貴方との最終論。
やってきた結婚式。貴方の横で感じる幸せを大事にしたい。どうせ来ない。そう思うのに、何で招待客を眺めてしまうんだろう。
「わぁ、ティアナ、綺麗!!」
今日は私の結婚式。晴れやかで大安を選んだ事から、いい日になると思う。綺麗な白いチャペル、庭にはプール付きのとにかく広い所を選んだ。レアが…レアが側で「おめでとう」と言われるは辛いから。
白いチャイナドレス風のウェディングドレス。スリットは浅め。ミニスカートのひらひらしたレースが可愛い。私の旦那様は別の部屋で私が着替え終えるのを待って居る。
友人みんなが私のドレス姿を褒めてくれて、
「でも~、旦那様、メシア君の友人なんでしょ?」
「メシア君振って、今のお医者様と知り合えるなんてラッキーだったねぇ」
ラッキーなんだろうか?正直メシア君を振った事は、後悔してないと言えば嘘になるんだけども、私的に…レアの血が流れてるメシア君を受け止めきれる事が出来なかった。メシア君は、いつも私を大事にしてくれていた。デートはいつも車道側を歩いてくれて、ホワイトデーは毎回凝った…一生懸命悩んだであろう物を貰い、誕生日は必ず祝ってくれ…
メシア君が大学生になり、少しずつ「医者」狙いの女の子がメシア君を狙い始めた。メシア君は全部断ってくれていたけれど、本当はレアの事なんて口実で、メシア君にはもっといい人と付き合って欲しいと言う理由で別れた。
メシア君は「分かった」とだけ言って、今の旦那様を紹介してくれた。今の旦那様は結構年上で、格好良く、長身で身のこなしが軽やかな大人の男性。優しいけれど、出来ない事をそのまま放置するとすごく怒る。一人っ子の私にとっては、お兄さんみたいな恋人。
レアのようにドキドキはしないような穏やかな愛情。でも、それが嬉しくて、大学を卒業したとき、親身になって相談事聞いてくれて、彼の教えてくれた所は、看護婦の試験で必ず出た。
その試験の次の日。合格発表は必ず大丈夫だから、僕のお嫁さんになってと綺麗なプラチナのダイヤの指輪をプレゼントしてくれた。
私は勿論と応えた。
「ティアナ、旦那様来たわよ」
母が声を掛けてくれた。この綺麗な恰好を見た貴方はどんなこと言うのかな?
「綺麗だよ…ティアナ、僕はこんな綺麗なお嫁さん貰えるんだね」
「え…大げさだよ…?」
「その言い方、可愛くないな。僕のお嫁さんには自信持って貰わないとね」
優しく、諭してくれて、頭のベールの花をこつんと叩く優しい人。
一つ甘えを言うなら、メシア君に思ったように私でいいのかしら?とも思うんだけども、彼は散々私の駄目な所も見てるはずなので、生涯のパートナーに選んだんだ。
「ありがとう」
「そう来なくちゃ」
~~~
結婚式が始まった。
みんなが拍手してくる中、私はお父さんのエスコートで腕を組みながら歩く。先にいる旦那様が近づく。私は招待客をちらりと観て、「レアは来ないかぁ」と少し寂しく思った。初恋の人。すごくすごく好きだった。
でも、私は…
「貴方は病めるときも苦しいときも汝を愛し抜く事を誓いますか?」
「はい」
「では、指輪の交換を…」
その時閉じていた外のチャペルのドアが開いた。
「ティアナ!」
「ちょ、困ります、お客様」
何やら揉めていると冷静な頭で思うより先に、
心の奥の何かが久々に痺れた。
レアだ、レアだぁ…!久しぶりに訪れたドキドキに…私は戸惑ってしまうの。
「誰…??」
「結婚式なのに…??」
ざわざわ招待客が騒ぎ始めた。
「ティアナ、俺、ティアナが今でも好きだ!!」
その甘い大声で吐かれる台詞に、胸が痛い。
「クレハの所にはハッキリ行って振られて来た!!好きだ、好きなんだ…!!!」
だって、そのチケットは私がメシア君に渡した物。こんな風にならないって一縷の望みを託した夢へのチケット。結婚する前に貴方がクレハさんと、上手く行かなくても、ずっとクレハさんを愛し続けて、私の事は忘れて欲しい、と願う心を流れ星に唱えたように。
流石に異変に気付いた結婚式のスタッフが入り口をふさごうとしている。
「しょうがないなぁ、借りだよ、父さん」
立ち上がってスタッフを止めに入るメシア君。
メシア君は強そうな男性スタッフを背負い投げして、
「今の隙に!!」とチャンスを作ってくれた。
私は気が付いたら、目でレアを追って、駆け出しそうな所に旦那に腕を掴まれた。
「ティアナ、君は、僕と…」
「ごめんなさい」
「…あの男が、僕より相応しいと?」
「そう寂しそうな顔をしないで、貴方が悪いんじゃないの。
私はやっぱりレアが好き。
相応しいとか、そんなことよりも、ね、レアは私が居ないとダメなの。
貴方は1人でも生きて行けるから。」
「苦労するよ?こんないい男振ってさ…?」
「いいの、苦労も苦労で楽しいもの」
ニコッと微笑むとね、貴方は手を離して、背中をとんと押してくれたの。そんな優しい貴方は私の最高のお兄さんだよ。
「行けよ」
「今までありがとう」
長いベールを結んで、貴方の元へ飛び込むように抱きついて、一緒に私とレアは手を繋いでチャペルから姿を消した。
「はぁ…は…もう追って来ないな」
「滅茶苦茶な事しちゃったね…はぁ。レア、お姫様抱っことかしながらが、良かった、馬鹿レア」
「馬鹿言うな!ぎっくり腰で逃げられなかったら恰好悪いだろ!!」
クスクス2人で息が絶え絶えになりながら、笑い出して、土手の近くのコンクリートにどさっと2人で背中を預ける。
「綺麗だね、桜散っちゃったねぇ」
「…ここは、初めて会った場所だよな」
「そうだっけ??」
「ティアナを初めて見たときに、家庭教師になろうって言った場所。」
「懐かし…」
その言葉を紡ごうとして、レアの手が私の手に触れた瞬間。
レアは、唇を唇で甘く包む。
「はっ…」
もう一度、
「んんっ…?」
何度でも、
そのキスが落ち着いたときに、「好きだ、一生側に居て。」と耳元で囁かれた。左手の薬指、レアはパールの綺麗な指輪をはめてくれた。
「クレハさんのパーティはいいのかな?」
「お前…性格悪くなってない?」
「色々レアが酷い事したからね。お返しだよ」
その瞬間私からもそっと小鳥のキスをする。
「えへ…」
ビックリして、恥ずかしそうに真っ赤になるレアが可愛い。
何でこんなに好きなんだろう。
「クレハはルナって子供が居て幸せに暮らしてるって言ってた。『愛してるなら、奪うぐらいじゃないと男はダメなのよ?私の旦那みたいにね』と幸せそうな顔されたら、行くしかないだろ。」
「へぇ~?」
「嬉しそうにニコニコするなよ。勿論、クレハは覚えてなかった。だから、ティアナの事を相談したんだ。
―好きな女性が結婚してしまう、どうしたらいい?って。」
「うん」
「プロポーズしなさい!って、ずっと前から用意してたから…サイズが合うか分からなかったけど…ずっと重ねてたけど、今はティアナが好きだ。
ティアナはクレハよりも…ずっとずっと魅力的だよ。勿体ないぐらい。何で比べていたのかも分からないぐらい。
ティアナ、貴方は俺が隣にいるのを…
貴方は許してくれますか?」
「許します」
嬉しそうに微笑むと、抱き留めてぎゅっと強くしがみついた。もう、クレハさんと比べないで、私だけ愛してね。これからは貴方の隣でずっと耳元で囁くから。
今までお付き合いありがとうございました。ようやくこの作品も終わりです。番外編のメシア君とか旦那様の話も書くかも知れません。ラストを変えたいと思っていたのですが、力量不足で申し訳ないです。