嫉妬するのは可愛いライバル。
夢に出てきた甘いケーキと珈琲、その名前を思い出す度に眠くなる。どういうケーキと珈琲なんだろう。甘くて幸せなケーキ?苦くて格好いい珈琲??どっちがいいの??
今日はホワイトデー。
女性がバレンタインのチョコを送り、男性がホワイトデーに返す習慣の日。
そんな中ティアナはぶすっと頬を膨らませて怒っていた。
母とレアが雑談しているところだった。
「レアさん、彼女は居ないのぉ?」
そう言われて困ったようにレアは笑う。
ティアナの視線が痛い。レアは適当に誤魔化してティアナの方を向く。
―ふんだ、レアなんて知らないもんね。
15歳になったのに、レアは相変わらずだ。
今日がホワイトデーだと言う事忘れてるなぁ?
ティアナは助けて欲しそうに見るレアを敢えて無視する。
「とにかく!今日はティアナの勉強観に来ただけなので!」
「ええー?」
喋り好きな母はやっぱり私と好みが似てるらしい。お父さんがいるのにね。
レアはそう言うと、ティアナの腕を引っ張って勉強部屋に二人きりになる。
「…レアさ、忘れてない?」
「ホワイトデー?」
ティアナはもっとぶすーっとした顔でレアに一言「何でもないですよー」と言う。
「お返し何が良い?」
「…え?それじゃあ…」
そう恥ずかしそうに俯くとじっとレアの顔を見た。
「ぎゅーっと…抱きしめて欲しいかな…」
「そんなんでいいのか?」
どきっとした。レアの顔が段々近づいてくる気がする。
ティアナは硬直したままで。
レアは段々近づいて来て。
その時ばっと何かがレアの着てた洋服から飛び出した。
二人は顔数センチでぴたっと止まる。
「にゃー」
悪気のない猫の声が響く。
「…今日は…ホワイトデーだからな」
「…え?え?」
そう言うとレアはティアナの前で猫を抱えて、猫の両腕をつかんで「こんにちはー」と挨拶した。
ティアナは勘付いた。本当はこの猫こそがホワイトデーのプレゼントだったのだ。
恥ずかしいことを言ってしまった。顔がかあっと赤くなる。
「まあ、今は貰わないで置くよ」
偉そうに言うと猫を強引に奪う。
猫はレアには懐いてたのに、途端にティアナの顔をひっかいた。
…なるほど、小さなライバルだ。
―レアはふと別のことを考えてた。
クレハと同じように笑う別の女の事。
ああ、重ねてるなぁと感じてしまう。
本当に大好きな彼女はここにいない。
レアが殺めてしまったから。
ティアナはそれを知らず笑う。
愛しくて疎ましいティアナ。
~~~~~~~~~
「あ、メシア君、今度出かける時の話なんだけど…」
そう言うとメシア君はふっと優しい笑みで電話越しに声が聞こえてくるような気がした。
初めてレアじゃない「男の人」にドキッとしてしまった。
「メシア君が良ければ…だけど」
何を言ってるんだろう。可愛いライバル(レアがくれた猫)が咎めてるように見えるけども…
「当たり前だよ。約束ね」
「うん!!」
メシア君は優しい。今日レアとお母さんが話してるだけで嫉妬してしまい、大人の気にしないクレハさんみたいになりたかった。と言う物の、私はクレハさんを何を知ってると言うんだろう…。
不安の波が押し寄せて私に甘美な誘惑が誘う。
メシア君は優しい。そう繰り返して私は猫を抱きかかえてそのまま寝てしまう。
夢でレアがやたらに優しくて、私は甘い気持ちになるの。甘ったるいケーキは、体に毒で人間が本質を見極めて食べてるのかは別だよねとメシア君が…言って…たような……眠。
ホワイトデーは…何だか甘いケーキと珈琲が夢に出てきた。
甘いメシア君という名のケーキ。
昔から実は好きなレアという名の珈琲。
珈琲がやたら苦い。
加筆しました!!ホワイトデーに間に合わなかった~(TT)すいません。