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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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18話 魔王、虫の知らせを聞く

 結局、獣人たちには一時的に南部の森にある廃村に移ってもらうことにした。


 三十人ほどの数をザフィーラの家の近所に住まわせたら、あまりにも目立ちすぎる。


 かといって、峠に住まわせるのもあまり安全とも言えない。


 ということで廃村にした。

 すでに廃村だったのなら、山賊もそんなに目をつけはしないだろう。


「ピョンタンはどうする?」


「ピョンタンはご主人様のところでお手伝いをしたいウサー!」


 ということなので、城が見つかるまで獣人が自力で身を守らないといけない。


 そこで獣人用に護身術の講習会を開くことになった。


 ザフィーラは魔女だし、ベルクも神官だし、俺はステータス的にチートなので、ピョンタンが教えることになった。


「いいウサ? こうやって、力強く押すウサ」


 勢いよくピョンタンが細い木を押すと、そこから木が折れた。


 相当な力の入りようだ。

 冒険者を何人も片付けただけのことはある。


「さすがピョンタン様」「ピョンタン様、すごい」


 ピョンタンって名前が締まらないが、獣人からは敬愛されてるらしいな。


 ピョンタンの武術はかなり我流の型だったが、自力で強くなる必要があって学んだものなので、実用的であるとも言えた。


「つかまれそうになったら、とにかくキックを繰り出すウサ。こんなふうに木も折れるウサ」


 また別の木が折られた。


 ウサギの獣人は脚力が高いのか、なかなかの威力だ。


 なお、折った木はおいしくいただきました――ってことはできないけど、建物を作るのに有効活用しました。


 続いて、村の周囲に罠を張る指導も行った。


 単純な落とし穴だけでもそれなりの効果がある。

 自衛していると認識されれば、それだけで山賊は避けたがるはずだ。


 住居などはすでにある建物を適宜利用すれば30人が収まる。


 当面の問題はとりあえずクリアできたと言えるだろう。


「おかげさまで助かりました。ピョンタン様と魔王様たちは天使のような方々です」


 獣人たちから感謝された。

 しゃべってるのは猫耳の男で、流れで村長のような立場になっていた。

 以下、村長と呼ぶ。


 天使のような魔王やその幹部が褒め言葉なのか、かなり怪しいところだが。


 実際、ベルクが、


「天使のようというのはあまり楽しい表現ではないですね……。悪魔のような方と言ってほしいです」


 と村長に訂正を要求していた。


 人を褒めるのもなかなか難しい。


「本日は宴会を行いたいと思います。ごゆっくりしていってください」


 村長に言われたので、お言葉に甘えることにした。


 しかし、森の中にそんなに食べ物があるんだろうか。


 キノコとか?


「たくさん、ごちそうがありますよ。ご安心ください」


 村長は割と余裕だった。


 ただ、どこかで嫌な予感がする。


「ルシアさん、なんだか顔色が悪いですよ」


「虫の知らせがあるんだ」


 ――そして、言葉通りの結果になった。


 皿の上にいろんな虫が盛られている。


 そう、虫なのだ。


 獣人って虫もいけるんだな……。


 ちなみに俺は嫌だ……。


「こちらはおいしい芋虫を焼いたものです。ナッツみたいな味がしておいしいですよ」


 村長が順番に説明をしていった。


「こちらはバッタを焼いたものです。さくさくした食感ですね」


 とくに知りたくもない情報だ。


「これは食用ゴキブリですね。焼くとエビのような味がします」


 じゃあ、エビにしてください。


「すまん。気持ちだけいただいておく」


 ジャンケンで負けた罰ゲームとかでも絶対に食べたくない。


「あっ、部屋で見かける汚い種類のものではないですよ? 森に生息する種類ですよ?」


「種類の問題じゃない。見た目だ!」


 昆虫を食べる文化が地球の至るところにあることも知識としては知っている。


 差別する気もないし、興味深いとも思う。


 だからといって、俺がそれを食べ物と認識できるかは別だ。


「ルシアさん、ぜひ奴隷の私の分まで!」


「ザフィーラ、どさくさに紛れてこっちに皿を持ってくんな!」


「この料理は邪神への供物といたしましょう」


「ベルクも便利なロジック持ち出すなよ!」


「ウサギは草食なので無理ウサね」


「ピョンタンもさらりと流してきた!」


 結局、獣人しか虫は食べませんでした。


 一日ぐらい食べなくても死なない。これも修行だ。


 ――翌日。


 ピョンタンは獣人たちに手を振って別れを告げた。


「行ってくるウサ! 強く生きるウサ!」


 これからピョンタンは俺の家(というか、ザフィーラの家だが)のペットになるのだ。


 まあ、ペットだなんて思わずにちゃんと住人として丁重に扱うが。


 獣人たちはレヴィテーションで空を飛んだこちらが見えなくなるまでずっと手を振っていた。


 ピョンタンはレヴィテーションが使えないので、俺の背中に乗せている。


「ルシアさんの背中に乗るなんて不敬にもほどがあるわ!」


 ザフィーラが納得していないようだったが、


「ペットだとしたら、背中に乗せるのはおかしくないだろ」


 この論理で納得してもらうことにした。


 その日から俺の家は三人家族になった。

昨日から大阪のオバチャンが美少女の騎士に転生して、異世界でお好み焼き屋をチェーン展開するという話をネタではじめました。

よろしければこちらも見てやってください!

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