番外編。貴方が綺麗だから、こそ。
メシア君の番外編です。彼は、諦めてるのか微妙なラインにいつも立っております…(((((@@)
「そっか」
ありがとうと言ってくれた。何でそんな残酷な事を言って退けてくれるんだろうと苦虫をかみ砕いた気持ちになった。
ティアナ、好きだよ、貴方が。
そんな俺を、貴方は許してくれますか?
「じゃあ、そのままご両親に挨拶に?」
携帯の主は、寂しげに笑う。1人暮らしの家のアパートのベランダ。天気が良いので、あの後洗濯物でも干そうかとか思ったけれど、そんな気分になれなかった。結局自分は選んで貰えず、紹介した友人も振られて、
実はさっきまで、貴方の「元」旦那にくだ巻かれました。なんて言えるはずもなく。優しい振りをして、貴方に手を出せない俺もお前も情けないね。と、励まし合ったのは彼女には言えなかった。
「そっか、心の広いご両親だね。でも、本当は分かってたんでしょ?」
そう言うと、電話の相手が苦笑するのが聞こえる。
「やっぱりね」
そんなの見てれば分かるだろうな。あんな寂しそうな顔を時折見せて…それでも強がる貴方はいつも「幸せだから」と俺の前でも、友人の前でもニコニコと笑う。
たまに悪い男が君に寄ってきていたけれど、放って置けば狼に食べられちゃうのに、俺も友人も君を放って置けなくて、赤ずきんの狩猟さんになった気分だった。
最後、君は、レアって言う狼に食べられちゃったんだけどね。
ダークホースが現れて、君を攫って、狼も君が好き。万々歳なお話が気に入らなくて、君を苛めてしまうんだ(どういう風に苛めるのかは書かないけどもね…)
君のその柔らかな唇に指を滑らせ、本当に抱きしめて攫いたかったよ。
友人も同じ事を言っていた。
情けない、父に全て奪われて、俺には残る物が無い。
「じゃあ、一緒にもう住むことも決まったんだね。へぇ」
その「へぇ」に怒気を孕んでしまったのかもしれない。
怒ってる?と聞いてくるティアナに、「怒ってるよ」と言えたらいいのに、「何でもないよ?」と笑い声を交えてしまうのがとても嫌だ。俺はレアなんかより、ずっと好条件だし、貴方が俺と別れた理由がレアなんかだと思うと腹立つんだけど?本当の理由もふわふわしてる釈然としないものだって、貴方は気付かれてないふりするけど、俺が気付いてないとでも?
そりゃ、友人も手垢なんか付けにくいし、本当に小悪魔だよね。
「一緒に住むとなると…ティアナは、毎晩お世話しなくちゃいけないわけだ」
恥ずかしがるティアナ。愚かで可愛いティアナ。横で聞いてるのがレアだと思うとゲスになってしまう俺を少しは分かってよ。
「レアは本当に頼りないし、心も狭いし、俺何かより…」
気付いたら、比較対象が俺になってる事がとても恥ずかしく、声が途中で途切れて、貴方が困ってるのが分かってしまうから、余計苛々する。でも、外はまだ夕方に近くて、そうだと思いついて、「俺と夕飯行こうよ」と誘ってしまう。まだ、ティアナは実家暮らしで、レアとはまだ棲まない。
戸惑った声が聞こえて、断ろうとするのを「俺、今日逃げるの助けたよね?あれの借りを返して欲しいなぁ」と意地悪を言って呼び出す。
約束した待ち合わせ場所で、貴方を待つ。
女の子がどう見てくるのかももう分かってる。
けれど、貴方が来た途端に心奪われる。
貴方は誰よりも綺麗な女の子だよ。どんなに遠くでもティアナが分かる。
「お待たせ」
貴方は許してくれますか?貴方のことが今も好きだなんて。
これ、続きます。何か前回終了したときものすごいアクセスありがとうございます。メシア君編が落ち着いたら、旦那様編も書きたいですね。