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唯一無二の《ニートマスター》  作者: ごぶりん
第1章 すべてのはじまり
1/46

プロローグ

はじめまして。

オリジナルで話を書くのは初めてです。至らぬ点もあるかもしれませんが、生温かい目で見守っていただけますと幸いです。

時間がかかると思いますが、最後まで頑張ります。

誤字訂正などありましたらどんどんお願いします。

 





 ───その瞬間、世界は静寂に包まれていた。


 10万、100万──そんな桁では足りない人影が驚きで口を閉ざす中、彼らの視線──モニター越しの物も含むが──の先では、1人の男が立っていた。


 その男は、右手に淡い水色に輝く透明感のある刀身の短剣を持ち、左手に深紅の輝きを放つ宝玉が先端に埋め込まれた杖を持っていた。

 艶のある漆黒の長袖の服は、上下揃ってゆったりとしつつも動きを阻害しそうには見えない。

 鎧などは一切装着しておらず、服に散りばめられたラメの様な煌めきが隠されることはない。

 彼が履いている靴は、爪先から踵にかけてレモン色のラインが1本走っているだけの運動靴のようだ。

 左右の人差し指には翡翠色の指輪をはめ、右手首には同色の、左手首には朱色のバンドをつけている。

 また、指輪と同色の宝石をつけたネックレスを首にかけていた。



 ──そんな様相の男の前に倒れていた、闇を体現したかの様な装束を身に纏う猫耳の人物が光の粒子になって霧散する。



 それと同時に、アナウンスが流れる。


『……たった今、キャルビン選手の死亡が確認されました。勝者、アラト選手! よって、今大会の『特級』グループ優勝は、アラト選手です!!』




 そのアナウンスから10秒ほど経った後、我に返った人々が口々に話し始めた。


「お、おいおい……《闇夜のキリニャン》が()られたぞ……?」


「トーナメント表見たけど、あいつ4つ前に《動ける固定砲台》にも当たってたぜ?」


「は、マジかよ!? 『大火力の砲撃こそ至高』とか言ってそれを実行してる、あの火力バカを倒したのかよ!? しかも『無職』の『人間族』で!?」


「そういえばあの人、《永久召喚(エンドレスサモン)》も倒してたような……」


 驚愕を多分に含んだ言葉の数々が飛び交う。



 そして、誰かが呟いた。


「すげえ……アレは『無職』の頂点……《ニートマスター》だ……」


 その呟きを皮切りに、皆がその言葉を発し始める。


「《ニートマスター》……《ニートマスター》だ! 《ニートマスター》ァ!!」


「「「ワァァァアア!!」」」



 その会場で直接見ている人達もモニター越しの人達も、全員が《ニートマスター》の名を叫び、その場その場が歓声に包まれる。



 新たな二つ名が生まれ、その男──アラトが一躍有名になり───



























 ───その2年後に、その光景を見ていた人々の大半が姿を消した。































「…………は? どこだ、ここ?」



 アラトは、()()()()()見たことのない光景のど真ん中にいた。

 いや、正確に言うならば、ついさっきまでいたはずの場所に酷似した環境だ。だが、微妙に異なる。先程までと同じ場所ではないと断言できる。


「え、ちょ、待て待て待て。落ち着け、落ち着くんだ俺。落ち着いて思い出せ。何がどうしてこうなった? 落ち着いてよーく思い出せ?」


 軽くパニクっている頭を言葉にすることで強引に冷静にしようと試みる。

 自分がある程度落ち着いたのを確認し、アラトは1つ1つ思い出していく。


 ──俺は戸賀崎(とがさき)(あらた)

 ついさっきまでVRMMOの有名タイトル、《MS Parallel Online》略して《マスパラ》をやっていた。

 プレイヤーネームは《アラト》で、このアバターがそれ。二つ名は《ニートマスター》。

 これからソロで《モスの洞窟》のボスを狩りに行く予定で、準備を整えて《メルダニンソレーロード》を歩いてた。

 《モスの洞窟》も略称で、正式名称は《モンデスコワの洞窟》。

 ………うん、間違いなく全部覚えてる。


 …………。


 ……………。


 ………………。


 ……ならどこだよここは!?





 アラトの記憶には、こんな道はない。


 アラトは《マスパラ》をやり込みまくっている。

 このゲームは、とあるしょうもない理由で街やらダンジョンやら道やらの名前が全て《MS》と省略することが可能なので、名前まで全て覚えているかと聞かれると首を捻るしかない。

 だがしかし、その風景からどんな特徴があるか言うくらいは可能だ。

 例えば《メルダニンソレーロード》の光景を示されれば、《モスの洞窟》が途中にあり、道の両端は《メルドクサンの街》と《ムクソリー村》に繋がっている、という情報を何も見ずに言えるくらいには風景を覚えているのだ。

 どうしても固有名称は怪しい部分もあるかもしれないが。




 なのに、この道は確実にゲームの物と別物だと断言できる自信がある。


 ならここはどこなのか?

 そもそも、このゲームをしていて気を失うなどということはあり得ない。


 《マスパラ》ではできる限り危険を排除するため、プレイ時に失神すると強制的にログアウトさせられる。

 PK──プレイヤーキル──はシステム的にできないが、MPKは可能だからだ。昨今のMMOにしてはPK禁止は珍しい仕様と言える。


 だが実際問題、アラトは()()()()()()ここにいた。

 つまり、一瞬は気を失ったということだ。


 ならここはアラトの──いや、現実の新の部屋なのか?

 ………そんなわけがあるか。こんな緑豊かで広大な部屋に住んでいる人がいたら名乗り出てほしい。絶対に写真を撮りに行く。

 ということは、ゲームの仕様が告知なしで変更されていない場合、ここはゲームではなく現実(リアル)でもない空間ということになる。



 そこまで考えて、アラトは試していないことがあるのに気がついた。


(ログアウト試してない。落ち着いたつもりになってたがまだ慌ててたか)


 アラトは心の中で舌打ちし、メニューを開いてログアウトボタンをタッチ───しようとして、ログアウトボタンがないことに気がつく。


 アラトの額に青筋が立ち、同時にGMコールも存在していないことを確認。

 額の青筋が消滅。怒りを通り越して呆れ返った。



「おいおい、どうなってるんだよ」


 そう独りごちて周囲を見回すと、人影が視認できる。


「あれま、人がいることに気づかないとは。焦りすぎだな。まあちょうどいい、あの人にも話を聞いて────」



 状況を尋ねるため、アラトが人影に向かって駆け出そうとした時────頭の中に声が響いた。





『異界の戦士達よ。(わたくし)の声に耳を傾けなさい』



「っ!? 何だこれ、パーティーチャットか!?」


 そう口にしつつもそんなことはあり得ないのは自分が一番よくわかっている。

 今アラトはソロなのだ。パーティー内での即時会話を可能とするパーティーチャットを使えるわけがない。



『異界の戦士達よ。私は神。この世界、《マーダースクラップ》の女神です。私の話を聞きなさい』


「はい?」



 混乱の最中にいきなり、とても上から目線で高圧的で傲慢な性格をしていることが滲み出ている、一言で表すなら高飛車という言葉がしっくりくる声音と口調の、自称女神の電波な演説が始まった。



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