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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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31話 魔王、隣国にケンカを売られる

 トラフ侯国というのは俺の領土の南側にある地域だ。

 ぶっちゃけ、獣人などが買い物に行く町も侯国だ。

 俺の土地に都市がないので国内で生活が完結しないのだ。


 なお、侯国という名になっているが、これは独立国ではなく、王国の中にある大名の支配地域みたいなものである。王国を脅かさない範囲で存在が認められている。

 なので、侯国を支配している侯爵も世襲制の県知事ぐらいに考えればよい。


 伯爵の俺が支配してるエリアも同じなのだが、伯爵以下はそこまで偉くないので慣例で「国」を名乗りはしないらしい。


 そのトラフ侯国の侯爵の居城に俺とザフィーラ、ベルクで行った。

 ベルクがいないといろいろ常識がわからないからだ。


 貴族の服とかがいるのかとベルクに聞いたが、騎士扱いなのだから、立派な騎士の服でいいということだった。

 ザフィーラには仕立て屋さんに金を出して、ドレスのようなものを作ってやった。

 質素な服だとザフィーラがバカにされるのは不本意だからな。


 トラフ侯国は規模で言うと、日本の神奈川県ぐらいはある、けっこう広いところだ。

 貴族なら馬車などで行くべきかもしれんが、お金がもったいないのでレヴィテーションで飛んでいった。


「きっと、Sランク冒険者にお会いしたいなどと思っているんですよ。ルシアさんの威光には人間も気づきますもの」

 ザフィーラはプラス思考だったが、俺はもうちょっとネガティブだった。

「ネチネチいじめられるんじゃないかな」

 どこの馬の骨ともわからん奴がいきなり領主になって、土地を接してるわけだからな。


 トラフ侯国の居城があるトラフの町は市場が立つなど、かなりにぎわっていた。

 人口分けてほしいな……。

 マジでお金の入手方法を考えないと、国としてやっていけないぞ。


 面会を告げると、早速侯爵のいる大きな部屋に通された。

 こちらが身分は下なので体をかがめて相手に恭順の意を示す。

 ザフィーラが人間に頭を下げるなんて嫌だと言いそうだったが、ここは我慢してくれた。


「そなたがバンド・ルシア北部辺境伯であるな」

 侯爵は両側に伸びたヒゲがくるくる丸まっていて、ちょっと面白い。

 これ、手入れしないと、こんなに丸くならんよな。


「はい、冒険者上がりでわからないことだらけなのですが、よろしくお願いいたします」

「いやいや、あのわけのわからん化け物に占拠されていた土地を解放してくれて感謝しているぞ」

 けっこう偉そうな言い方だが、まあ、向こうのほうが偉いからしょうがない。


「おかげで簡単に我が領土を広げられそうであるからのう」


 侯爵はにやにや下卑た笑いを浮かべた。

 あっ、そういうことか。


「伯爵の土地は人間もほとんど住んでおらんのだろう。軍隊をちょっと送りこんでやれば、すぐにこちらが併合できる。いやあ、面倒な仕事をしてくれて結構、結構」


「あなたね! どれだけ夫に失礼なことを言えば、気がすむの!」


 キレかけたザフィーラが立ち上がる。

 俺はすぐにザフィーラのドレスに手をかけて押し留める。


 それから小声で、

「このままやらせておけ」

「いいんですか、あいつ、明らかに悪者」

「むしろ都合がいい」


「聞き分けがいい冒険者であるな。この城にはAクラス冒険者だけで20人、魔法使いも15人も仕えておる。いくらSランク冒険者でも勝ち目はないぞよ」


 いや、勝てるけどね。


「宣戦布告をされたのでしたら、自分の城に戻って防備を固めたいのですが、いいですか?」

「ああ、好きにするがいい。ここで謀殺するのはあまりに卑怯であるしの」


 俺は心の中でガッツポーズをした。


 その帰り、レヴィテーション中にベルクに言われた。

「無茶苦茶楽しそうですね、魔王様」

「そりゃ、そうだろ。しっかり俺の土地まで攻めこんできてもらわないとな」

「そしたら、報復の大義名分が手に入るってことですね」


 つまり、そういうことだ。


「トラフ侯国をまるまる手に入れれば、伯爵領も国として機能しだす!」


 そして、俺は伯爵としてごろごろだらだらできる!

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