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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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13話 魔王、ダンジョンに潜る2

 ぶつぶつと邪神神官ベルクが呪文を詠唱する。

 戦闘特化なのか、かなりの高速だ。


「喰らうがよい! エディクト・オブ・デス!」


 あっ、これは即死系魔法だな。

 たしかに神官らしい魔法だ。


 まあ、でも、ぶっちゃけ怖くはなかった。


 普通のダメージ系魔法のほうが、よっぽど嫌だと言っていい。


 なぜなら――


 効くわけがないからだ。


「うん、なんともない」


「むっ、この魔法は魔族といっても一定の効果があるはずなのだが……」


 腑に落ちないと思ったベルクはさらに数回のエディクト・オブ・デスを撃ってきた。


 まあ、こういう魔法って確率論の問題だからな。

 使いまくれば効く奴には効く。


 何発来ても無駄だった。


「なっ……。本当に上級の魔族なのか……?」


 そうだと思います。


「あ~、ベルクって言ったっけ、君、回復魔法は使えるの?」


「あっ? 使えはするが。死をもたらす魔法と比べれば回復魔法のほうが単純だからな」


「じゃあ、あとで自分で回復してくれ」


 俺は近づいて、右腕で軽くチョップを放った。


「ぶおっ!!!!!!」


 ベルクはタイルで覆われた壁に激突した。


 だらんと腕を垂らして、崩れ落ちる。


 さすが攻撃力:99999なだけはある。


「と、とてつもない、い、威力……」


 よかった。生きてるな。じゃあ、回復は個人でやってもらおう。


「これでわかってくれたかな。わかってもらえなかったら、コミュニケーション不可能と諦めるしかないんだけど」


「ああ! ルシアさん、素晴らしいです! 私も奴隷として鼻が高いです!」


 その「奴隷として」って部分、せめて「部下として」に変更してほしい。


「不思議だ、目の前に星が見える……」


 ベルクが口走っている。


 脳震盪を起こしてるな。


 人間とほぼ同じ体をしてるから、そうなってもおかしくはない。


「これはまさか……邪神による啓示か!? 神秘体験か!?」


 なんか、すごい解釈来たぞ!


「そうか、この方が新たな魔王様ということか……。ああ、素晴らしき出会いだ! うおおおおおおおお!」


 なんか、変なもの見えてないか!?


「ああ……私は邪神神官を長くつとめてきたが、ついに宇宙の真理にたどり着いた!」


 俺、邪神とは何のかかわりもないと思うのだが……。


 ゆっくりとベルクが立ちあがった。


 微妙に目がトリップしてる人の感じになっている……。


「邪神様がおっしゃられました。一生を懸けて魔王ルシア様にお仕えしろと」


「そ、そうか……」


 目的は達成できたが、なんか落ち着かないな……。


「魔王様、先ほどのご無礼をお赦しくださいませ……」


「とりあえず、回復魔法をかけとけ」


◇ ◇ ◇


 仲間に加わったベルクから話を聞いた。


 どうやらベルクは魔王が封印されたあと、各地を流れ流れて、この北洞窟にたどりついたらしい。


 なお、北洞窟という呼称はセルリスの町の北側にあるからつけられた俗称だ。

 別に世界ダンジョン協会なんてものはないので、正式名称などはない。


 閑話休題。


 で、この北洞窟に住み着いたベルクはやがてここのボスとして居座ることに決めた。


 魔王はいないが、魔王の部下はまだ顕在だぞとアピールするためだ。


「でも、ギルドでもあまり捕捉されてないぞ」


「そりゃ、冒険者を全滅させてたら強い魔族がいるという話も広まらないでしょう」


 俺とザフィーラの意見だ。


「そ、そうですね……。私のミスです……」


 ベルクも認めた。


 最近はあまり15層まで来る冒険者もおらず、ベルクも暇だったらしい。


 まあ、にぎわってたらにぎわってたで、たくさん人が死んでるはずなので、これでよかったとも言える。


 俺も現状を話した。


 魔王としてこの世界に転生してしまったこと。


 今はザフィーラの元で暮らしていること。


 なお、表面上は冒険者として暮らしていること←これはとくに重要。


 別に魔王として世界を滅ぼす気までは、あんまりないぞ←最重要。


「わかりました。では我々で新魔王の誕生を知らしめましょう! まずは近くの町を滅ぼして、新生魔王の狼煙といたしましょう!」


「案の定、わかってない!」


 部下が増えたとはいえ、足りないものが多すぎる。


「仮に魔王の宣言をするにしてもだ、それなりの数の部下がいないとやらんからな。数人で決起しても格好悪いだろ。だいたい、毎日、魔王討伐の冒険者が家を尋ねてきても、生活に困る。今の魔王は城じゃなくて一軒家に住んでるんだとか陰口叩かれるぞ」


「たしかに魔王様が蔑まれるのは腹立たしいことです」


「なので、それまでは俺はのんびりスローライフを――」


「ここは近くの町を滅ぼして、そこに城を建てましょう!」


「やっぱり、わかってない!」


 しょうがない。

 話せばわかるの精神で説得した。


「建てるとしても労働力はどうするんだ? 城を建てる魔法なんてないぞ」

「人間を捕えて奴隷としてこき使いましょう」

「それだったら討伐軍が絶対出てくるし、城どころじゃなくなるだろ」

「言われてみれば」


 この邪神神官、賢そうな顔をしてるが、勢いでしゃべるところがあるな。


「ひとまず、ベルク、お前も地上に出てこい。で、適当に働け。なんか、こう、塾の先生とか」


 賢いからそれぐらい、できるだろ。


「人間の相手をするのは魔族として寂しくもありますが、魔王様の命とあらば」


 とにかく、これで仲間が増えたと考えれば悪いことではないだろう。


「あ、でも、お前、尻尾あるな……羽もあるし……」


 こんなの見られたら、人間はまたパニック起こすぞ。


 しかし、その尻尾も羽もすぐに消えた。


「これぐらい、ミラージュの魔法を使えばすぐ誤魔化せますよ」


 マジで? そんな簡単にどうにかできるの?


 俺はすぐに自分にも魔法をかけてもらった。


 これで帽子がなくても町を歩けるようになったはずだ。


★魔王軍の配下

現在2人

明日も昼の12時半ごろと夜11時頃の2回更新の予定です。

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