気付いたのは鈍い女心。痛むのは弱い自分の心。
何考えてるのか分からない。私自身が?彼自身が?この関係はどこまでも同じなんだろうか。そんなの嫌。私は前に進みたいの。
バレンタイン。
私はレアに告白しようとこっそりハートの大きなチョコレートを用意した。
手作りで実は料理があんまり得意じゃないから、湯煎の時にお湯が零れてきて火傷したり、チョコレートを刻むときケガしたり、散々だったけど何とか出来た。
美味しい美味しいチョコレート、レア食べてね。
そう思い、バレンタイン当日ににこっそりレアの家に行き、ドキドキしながらチャイムを押した。
ひぇえええ~、ドキドキして死んじゃうよ!
そんなオーバーな事を考えながら、長いなと思って留守なのかなと思いつつ明かりは付いている。その隙に黒い薔薇の手鏡とクシで髪を直して、レアから貰った香水をもう一度付ける。
でも何故か出て来ない。
心配になってきた。
レア、ひょっとして風邪とか?強盗?それとも…
他に女の子連れ込んでたりして…!?
最初の2つは許せたとしても、3つめはやだ!と思い、慌ててドアを開けた。
バタバタ、上品じゃないと思いつつも履いてた靴をぽいっと投げ脱ぎ、レアのリビングの部屋のドアを開ける。
「レアッ!」
そこに居たのは…
「何だぁ」
安堵の表情でホッとする。レアはリビングのソファーで1人ゴロゴロしながら寝ていたのだから。レアをたたき起こして渡そうという気にならなかったし、テーブルにはビールが山ほど。
何か嫌なことでもあったのかな…?とも思ったけれど、大人ならそう言うときもあるのかな?分からないけど。
てきぱきとビールの空き缶をビニール袋にまとめて、レアの部屋を開けて、毛布を出そうと押し入れを引っ張り出す。
ついでにこのドキドキした時間を無駄にしたレアを掃除機を掛けた音で少し起こしちゃおうかな~何て、意地悪な事を考えてしまったけれど、それは気の毒だなぁと思い、近くにあったタオルを濡らしてソファーの横のテーブルを拭くことだけにしようと思って、レアの横に立ちながら前屈みになってテーブルを拭く。
よしと思い、レアに横に畳んで置いて用意してあった毛布を上から掛けようとそっと近寄ると、
「レア??」
レアの寝ている瞳からは涙がツーッと流れて…苦しそうな表情に変わる。
この人を差し置いて、私他の人を好きになるなんて出来る?
恋心、そしてこの人を泣かせた全てから守ってあげたい。
同時にクレハさんが心にまだ居るんじゃないかって思う。
どんな人かは本当に知らない。レア。
私を子供扱いしないで。
前まで子供扱いされても、女として扱って貰えなくても、良かった。
けれど、いつまで私たちは一歩歩んでは後ろに後退する関係を続けてればいいの?私に全てを受け入れられるの??
気付いたら、マシュマロを押しつけられたみたいな感覚に襲われて、そっと目を開けて観れば、綺麗に片付いたテーブル、ゴミのまとめたビニール袋、掛けられた毛布…ティアナしか思いつく人が居ない。友達も誰も居ない。親ですら電話も掛かってこない。
手紙に「レア、バレンタインのチョコレートだよ。良かったら食べてねVv」その文面に気のせいかなと思いつつ、先ほどの唇の感覚を思い出した。
それと同時に、自分のか、ティアナのか分からない塩水が頬には伝う。
ホワイトデーが来るまでに、何があったのか聞くべきなのか?聞かざるべきなのか?と思いつつ、ホワイトデーに渡すべく、自分の貯金から頑張った可愛いティアナみたいな雌猫を一匹飼うことにした。白い、銀色の毛並みの赤いルビーのような瞳、可愛いなぁと思う。
その時に聞くかなんて、夜になって忘れ物をしたとき、ティアナの電話の内容を聞いて唖然とした。
他の男とデート。
そんなこと出来ない子だと勝手に思ってた。
女ってどうしてこう…なんて思いながら、どこかで純情で可愛いティアナをいつまでも子供扱いしていた事に気付いたのは遅かった。痛むのは弱い自分の心。
重くてすいません。今思うと題材があまりに重すぎるなぁと思います…(TT)バレンタインの話を載せ忘れてた事に気付いて。書き足したら止まらなく…(汗)