貴方を信じていいのですか?
これが真実?何が何だかもう分からない。誰か…答えを教えて。
「ティアナさんはそれでいいの?」
メシア君の優しい声が心に響いた。初めてじゃないレアの喧嘩。でも、これがきっと最後だよ。
「いいの。レアには私何か居ない方がいいんだよ」
涙が出てくる。好き。レアが大好き。
好きだけど、
「クレハさんは生きてるんだもん…っ」
零れた嗚咽をメシア君は電話先で受け止めてくれた。
「どういうこと、ティアナさん?」
遡ればバレンタイン。私は知らない男の人に声を掛けられた。
「君、アイドルとか興味ない?」
「…ないです」
「ええー、いいじゃない、君、クレハとそっくりだからさ!」
「クレハ…さん?」
耳がぴくっと動いて振り返る。付いて行くのは危険そうな軽薄な雰囲気。
「そうそう!!」
「お話ならそこの喫茶店で…そこじゃないと聞きません」
「お堅いな~!」
場所を指名して、私はすたすた喫茶店に歩き出した。
クレハさん、貴方は、
ひょっとして生きてるの?
ドクンドクン、心臓が嫌な風に響くの。
「クレハさんがって…」
二人で騒がしい煙草の香りのする喫茶店に…ごほっと煙草でむせ返してしまいそう。早く終わらないかなと同時に、じっくり疑いを晴らして何もなかった事を喜びたい私も居て。どちらにも傾かない気持ちは前者後者どちらなんだろう?
「うん、クレハの若い頃の写真」
「これって…」
差し出された写真には、今の私そっくりな顔立ち。今の私の身長ピッタリ。スタイルも良さそう。な女の子が写ってた。
「クレハはね、昔恋人に刺されて記憶を失ってるんだ」
「え…!?」
もしかして、レアの事!?と訊くまでもなく分かってしまう。
「手術で綺麗に跡が残らないような体にしたんだけど、あまりに綺麗だから、俺も、色んな業界の子も、沢山アプローチして、彼女は遠くの異国で、女優になった。彼女は殺されてることになってるから、元の恋人はきちんと捕まったけどね。」
ずっと言いたかった一言。
「じゃあ。じゃあ…クレハさん、何で刺されたんですか?」
さっきまでの軽い雰囲気が段々重くなる。
「クレハは、君の側に居るメシアの母親だ。」
「嘘…!」
いきなり重くなる事実に嘘だとしか言えなかった。
「メシアが最初に近づいたのは、レアと同じで、君が放って置けなかったんだよ。でも、どちらも君を好きになった。俺に事実を話して欲しいって泣きつかれてね。」
嘘でしょう?そんな身近に居たの?
「…っ」口が塞がらず、心臓が逆流してしまいそう。
「レアは、クレハの浮気癖に加えて、自分の子供じゃないかも知れないと知って思いあまって刺したんだ。それが15年前。クレハは結局一人で異国に行って、身ごもってたメシアを産んだんだ。」
15年前、「レア、あたしね、子供が出来たの…」
「本当かっ!?」
話を聞いていく内に鮮明に思い出されるあの結婚式の写真。
「結婚話が進み、無事に式を終えた二人は…」
「ごめんね、貴方の子供じゃないかも知れないの…」
そう言われて裏切られたレアって、その後…
「聞きたくないっ!!」
ガタッと席を立つ。
元よりその声が響いても、騒ぎ立てる人は居なかった。
「クレハが、メシアを産んだとき、それまで穏やかにメシアを待っていたのに、クレハは絶望で記憶を無くした…
自分を刺した男の子供だと知って…ね」
止めてくれない。
これが真実。
「ティアナさん…?」
何でそんなに優しいの?レアもメシア君も、と同時に、
その声を信用してもいいの?と生まれて2度目の人を疑った。
続いて書きます!