貴方を解放したい。欲望からも、過去からも。
メシア君の申し出に、私は頷くの。だって、貴方の目を観れば分かるから。
「メシア君は、知っていたの??」
「ごめん、知ってた」
電話先でもどかしく、ティアナさんと直接会うことにした。
「うちの母親はいつも時が止まってるんだけど、女優で他の国では有名だから、ティアナさんを見た時はビックリしたよ。」
かしゃとティーカップを口に移動する仕草。
一瞬、母さんと声を出したくなるぐらいそっくりで。
でも、違う。母さんは、俺の事なんて覚えて居ない。
どうでもよかったし、クレハの親戚に引き取られた俺は、何の苦労もなかった。
写真で観た君の顔。そう知っていた。
でも、何故か恋に落ちた。
そっくりだけど、演技以外は無表情なたまに俺に会いに来る母親。その全てが義務めいていて、新しい恋人とすぐに再婚した癖にと嫌味の一つも言いたくなってしまう。
もう子供も居て、幸せそうにしている。
「だから、最初は…ティアナさんの事大嫌いだったよ?
母親にそっくりなのに、全然違うし、可愛いし、綺麗だし、真面目だし…
俺もレアの事言えないんだ、ごめん」
立ち上がると、メシア君は堂々と私に礼をして、気が付くと片手を差し出した。
「そんな事情がある以上、勝手だけど、ティアナさんを巻き込めない。だから…
別れて欲しい」
「うん」
冷静だった。全てが止まったようなスローモーション。
でも、私だって、メシア君がクレハさんの子供だと知っても、付き合えるのかは分からない。でも、分かったの。
クレハさんはもう再婚してるし、レアが知る必要はない。
多分知らせても苦しめるだけだ。
きゅうっと、手を握る。
「それでも、私はメシア君と…付き合いたい」
驚いた顔で、私の方を向くと、明るい笑顔でお互い微笑んだ。
「レアの事は思い出にして…大事にしてくれる貴方と付き合いたいの。
これからよろしくお願いします」
はにかんだ顔で、ティアナさんが立ち上がり、
「やったー!!!」とメシア君が人目を憚らず抱きついてきた。
メシア君の目を観れば、「私」の事が好きだって信じられた。
レアの目には、今も…クレハさんが棲んでいた。
だから、レアを解放してあげたい。
貴方は許してくれますか?ねぇ、レア。
私の甘く痺れる密かな欲望も、過去からも。
もう一度繰り返す。貴方を解放したい。欲望からも、過去からも。
まだ続きます。字が間違ってましたね、直しておきました!