表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/37

23話 魔王、勇者の仲間を泊める3

「俺は妻が手を汚すのを見たくない」


 部外者のシャンファが来たので俺たちは自然と町と同じ夫婦という設定になっている。


 その設定をあえて、ザフィーラと二人の時に繰り返した。


「つ、妻って認めてくれるんですか、ルシアさん……?」


「俺は以前からそのつもりだったけれど何か?」


「私なんて本当に奴隷でいいのに……」


「だから、そんなこと言うな。俺がほかの女を抱いたことがあるか?」


 ぎゅっとザフィーラから抱きついてきた。


 よし、どうにか懐柔できそうだ。


「わかりました、ルシアさん……」


「うん、わかってくれたな」


「じゃあ、ルシアさんの見ていないところで手を下すことにしますね! それなら手を汚すところも見られないですし」


 …………わかってないし!


 別に汚いシーンを見せるなって意味じゃねえよ!


 それでも食事は無事にすんだのでよしとするか。


 そして就寝の時間になった。


 空いている部屋があったので、ザフィーラが今日はそちらに移って、シャンファにザフィーラの部屋を貸すことにした。


 空き部屋は掃除が足りてないし、客人をもてなすには申し訳ないからだ。


 というか、ザフィーラ、俺の部屋で夫婦で寝ますとか言わないんだな。

 夫婦という設定だから、それで何の違和感もないんだけど。


 つまり、今夜は暗殺のほうに力を注ぎますということだろう。


 困ったな。客人の女子が一人寝てる部屋で護衛をするわけにもいかんぞ……。


「では、お部屋に案内しますねー♪」


 シャンファを案内するザフィーラの顔がまたいい顔なので余計怖い。


 そうっとついていくことにした。


 人命がかかっているのだ。


 声がこちらにかろうじて聞こえてくる。


 しばらく音声だけでお送りします。


「ほほう、食事の部屋などもかわいくてよかったが、寝室は落ち着いているな。木の本来の色合いを上手に使っている。むしろ、私などはこちらのほうが好みだ」


「本当ですか?」


「ああ、ウソをついても仕方あるまい」


「シャンファさん、あなた、いい人ですね! 違いのわかるいい人です!」


「おい! 手を握るほどのことか?」


「はい! やっと、このシックな美しさを理解してもらえました!」


 そのあと、ザフィーラがスキップしてこちらにやってきた。


「私の内装のほうがセンスあるって褒められました!」


「ああ、まだ模様替え戦争は続いてたんだな……」


 そうか、ピョンタンもザフィーラの自室までは改造しなかったんだ。


「人間にしてはセンスがあるので、今日は生かしてやろうと思います」


「うん、俺の意見を聞いてくれてうれしいよ」


 違うところで納得しただけな気もするが……。


 でも、楽しそうなザフィーラが本当にかわいいので、全部よしとする。


「あの、ルシアさん……いえ、あなた……。同じお部屋で寝ていい?」

「そうだな、夫婦だもんな」


 その日は俺の部屋でザフィーラと熱い夜を過ごしました。


◇ ◇ ◇


 翌朝。


 食事用の部屋に入ると、シャンファが早朝から魔道書を読んでいた。


「勉強熱心ですね」


 まだ、朝もかなり早いんだけどな。


 ちなみにザフィーラはまだ起きてこない。

 俺が寝不足の要因でもあるんで、起きろとも言いづらい。


「いつ魔王が復活するか、わからないからな。前回のように私たちでぎりぎり対処できる魔王ならいいが、あの何倍の強いのが出てきたら大変なことになる」


 うん、あなたの目の前にいるのがその魔王です。


「ところで、今は何の旅の途中なんですか?」


「この先のヒエナという村が魔王に焼き討ちにされたという報告があったので向かっている。まあ、あとは一種のパトロールだな。数日は逗留する」


 俺がやった奴の話が大きくなってきてるな……。


「なんだか、顔が青いようだが」


 ぎくっ。


「もしかして、寝不足か? あ、いや、その……卑猥な冗談を言ったつもりではないのだ、申し訳ない……」


「ああ、気にしないでください……」


 ぶっちゃけ、えっちいことして寝不足なわけだし。


「でも、村に行っても無意味じゃないですかね……。だって、それ以降魔王騒ぎは出てないんでしょう?」


「そうではあるが、魔王が現れたのなら、その後の足跡がわかるかもしれん」


 それがばれたら面倒すぎる。


「まあ、私も何かの間違いではないかと思っている。さて、今日はもう旅立つことにする。本当にありがとう。これは宿代だ」


 そう言って、魔法使いシャンファは俺に小さな小瓶を手渡した。


 薬草だろう。はっきり言って、この世界の薬草は相当高価だ。金貨五枚分ぐらいはくだらないだろう。


「もらいすぎです」


「いや、たんなる宿とは違う楽しみもあった。どうか受け取ってくれ」


 そして、シャンファは朝食もとらずに行ってしまった。


「村に行くんだよな……。証拠は残してないはずだし、大丈夫だろう……」


 シャンファが出ていって少し経ってから、ピョンタンとザフィーラが起きてきた。


「あれ、魔法使いの人はもう行ったんですか?」


「うん、焼けた村を見に行くって」


◇ ◇ ◇


 ――数日後。


 ザフィーラと冒険者ギルドに行ったら、シエナさんに、


「おめでとうございます!」


 と大きな声で言われた。


 周りに迷惑になりますよと思ったけど、むしろ周りに聞こえるようにするのが目的なのか。


「ザフィーラさん、シエナさん! お二人はAランク冒険者に昇格です!」


 こいつらは強いんだから絡むんじゃないぞって知らしめようとしてるわけか。


 呑んでる奴ら(いつも絶対何人か酔ってるのがいる)たちからも、

「おお、すげー」

「スピード出世だな」

 なんて声がしてくる。


「ということは前回のボルガドット山のクエストは達成と認められたってことですね」


「そういうことです。モンスターの出現はなくなったということを地元からの連絡で確認いたしました。お二人が冒険者としてそちらに向かった時期とも矛盾なく一致します」


 まあ、そのモンスターは、


「二人とも、よかったウサ! とくにご主人様、よかったウサ!」


 ここにいるんだけどね。


 面倒なことになるから絶対に言わないけど。


 ピョンタンがそのまま俺に抱きついてきた。

 ペットだから抱きつきもするだろう。


「ちょっと! ピョンタン、離れなさい!」


 ザフィーラが強引にピョンタンを無理矢理ひっぺがした。


「ああ! もっとご主人様と抱きつきたいウサ~!」


 わざわざ周囲にやっかまれるようなことするなよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ