表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/37

20話 魔王、模様替えと戦う

 冒険者になって上機嫌なピョンタンと帰宅したら、ザフィーラがすごく怒っていた。


 どうやら出かける俺たちと帰宅するザフィーラと入れ違いになったらしい。


「ちょっと! 模様替えなんて聞いてないわよ!」


「今のほうがかわいいウサ」


 たしかにカーテンはピンクになり、テーブルにも赤い布が敷いてある。


 急激な赤推しである。


「魔女にこんなのは似合わないし、落ち着かないわ。せっかくシックにしてたのに」


「かわいくないウサ。つまんないウサ」


「だから、かわいさで決めてたんじゃないの!」


 これは好みの問題でしかないから決めるのは大変だな。


 ちなみに俺の結論としてはどっちでもいい。


 文字通り、どっちでもいいのである。


 ただ、この表現は鬼門だ。

 

 大昔、彼女にどっちの服が似合うかと言われたことがある。


 どっちでもいい、と正直に答えたら、そりゃ、怒られたね……。


 率直な意見を聞かせてって言われたから、率直に答えたのに、相当怒られたね……。


 怒る感覚はわからなくもないが、冷静に考えるとやはりおかしいと思う。


 だって、たとえば歴史小説に興味がない人に、どっちの歴史小説がいいかと本を二冊出しても、どっちでもいいとしか答えようがないだろう。


 たしかにヴィジュアル系バンドだったので、衣装自体にはこだわりがあったが、ああいうのはコンセプトが先にあるので、あまり迷うことはなかった。

 それにデザイナーさんとかの意見ももらえたし。


 それで、今の状況である。


 これは自分に被害が来る前に逃げるのが正しい。


 空いている部屋にでも移動しよう。


「あの、ルシアさん」


 その前に呼ばれた。


「ルシアさんはどっちがよろしいとお思いですか?」


 来たか…………。


「そうウサ。ご主人様に尋ねれば、どちらかが多数決で勝利するウサ!」


 うわあ、どっちと答えても俺が片方からは悪者になるパターンじゃん。


 ここは喧嘩両成敗的なノリで、あえてどっちでもいいと答えて、両者から軽蔑されるという手もある。


 人格者だったらあえてそういうことをするかもしれない。


 でも、俺、人格者じゃないし、できれば軽蔑もされたくない。


 ここは詭弁で誤魔化すしかない。


「ど、どちらも素晴らしい」


「それではどちらのほうが素晴らしいんですか、ルシアさん?」


 ザフィーラ、基本的に負けず嫌いなんだよなあ……。


「どっちも百点で、イーブンです」


 ちょっと丁寧語になってしまった。


「いえ、厳密に同じなどということはないはずですよ。ルシアさんにも好みはあるはずですし、どうか率直なご意見を」


「率直なご意見」を求められた!!!!!


 ここで、どっちでもいいとは言えん!


 よし、ルシアよ、知恵を働かせろ。

 これでも魔王だろう。


「どちらも捨てがたいので、一週間おきに模様替えするとかはどうだろう?」


 これなら両立しうるのではなかろうか。


「いえ、そういう平等にするみたいなのではなく、どちらがいいかはっきり言ってください」


 なんで気まずくなる方向に持っていくんだよ!


「大丈夫です。私のシックなほうが選ばれる確信がありますから!」


 自信家には何を言っても無駄か!


「ふん! ピョンタンが負けたら裸で町を一周してやうウサ! なぜならピョンタンのほうがかわいいからウサ!」


 そっちも自信満々かよ!


 くそ……。

 ついに年貢の納め時か……。


 ただ、いざ決断するとなると、どっちでもいいんだよな……。


 どっちでもいいのに片方が敗者になるって、それはいいのだろうか……。


「ええと、その……」


 ――ドンドン、ドンドン。


 ドアが叩かれている。


 いったい、誰だろう?


 ベルクの魔法で頭の角や髪の色は誤魔化せているはずだが、効力の期間があいまいで怖いので帽子をかぶる。


「見に行ってくる」

「いえ、ルシアさんにそんなことはさせられません」

「ピョンタンも行くウサ」


 結局、3人で行くことになった。


 ドアの外には二十歳ぐらいの娘がいた。


 見た感じ、魔法使いという印象だ。

 雰囲気だけでもガチの冒険者ということがわかる。


「申し訳ない。一泊お願いできないだろうか? もう日暮れが迫っていてな」


 俺は問題ないと思うが家の持ち主ではないのでザフィーラのほうを見た。


「はい、どうぞ。ところで、魔法使いの方ですか? 私も破壊魔法を少々やってまして」


「ああ、そうだな」


 にっこりと相手は笑った。


「私はシャンファ・ラクトールというものだ」


「あれ、どこかで聞いたことがあるような……」


 ザフィーラの反応だと相当高名な魔法使いなのだろうか。


「魔法使いとして勇者のパーティーに加わっていた時期がある。まだまだ未熟だった頃のことで恥ずかしいがな」


「うわーっ!」


 ザフィーラが大きな声をあげた。


「勇者のパーティーの一人じゃないですかー!」


 すごい人が来ちゃった!

異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生し、お好み焼き布教!~

という小説も金曜日から連載しております。

一発ネタですが日間で9位になりました! よろしければこちらもご覧ください!

http://ncode.syosetu.com/n1504de/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ