香水の香りが導くのは甘くて苦い過去。
ティアナ、俺はお前が可愛くて憎いよ。優しくて、素直で純粋で、自分の事を帰り見ずに行動出来るお前が。そんなお前に抱く感情を許して欲しい。※香水に酔いしれる蝶々の続きです。
香水の瓶をティアナから受け取るとレアは愛おしそうに香水の瓶を抱きしめた。
「何してるの?」
「何でもない」
自分でも可笑しかった。彼女は帰ってこない、ティアナの前で何をやってるんだろうと。
「香水、大事にするね」
そう笑顔で微笑まれたら。抱きしめたくなる。人に餓えた獣みたいに彼女を甘やかして甘やかして、傷つけたくなる。
「…俺の誕生日は忘れるなよ」
自分でも恨めしいと思った。ティアナは絶対忘れないだろう。そういう子だ。
彼女は忘れる方だった。毎年毎年けろっと「そんな日あったっけ?」と言う物だから気にしてるこっちが馬鹿に思える。
でも、ティアナは、
「絶対忘れないよ」
そう眩しい笑顔で言うと、「勉強しよ」と言うのだった。
漂う香水の香りは、クレハ<彼女>との時を思い出させる。
クレハは香水は友達から貰ったと話していた。
しかし、数日後、彼女が他の男と歩いてるのを見た。
問い詰めると、「ごめんね、あれは男の人に貰った物なの」と少しすまなさそうにしていた。
ティアナは香りの通り、対してクレハは、ある意味「大人の女」だった。馬鹿にしてるわけじゃない、どこか冷めていた。
一歩人と距離を置いて付き合い、男と会ったり、女友達と遊んだりしてもどこか寂しげな顔をしていた。
彼女のその原因は、娼婦の母と亡くなった父親のせいだろう。
香水はそんな彼女を寄り引き立てて、色んな人を近づけていた。
彼女は明るい、勉強こそ出来ないが、愛着があった。
ティアナと似てる。
明るくて、優しくて、人懐っこい、純粋で無垢なティアナ。
いや、似てないか。レアは苦笑いする。
クレハは、明るくて、優しくて、人懐っこいが、純粋無垢とは少し遠かった。
一見二人ともそっくりだが、よくよく見ると中身はかなり違う。
-それでも、重ねてしまう。
香水を送ることで、その匂いが俺とティアナの仲を強固にしてるようで、独占欲が体中を走る。
彼女は俺と居て楽しかったんだろうか?
彼女もティアナも楽しげに笑うけど、本当に?
「…ティアナは俺と居て楽しいか?」
一瞬「クレハ」と言いそうになって焦る。
焦燥感が走る。
「当たり前じゃない、私はレアの事大好きなんだから!」
そう言ってくれてるのに、香水の匂いが邪魔をする。
ティアナからする彼女の匂いは、
「許されると思ってるのか」と言われてるようで、
殺めた彼女にいくら謝罪したところで彼女は帰ってこない。
ティアナの面倒を見ることで自己満足の「癒し」を得る。
何て傲慢。何て我が儘。何て自己中心。
それでもこの香りが消える時間までは側に居たい。
次会った時は、この香水の匂いを忘れていたい。
香水はそんな俺を見透かしてるように漂う。
ティアナは何も知らずにこにこと微笑んだ。
ああ、神様、居るなら俺が彼女を殺めませんように。
一気に更新です。実はね、YUI~優衣~の続きが思い浮かばなく苦難中。