17話 魔王、城を手にする決意を固める
実はここから見えるのだが、峠のあたりの平たいところにはいくつか小屋のようなものが並んでいる。
もちろん小屋だから立派と形容できるような代物ではないが、草に覆われて廃屋同然などということはない。
生活感がある。それも数棟がそうなのだ。
となると、ピョンタン一人で住んでいたとも思えない。
むしろ、小屋の窓からこちらをうかがってる視線をいくつも感じる。
ピョンタンの耳がぺたんと前に垂れる。
どこか、気落ちしているように見えた。
「なるほど、似た境遇の者を放っておけなかったのか」
ベルクはすでに全貌を把握しつつあるらしい。
「おい、一人で納得せずにこちらにもわかるように説明しろ」
不都合な部分があるのか、ベルクはピョンタンに視線を送って、何か確認するような態度をとった。
「魔王様、ピョンタンは本来の意味での奴隷だったのです」
ベルクの話によると、ピョンタンみたいな獣人はまともな人間としては扱ってもらえず、奴隷として取引されることが多かったのだという。
王国にも獣人の集落みたいなものはあるが、そういうところが山賊などの攻撃を受けて崩壊することも珍しくないという。
文化や風習が違うからか、王国もまともに取り締まってなどないそうだ。
そして、捕まった獣人などは奴隷商人などにまとめて売り渡されて、人手不足の場所に売られていく。
まさしく、ピョンタンもそういう境遇で、偶然、前の魔王のもとに逃げたという。
「いきなりピョンタンが入った魔王軍の中に空いているポストはなかったウサ。実際、ピョンタンにもたいした力はなかったウサ。これでどこかの下っ端部隊に入れたらまたいじめられるのではと魔王様はふびんに思ったウサ」
「魔王、いい奴だな」
「そこで魔王様は一計を案じて、ペットという扱いにしてくれたウサ」
たしかにペットなら強い必要はないし、魔王直属ということになる。
「そのあと、魔王様のお役に立とうと特訓を重ねて今の力を手に入れたウサ」
なかなかいい話じゃないか。
ザフィーラなど、早くももらい泣きをしている。
「魔王様はピョンタンが眠っている間に勇者と戦って封印されたウサ。行き場のなくなったピョンタンは故郷の南部に近いこの山に住みついたウサ」
それから、小屋のほうに手を出して、招くような仕草をする。
ぞろぞろと同じような獣人が出てきた。
ウサギ耳の獣人もいれば猫耳の獣人、狐耳の獣人などもいる。
男の割合もかなり高い。
どうしても奴隷というと、エロいイメージがあるが、日本でも中世などの奴隷に近い立場の人間は圧倒的に労働力としての意味合いが強かった。
機械化などがされてない社会では、人手を増やすことしか能率をあげる手段がないからだ。
「この峠は奴隷商人が通る街道でもあるウサ。なので、ここを通る奴隷商人を殺して、みんなを解放していたウサ。まあ、解放しても生活基盤がないので行くあてがないウサが……」
「つまり、ピョンタンなりの人助けだったってわけか」
そうしてるうちにモンスターがいるという噂が広まり、討伐の冒険者がやってきて、それとも戦っていたというのが真相らしい。
「生かしておくと復讐される恐れもあるので生きて返さなかったウサ」
「そこはけっこうハードだな……」
まあ、きっと日本の戦国時代とかの価値観もこうだったのだろう。
いい話だが、さて、これからどうするのがいいのかな。
「ピョンタン、お前のやってることは立派だが、みんながここにいても、もしお前が勝てないような討伐部隊が来たらちりぢりになるぞ」
山の上で豊かな生活ができるとは到底思えない。
「わかっているウサ。どうにかしないとはいけないと思ってるウサが……」
「ルシアさん」
ぽんとザフィーラが俺の肩に手を置いた。
「これは多くの魔族が住める環境が必要ですね」
「まあ、魔族というか獣人だけど」
ああ、魔族って魔王に仕える者って概念なんだな。
じゃあ、まあ、間違いではないのか。
「つまり、城を手に入れるしかありませんね!」
すごくいい笑顔だった。
「お前、本当に城、求めてるな……」
マイホームにこだわる主婦か。
「城が手に入れば、あとは人数だけですからね! それで魔王軍は正式に復活できるんですから!」
「魔王様、私も同意見です。本拠がなければ、もし魔王様の身がばれた時なども行く場所がなくなりますし」
ベルクも真面目な顔で言ってきた。
「そうだな……。大きな城を探すとするか!」
ザフィーラがジャンプして喜んだ。
それはそれとしても――
「一時的にどこかに避難してもらったほうがいいよな」
★魔王軍の配下
(獣人なども全部含めると)34人
ちょっと一ネタ思いついたので、
大阪のオバチャンが美少女の女騎士として転生して、お好み焼きを布教してチェーン展開無双する小説を書きはじめました。
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