その名前は誰なの?聞きたくないのに、教えて欲しい。
クレハってだぁれ?私に重ねてる人はその人なの?好きなの。愛してよ。私だけの…レアだから。元カノなんかに渡さないもん。
それは激しい雷雨の日だった。
ティアナとレアはそんな雨に閉じ込められたように、レアの部屋に居た。
ティアナが迎えに来たところ、雨が酷くなったのでレアの部屋に来たのだ。
ティアナはまるで初めて宝石を見たような楽しそうな目を輝かせて、こう言う。
「レアの部屋、初めてだねぇ!」
「そんなに俺の部屋が好きか?」
そんなティアナに呆れるようにレアは言う。この部屋は最後ティアナに会う前に遡る部屋だった。
それはレアが殺したティアナとそっくりな恋人の住まう家だった。ティアナに悟られてはいけないと、レアは彼女が暮らしてた部屋を大雑把に片づける。
「うん、大好き!」
汚れがないなぁとレアは思う。こんな汚れた部屋でタバコ臭い部屋なんて普通の女の子が喜ぶ部屋じゃないはずだ。
にもかかわらず、ティアナは表情をくるくる変えて踊るように今本棚を見ている。
「あー、何この本!レアの馬鹿-!」
そう言うと本をレアの顔に投げ飛ばした。どんな本かはここで敢えて書くまい。
「別に良いだろ、いってーなぁ」
レアはつっけんどんに言ってる割には楽しそうだった。
珈琲を入れようとすると、ティアナが邪魔をしてきて、なんだかんだ言って仲の良い雑談が始まる。
それはいつものティアナとレアの会話そのものだった。
レアはこの部屋をどんな風に過ごすんだろう…想像するとおかしい。
きっと規則正しい生活とはほど遠い。夜は遅くまで起きて、テレビにかじりついて、PCでインターネットをする。
そして朝目覚ましを止めて、昼間はどこかの講師をしてるに違いない。
だからこそ驚いたんだ、君の一言がこの涙を止まらなくするなんて。
「ティアナが想像するにはほど遠いほど俺の日常は正しいぞ」
レアはそう言うと、手に持ってた珈琲が入ったコップを優しくティアナに渡す。
「…レアはさぁ、私と会う前何してた?」
「そうだなぁ、毎日6時に起こされてそれからご飯と体操だ、そして昼飯と工場で雑業…」
ティアナはさりげなく言った一言をまじまじと聞いて、レアに問いかけた。
「そうじゃなくて!私と会う前!何をしてたのって聞いてるの!」
「何怒ってるんだよ」
ティアナは責めたいい方を止めるとレアの頬を撫でるように包む。
「…クレハ…」
―何それ誰の名前?
レアは失言した感じで後ずさった。
ティアナは次の瞬間、何と泣き始めた。
「俺の昔は聞かない方がいい」
そう言うと、ティアナを抱きしめた。
レアの胸は温かくてずっと抱きしめられたかった。
「ねぇ…雨が止むまでこうしててね」
ティアナはそれだけ呟くと更に泣いた。
「ティアナ…分かった」
「約束だ…よ?」
上目遣いで涙目で見つめてきたが、
次第にぎゅうっと顔を胸にぽすんと沈める。
「…」
レアはそんなティアナをぎゅっと力をこめて抱きしめる。
レアも泣きそうだった。
お互い泣いたら忘れられそうな気がしたが、自制が嫌なほどに傾いた。
許されない俺の罪―…。
ティアナは知らないから。俺の事。殺した恋人を君と重ねてるなんて。何一つ知らないから。
それが目当てで家庭教師を見た瞬間に、志願したのも俺だから。
ティアナ、ごめんな…。
雨は止みそうにもない。
何か毎回シチュエーション違いですが、段々話は動いていきます。
元カノさんは偉い美人です(あ、後ろから軽く殴…ぱた)