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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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2話 魔王、魔王として恐れられる

 この俺、ルシアは気づいたら、森の中に立っていた。ちなみに夜だった。


「魔王に転生って……ラスボスが住んでそうな城とか、そういうのないの?」


 バンドマンというのはゲーマー率が高いし、オタク率もそれなりに高い。


 つぶさないといけない空き時間が出来やすいので、ゲームをやったり、アニメを見たりするせいだろうか。

 あと、リア充的な学校生活を送れなかった奴が再チャレンジのために大学ぐらいでバンド活動をはじめるケースもある。俺の場合もそれに近かった。


 で、ゲームもそこそこやってたので、異世界というのにも多少の免疫はある。


 とはいえ、いきなり森の中じゃハードル高すぎるぞ。


 そもそも、俺は本当に魔王なのか?

 魔王だとしても家臣の二、三人ぐらいいないと締まらん。


「まずは村でも町でも探さんとな……」


 あまりに魔王的な状況からかけ離れていたら、普通に冒険者にでもなろう。


 異世界もものによってかなり違うが、ギルドがあればとりあえず登録するか。


 俺はゲーム中にギルドがあったら受けられる依頼はとことん受けまくるタイプだ。


 そこでしか発生しないイベントやアイテムもあるしな。


 ゲームは最短クリアではなく、とにかくやりこむことを重視する。


 月明かりを頼りにぶらぶら歩いてると、灯かり用のカンテラを持って歩いている男を見つけた。


 軽装だし、これは近くに村ぐらいあるぞ。助かった!


「そこの人、すいません、このあたりに――」


 なぜかその男の顔色が変わった。


「モ、モンスターだ! しかも絶対に超上級だ!」


 え、モンスター?

 おい、それ、人間に言っていい発言じゃないぞ!


 腐ってもヴィジュアル系のヴォーカルだぞ! メイクの技術には自信がある。


 まあ、メイク前は中の上か、よくて上の下ぐらいの顔だと思うが。


「俺はモンスターじゃない!」

 当然そう答える権利が俺にはあった。


「そんな鮮血みたいな髪の色をした人間がいるか!」


 そう言われて自分の服装(だって頭は見れないからな)を確認してみた。


 ラメ入りで分厚い黒のジャケット。


 その中央は毛の一本も生えてない肌が露出している。


 で、髪が真っ赤なままとすると……。


 この世界観では魔王に見えるのかもしれんな……。


 しかし、俺はあくまでも人間なのだ。そこは間違いない。

 だって人間の姿のままで転生してるし。


 よし、誤解を解こう。

 ファースト・インプレッションが最悪なところから恋がはじまることも珍しくない。

 まだ間に合う。


「俺は魔王じゃない」


「魔王!? まさか、魔王が復活したのか! 村はおしまいだ!」


 しまった。

 否定の仕方がまずかった。


 困ったな。


 まずは傷口をふさがなくては。


「安心してください。人間ですよ。髪は、その……染めたんです。ほら、魔王ごっこって言うか……」


 歯を出して、にかっと笑って友好的であることをアピール。


「うわっ! 長い牙が生えてる! やっぱり人間じゃないじゃないか!」


 え、牙?


 舌で確認してみると、犬歯が象牙みたいな太さに感じられる。

 ためしに口を閉じてみてもくちびるから外に出ている。

 これ、明らかに食事用じゃなくて、何かを噛んで引きちぎるための用途で使うやつだ。


「これは生まれながらの体質だ! とにかく俺は無害だから話を聞いてくれ!」

「魔王の話なんて聞けるか! 村に戻って冒険者ギルドから冒険者を……頼むから強い奴いてくれよ……」


 そんなことを言いながら、男はカンテラを投げ捨てて走っていく。


 いかん!

 このままでは魔王として討伐されてしまう!


「待て。待つんだ! 逃げなくていい!」


 追いかけて、引き止めるしかない。


「ひいぃ! 追いかけてきた!」


「お前が逃げるからだ!」


 男の足はたいして速くないはずだが、なかなか追いつけない。


 まさかと思って足を見たら、そこだけ人間ぽくない。


 ああ、これ、ライブでつけてた衣装だ。


 足のかかとより先だけモンスターみたいな足になっていた。


 これでは上手く走れるわけがない。

 俺は一度足を止めて、そのモンスターの足の履き物を脱ぐことにした。


 とれない。


「あれ、これ……皮膚と一体化してない……?」


 腿とか膝とかレッグに当たる部分は人間の足なのだが、かかとより先が微妙にトカゲっぽい鱗で覆われていて、色も肌色じゃない。


 これって……本当に人間じゃなくなってるのか?


 そして止まっている間に逃げた村人はどこかに行ってしまった。

 まあ、逃げた方角はわかるから村を目指すことはできるのだが。


 三十秒ほど考えたが、村に行ってみることにした。

 あのオッサンだけが早とちりだったのかもしれん。

 足さえ隠してれば、人間扱いをしてくれる可能性も高い。


 小走りで、五分ほど進んでいると、村の明かりが見えてきた。

 見たところ、とくにパニックになってるような喧騒も聞こえないし、大丈夫なようだ。


 行く当てがないと言って、パンと寝床ぐらいは確保したいな。

 そのあとのこともいろいろ難題だらけだが、まずは今日一日を乗り切るのが大切だ。


 しかし、村に入る直前、五人ぐらいの男に囲まれた。


 とくに正面の奴は樽みたいに体が太くて、棍棒を握り締めている。


 横には剣や鎖鎌を持ってる奴らもいる。


「お前が魔王か」


 正面の樽みたいな奴が言った。


「いえ、違います」


「ウソをつくんじゃねえ。そんな髪に牙、しかも、その足、人間でもエルフでもドワーフでもねえ」


 あっ、足もばれてる!


「運が悪かったな。今、村には俺たちAランクパーティーが逗留してたんだよ! ここでぶっ殺してやる!」


 マジかよ! いきなり殺されかけてるぞ!

次回は本日夜11時頃を予定しています。あしたも3回更新する予定です。

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