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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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15話 魔王、山へ行く

 ザフィーラが持ってきた仕事内容とはこういうものだった。


===

内容:モンスター討伐

対象ランク:Bランク以上

アクラウス王国西部のボルガドット山付近で

凶暴なモンスターの出現を確認。

早急な駆除が求められる。

報酬:金貨400枚。

未達成時の罰金:なし

===


「山にいる奴を倒せっていうことか。なんか、ふんわりしてるな」


「ギルドのシエナさんに聞いたところ、冒険者が30人は殺されてるらしいです」


「ああ、被害が深刻だからぼかして発注してるのか」


 もっとも、金貨400枚っていうのは相当な額だ。

 それだけでも本気でヤバいということがわかる。


 対象はBランク以上と書いてあるが、実際にはAランクでも危ないかもな。


「これ、絶対に元幹部の仕事ですよ! ぜひ、仲間にしましょう!」


 ザフィーラはすごいやる気になっている。


「そして、ボルガドット山だけでなく、もっと広範囲に魔王ルシアさんの恐怖を見せつけるんです! ああ、今から胸が高鳴ります!」


 ううむ……。そんな無差別に人間を殺戮するような奴だと配下になった時、困るのだが。


 とはいえ、このまま放置していても、被害が大きくなりそうだし、元魔王の幹部だった場合、魔王の俺が止めるべきなのかもしれない。


「わかった……。行くだけ行こう……」


「はい! ぜひとも味方に引き入れて軍団長を任せましょう!」


 ということで俺とザフィーラ、あと、邪神神官のベルクの三人で、例のボルガドット山に行くことになった。


 なお、ちゃんとベルクの塾が休みの時期に重なるような旅程にした。


 ボルガドット山は距離の感覚からして、100キロほど離れた南部の山岳地帯だ。


 なお、この世界では2キロほどの距離を1ナーグという単位で数えている。

 今回は52ナーグだった。


 歩くのは面倒だったので、レヴィテーションの魔法で全員空を飛んだ。


「ふもとの村に降り立って、一度地元民の情報を聞こう」


 俺が提案する。


「ルシアさん、このまま山の頂上付近まで行けますよ」


「ザフィーラ、情報収集がRPGの基本なんだ」


 基本には忠実であったほうがいい。


 山にモンスターが住み着いて困ってるってしゃべるだけのNPCの存在価値を無駄にしてはならないのだ。この世界では実在の人間なんだけど。

 それこそ、ザフィーラも無視されて魔王を倒されて寂しい思いをしてただろ。


「RPGって何ですか?」


 素直に聞き返された。

 しまった……。またゲーム用語を出してしまった。


「とにかく、情報収集は大事だ。魔王としてそれだけは言っておく」


「ふむ、ふもとの村はカルターの村といって、人口200人ほどの寒村ですね」


 おっ、ベルクは事前に下調べしておいてくれたのか。偉いぞ。


「この程度の人口なら、私のエディクト・オブ・デスで全滅させられます」


「なんで滅ぼす前提なの!?」


 ギルドの駆除以来は住民じゃなくてモンスターだぞ!


「村に行くのはあくまで情報収集が目的だ。そこを間違えないように」


「はい、もちろんです、魔王様」


 空を飛びながらうなずくベルク。


「情報を得たあとに皆殺しにしましょう」


「順序の問題じゃねえよ!」


「ベルク、少しはルシアさんのお考えを理解しなさい」


 ザフィーラがたしなめた。

 まあ、ベルクよりは俺と付き合い長いからな。


「ルシアさんは攻撃魔法で派手に壊滅させることを望んでいるの。即死魔法では疫病か何かだと勘違いされるでしょ」


「選択ジャンルの問題じゃねえよ!」


 こいつら、俺を魔王とあがめるけど、全然話を聞いてくれん……。


「村での危害を加える魔法の使用は禁止な。これは魔王命令だ」


 命令という形式で強引にねじふせた。


 カルターの村はベルクが言ったとおり、寂れていた。


 ただ、もともと田舎だったというよりは急速にひなびてしまった印象が強い。


 村人いわく、


「山にモンスターが住み着いて、通行路がふさがれてしもうたのじゃ……」


 ということらしい。


 このカルターの村はボルガドット山を通って、南部のほかの都市とつながっていた。


 まあ、ここも街道の村だったわけだ。


 そこを封鎖された形になって。村を使う利用者も激減。


 そうなると現金収入も大幅に減るから、そりゃ、寂れもする。


 ちなみに、そのモンスターは村人いわく、


「地獄から出てきたようなウサギの怪物という話じゃ……」


 ということらしい。

 あと、商人もけっこう殺されているという話だったが、事情はよくわからない。


「ウサギの怪物か。アルミラージぐらいしか想像できんな」


 村を離れて、徒歩で山に向かいながら俺は話す。


 アルミラージというと大きな角の生えたウサギのモンスターだ。


「魔王様、アルミラージが魔王軍の幹部にいたデータはないはずです」


 ベルクはデータ的なものはちゃんと調べてそうだから、信用していいだろう。


「じゃあ、幹部ではないのか」


「そもそも、アルミラージはさほど上級の魔族ではないので、高位の冒険者を何十人も倒すのは無理だと思いますよ」


 だよなあ。某ゲームだとけっこう初期で出てきた気がするしなあ。


 そんなことを考えながら、例の山に入っていった。

明日も昼と夜の2回更新予定です!

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