どちらか選んで、クレハ?ティアナ?どちらとるの?
結婚式当日の誘惑です。
今日はティアナの結婚式。
学校は偶然にも皮肉にも、何故か当日丁度休みだった。神様が意地悪してるようにしか思えない。振られてしまえ、とか、体調不良になれば行けないのにとか、女々しいことばかり考えてしまうのだが、一回こっきりで、更には彼女の大事な日なんだからと気を引き締め、顔を水でバシャバシャ洗って、タオルで荒く拭くと、そこには年取った自分の姿だけが映っていて、虚しかった。
パジャマから着替えて、シャツのボタンを一つずついつもより丁寧に、その後ジャケットを羽織り、ネクタイをきちんと絞めて、バッグを片手にお財布やらご祝儀やらハンカチやら詰める。
行く途中でやけにバッチリ目が合う人物が居た。
メシアだ。
こんな時間にここに居ると言う事は、自然とメシアが結婚相手ではないことを匂わせる。
「父さん、待ってたよ」
「何、言ってるんだ?」
「やっぱりティアナは言わなかったんだね」
何を言ってるのか分からない。メシアはチケットを手渡すと、「どちらか選んで」と一言だけ言った。
肩をぽんと叩くと、ニヤッと笑う姿に何故か怯えた。悪い予感しかしない。
手渡されたチケットは、結婚式の隣で行われるパーティのものだった。そこに写る写真は、
「クレハ…?」
少し年を老いた貴方が、あの時殺したはずの貴方が、とても美しく、そのチケットを二度見した。同じ時間、同じ顔の女性をどちらか選べとメシアは言う。
「あの時の子は俺だよ、父さん。母さんは死んでないんだよ、海外でデビューして別の人生を歩んでる。ティアナもクレハも貴方を捨てたんだ。貴方のせいで俺もね」
「何…??」
頭が真っ白になる。え、じゃあ、俺とクレハとの間に生まれた子供は、彼女と共に生きていたのか。よく見れば柔らかい雰囲気や声が綺麗なところや、なんだかんだ俺にもクレハにも似ていた事に気が付くのが遅すぎた。
「言うか悩んだんだけど、ティアナは俺と別れたんだ。そっくり過ぎて、レアと重ねてしまうって。全然似てないのに、貴方<レア>の息子を身代わりには出来ないからって。
ティアナは、今でも貴方が好きかも知れない」
「結婚するのに?」
皮肉に感じてしまう。メシアが嘘を言ってるようにも思えないけれど、知らないことが多すぎた。今は混乱していて、チケットと招待状を二度見する。
「だからだよ、貴方には前から腹立っていた。選んで、ティアナとクレハどちらをとるのか。招待状で中のパーティに入れたら、母さんには話は通してある。どのみち、母さんはもう結婚して子供も居て、貴方のことなど覚えてたとしたら奇跡だろうね。」
クスッと寂しげに笑うメシア。
俺はどっちをとるんだろう?
ぐらりと精神が揺れる。
俺が―選んだのは。
最初の設定と大分変わりました。後数回までお付き合い下さいv