香水に酔いしれる蝶々。
誕生日おめでとう?ありがとう、レア。貴方が隠してることを聞きたいとは思うけれど…不安にさせないで、貴方が大好きだから。
ティアナがレアのバックの中で見たのは香水の瓶だった。
あまりに綺麗だったので持って帰ってしまったのだ。
「ううーん、どうしよう」
レアはティアナの家庭教師。ティアナは14歳。
子供にしか思われていないのは分かるけど、こんなことをしたら怒られるに決まってる。
甘いフルーツ系な香りかと思っていたが、よく嗅ぐとフルーティというより爽やかな香りだった。
大人のキャリアウーマンがつけてそうな大人びた香りだった。
「ううーん、今日レアが来る日なのにどうしよう」
自分にそっと香水をつけてみる。同じクラスの大人っぽい女の友達に教わった通りに付ける。
ふわっと香りがして「ああ、自分女なんだ」そんな心地の良さを感じた。
少し大人になった気分だ。
そういえばその友達はこうも言ってた気がする。
「匂いってのはね、男を誘うのよ」
何て意味深な言葉を真っ赤になりながら聞いていた。
ティアナは自分の中でレアとそんなことを考えてみた。
「ティアナ、好きだよ」
…恥ずかしすぎる。考えるのを止めよう。
「宿題やらなきゃなぁ」そう言うと机に向かう。
自分がこうして宿題や勉学を衰えないのにはわけがある。
それは簡単なわけだ。レアが好きだから。レアの家庭教師以外はいらない。勉強したくない。
成績が下がると、レアに親が叱られてしまうかも知れない。それだけは嫌だった。
「…レアさん、着たわよ、ティアナ-」
「ま、待って!今行く-!」
宿題を終わらせて正解だった。レアはもう着ているという。香水の瓶を慌てて隠す。
「ティアナ、お久しぶりだな、宿題はやったのか?」
「当たり前だよ、レア!」
最近はテストがあったせいで中々会えなかったが、久々に会うレアはティアナにとっては格好良く見えた。
正直に言うと、レアは端麗という顔でもないし、特別格好良いというわけではない。
しかし、ティアナにとってはその黒髪も、うっすら目尻のシワも、大きなその手も、真っ黒な瞳も綺麗に見える。
レアはティアナがあんまりまじまじ見てくるので狼狽した。
レアは思う。何故こんな綺麗な長くさらさらな銀髪にルビーのような赤い目をした少女がどうして自分に興味があるのだろう?そう思う。
レアはふっといつもと違う様子のティアナに気付く。
そわそわと落ち着かないのだ。
ティアナは目が合うとぎこちなく微笑む。
…ああ、そんなところまで彼女と同じだと思う。
俺が殺めた女性はティアナそっくりの美女だった。
家庭教師を始めたのもそれが理由だった。
「…香水の話なんだが」
「ひゃぉっ!!?」
ティアナがあまりに変な声を出す物だからやはり言わない方が良かったかと思った。
ティアナは香水の香りがばれたのかとひやひやした。
「…あれな、人にあげるつもりだったんだ」
「…え?」
香水を男性が男性に送るわけない。…誰に?新しい彼女?
心臓がどくどくする。
気持ちが走り出した。
「レア、私以外に香水なんて嫌だよ-」そう言うと、ティアナは泣いた。
間に合え間に合え、レアに彼女が出来るくらいならもう何も要らない。
「…馬鹿」レアがそう言うと、そっと箱をティアナの手の上に乗せる。
大きくも小さくもない箱を思わず開けると意外な物が入ってた。
それは先ほどの香水と同じ瓶だったからとっても驚いた。
よく見ると、香水の名前が少し違う。―あ、とティアナが感づいた。
レアは香水を間違えて買ってしまい、新しく買ってきたのだ。
香水は種類や名前が同じでも、細かな所が違えば全然香りが違う。
「誕生日だろ、今日」
「…!」
ティアナがそれを聞くと、嬉しくて涙が出そうだった。
「香水返せよ、お前にその匂いは早い」
「あ」
ばれてたんだとティアナは悪戯がばれたかのように舌を出した。
「ごめんごめん」
「嗅いで見ろよ」
そう言うと、さっきの香水の爽やかな香りと違って甘い桃のような香りがした。
レアが言うには「ティアナのイメージで選んだ」らしい。
私にあの香りは遠いけど、いつか…そう思う。
レアはティアナの喜ぶ顔を複雑そうに見つめてた。
なぜならその香水の瓶の持ち主は元々…
「彼が殺めた女性のもの」だったから。
俺はティアナの喜ぶ顔が見たいと嘘ぶりながら、本当は彼女を求めてるんだ。
彼女が付けていた香水は本当うざったるいくらい大好きだったから。
「ありがとうね、レア!大好き!!」
この話元々お題用だったので、何か似たり寄ったりですが、話は徐々に動きますので…ライバル君お待ちな方はもう少しお待ち下さいvV