、この家の鏡で確認したが、局所的な部分を除けば、ただの人間だ。


「わかりました、ルシア様。では、明日すぐに買い物に向かいますので!」

 やっぱり礼儀正しすぎて困る。


「ええと、ザフィーラ……ルシア様というの、禁止。呼び方、ルシアにしてくれ」


 まるでメンバーにバンドの解散をほのめかしたみたいに、ザフィーラがあとずさった。


「そ、そんな、めっそうもございません! ルシア様を呼び捨てにするなど、万死に値する所業でございます!」


 やりづらい!

 同居人がこんな反応とったらコミュニケーションとりづらい!


「もうちょっと、気楽にやろう。気楽に、気楽に。魔王なんてそんな特別もんじゃないから」


「いえいえ! ルシア様の力はもっともっと偉そうにしてしかるべきものなんです! ルシア様もご自身のステータスはご存じでしょう? 余裕で世界滅ぼせる次元のものですよ?」


 ああ、うん、それはわかってるけど、でも……居候をしながら様付けは精神的に申し訳ない……。


 たしかにバンドマンは売れる前は日本で最も金がない人種の一つなので、ヒモ生活を送る人間は多い。


 ツアーなどに出ると時間拘束が長く、不定期でOKなバイトぐらいしか掛け持ちできないし、スタジオを借りるだけでもそれなりのお金がいる。


 しかし、様付けで居候するのは、ちょっとNGだ。こっちの心が折れる。


「わかった……では、さん付けで。ルシアさんでどうだろう?」

「そ、それなら我慢できなくもないです、ルシアさ……ん……」

 かろうじてルシアさんと呼んでもらえた。


 ひとまず目の前の問題は解消できたかな。


◇ ◇ ◇


 しかし、まだ問題があった。


 その夜、客人用のベッドで寝ていた時だ。


「あの、ルシアさん……夜伽のつとめに参りました……。こんな私で申し訳ないのですが……」

 裸の上から、透けた薄絹だけをまとったザフィーラがやってきて、すぐに目が覚めた。


「いや、別にこういうことを望んでたわけじゃないんだけど……」


「でも、ルシアさん……さん……お体は正直ですよ」


 自分の下半身は、確かに人間と変わらない反応をしていた。


 当たり前だ、年頃の女性にそんな格好で迫られたら、男はそうなる……。


 それと、ザフィーラの目がハートマークみたいになっていた。


「私も、ルシアさんと一緒になりたいです……」


 もしかして魔族って強い人間に惚れたりするのだろうか。


 たしかに待望されてた魔王が目の前ですごい力見せたからな……。


 まあ、魔王だし、いいか。


「じゃあ、ザフィーラを奥さんだと思うことにする……」


「いえ、私は奴隷でけっこうですから……」


 その夜はザフィーラの体で何度か楽しんだ。


 一日目からあまりにもいろいろありすぎた……。

次回も本日中にアップ予定です!

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