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群像

黒日

作者: ゆう

青く光る月が視界に入り僕は夜が来た事に気づく

月を掴もうとしたら太陽は嫉妬してくれるのかな

そんな事を考えながら手を伸ばす


太陽に向かって進むレースで僕は荒野に

始めは規則を飲み込ませた、オブジェクトの動きを刻んだ

でもレールの向こうから暴走列車が向かって来て僕はあわてて脇にそれた

もともと未練なんてなかったんだ

落下速度は分かるのに何が落ちているのかはわからないから

僕は進む、昼の荒れ地を

太陽は僕から逃げながらも、忘れないでと温かみを残すことを忘れない

途中で出会った羊飼いに言われたんだ

君は何も知らないねと、僕は何も分からなくて口に手を当てる

何だって疑える世界で、その概念すら疑える世界でどうしたら良いのと

僕は吐き気に襲われる、くそったれと漏らす声すら僕にはもう信じられない

うずくまって呻いていたら周りは急に暗くなって

胸にしみる夜が来た

さあ

逃げよう逃げよう逃げよう逃げよう

現実から、昼から、太陽から、そしてなにより自分から

僕は瞼をゆっくり下げる


夢の中で僕は一人、微睡む液体の中で一人

月の満ち引きと共に一人、いつだって一人

僕にはもう分かっていた、太陽には手は届かないんだって

現実を噛みしめていた、夢の中で僕は一人


嫌な夢を見た、嫌な夢を見た。

僕が諦め竦んだ時に、立ち上がれなくなった時に

彼女は僕に近づいてこういったんだ。

「愛してる」

僕は皆が君を追っているから格好だけで追ってただけだ

「愛してる」

僕にそう言うつもりはない

「愛してる」

僕は君が好きじゃない

「愛してる」

それに君だって僕なんて本当はどうだって良いんだろう?

「愛してる」

だから

視界が暗転する

「僕は君を愛していない」

「愛してる」


僕は暗い世界に二人、夜ではない液体の中に二人。

液体に響くその声が僕には愛おしく感じられた

甘い甘いその声は太陽のように優しさに満ちている


僕は湖に落ちた月を見る

そこに君は居るんだね

ここに僕が居るんだよ

「僕は君だけを想おう」と

言って揺れる水面に手を触れようとしたとき

彼女の光はそのまま、まるで水に染みこんでいくように消えた

僕は黙って水をすくって飲み込んだ。


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