導かれたたった一つの答え合わせ。
レア、今まで私に嘘を付いていたの?騙していたの?そんな貴方を信じられない。
押し黙るティアナを、泣きそうな顔にしたのはいつだって俺で。
誰とデートしようが、誰かを好きになろうが、誰と付き合おうが、俺は何の権利もない。彼女を勝手に重ねて、彼女を思えば思うほど、お前に申し訳なくて、全てを話す事が出来ない俺を軽蔑するよな。
「ティアナ、俺は…
人を殺したんだ」
俺の部屋に2人きり。ティアナの親もメシアも邪魔しない、お腹をさすろうと近寄ると、ティアナは悲しそうに俯いた。
「知ってたよ?」
「え」
「ずっと知ってた。多分、その人と私を重ねてるんだなって知ってた」
何で?そう思い、訊こうとしても…訊く権利すらないのか。
「レアの部屋に前に上がって、バレンタインのチョコレートを置いて行ったとき、偶然レアの押し入れからこれが出てきたの」
そう言って差し出したのは一枚の写真。
「クレハさんって言うんだよね?」
あのぎゅうっと抱きしめたときに漏らした愛おしい人を呼ぶような、あの甘い声で、私を「クレハ」さんと間違えた。
「ただの恋人だけなら、何で家庭教師になったんだろう、何で恋人を殺したんなら、ハッキリ言わないんだろう?ってずっと考えてた。
でも、この写真、結婚式の写真だよね?」
綺麗に写るティアナそっくりの綺麗な容姿をしたウェディングドレスを纏った姿、その横にタキシードを着て今では見せないような若々しさ。
幸せそうな顔で写ってる。
「何で…なの」
ぽつり、と雨が降るように、ティアナが泣き出した。
「何で?最初から私をからかってたの??」
慰めて抱きしめて、言い訳を始めるのか?
このまま、彼女を放って逃げてしまいたい。
でも、それではもうティアナは誤魔化せない。
あの、幼い時の入学したてのティアナは、すっかり綺麗な1人の「女性」となって、俺の前に現れたんだから。
「からかってない。でも…全てを話せない。」
「それで、待ってたら振り向いてくれるの!?」
「ティア…」
差し出した手をぱんっと叩かれた。
じんじんと手が痛む。これは、リアルなんだ。ずっとこの答えを受け入れられなかったのは、俺だけじゃない、ティアナもで。
「いい加減にしてよ!!!ティアナが好きだとか嘘付かないで!
ずっとずっと、クレハさんが好きなんだ!
これから先?」
怒った顔から急に無表情になって、口先で笑った。
絶対零度のティアナを初めて見て、どきりと心が乱れた。
「クレハさんは貴方が殺してもう居ない!!」
ずきんと心が引き裂かれた。痛い。叫びは止まらない。
「そんなのに勝てる訳ないよ…私、レアの事それでも好きだった。好きだった…けど、受け入れられないよ…私をいつまでも女扱いしてくれないのに、都合のいい時だけ呼ぶ貴方が信じられない。さよなら、もう家に来ないで」
彼女はお腹を苦しそうにさすりながら、立ち上がり、俺の前から…
消えてしまった。ドアを開けたとき差した光が、俺を地獄に突き落とした。
これが、現実。これが今。これが罪。
今、初めてティアナをずっと裏切ってた事を悔しく思う。
「ごめん、ごめんな…
ぅっ、うぅうあああああ!」
嗚咽が止まらない。痰を切ったように吐き出される涙。
彼女はもう俺の前にはきっと二度と現れないだろう。
今までありがとう。ありがとうな。
部屋で横になりながら、私はとある携帯の番号を押し出した。
「メシア君…あのね、私…
メシア君と付き合う」