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二の黒

~戦い~


「こんな感じか……」


思い付く限りの型を実用レベルまで引き上げ、満足行くレベルまで刀の扱いに慣れた頃。後は実際に戦ってみるしか無いのだが、そうなると唐突に恐怖が込み上げてくる。


あまり現実感の無い状況にいきなり陥って混乱していたから今まで冷静に行動出来た訳で、時間と共に今の現状に現実感が出てくると恐怖を感じざるを得ない。


「何でだよ……。俺が何したってんだよ!」


激情に任せて怒鳴ってみるものの、それで事態が変わる事は無い。そんな事は分かっているのだ。だが、この理不尽さに怒りを覚えずにはいられない。


「ぜってぇ殺す……。殺してやるよ、邪神!」


全ての怒りの矛先を邪神に。その関係者に。軽い気持ちで俺を召喚した事を後悔させてやる。奴に絶望を、恐怖を、消滅を。


「復讐だ……」


俺は、邪神に復讐する。その為には力を付けなければいけない。黒人形如きに恐怖している場合じゃない。


拠点を出て、黒人形を探す。幸い黒人形は大量に居るようで、拠点から少し走った所に3匹の黒人形を発見。場所は普通自動車一台がギリギリ通れる位の道幅で、無数の脇道が伸びている。俺は脇道に潜み、刀を抜いて黒人形が目の前を横切るタイミングを待つ。


そして、その時は直ぐにやってくる。俺の居る脇道の前を通ろうとした黒人形が刀の反射で俺に気付く。だが黒人形が行動を起こす前に首を横に一閃。プツッと皮膚が切れて、刀身が筋肉繊維をブチブチ引き裂いていく。そして骨を削り絶ち、また筋肉繊維を引き裂いて皮膚が斬れる。鳥肌が立つ“生物を斬る感覚”が刀を伝わって俺の手に居座った。それでも刀を放さなかったのは、俺に敵意をぶつける“黒人間”が怖かったから。武器を持って少しでも自分が生き残れる確率を上げておきたかったから。


黒人間が1人死に、その1つ奥に居る黒人間が俺に襲いかかってくる。そのイメージ通りの攻撃を避けながら脇腹を斬りつけようとして手が止まる。人を斬る恐怖が、俺を襲う。地面に転がる凹凸の無い黒い顔が俺を嘲笑う。首を斬り落とした感覚が俺を責める様に甦る。それでも、俺は保身というぐちゃぐちゃに汚れた選択肢を選らばなければならない。


黒人間の後先考えない右フックを食らい、反射的に後ろに飛び退く。何度も繰り返した仮想敵との戦いの動きが身体に染み付いているようだ。その動きに従って本能的に、無防備な黒人間の胴を切り上げる。人を斬る感覚が再度俺を襲うがなんとか動きを阻害しない様に努める。しかし力んだ身体では浅く斬るのが精一杯だった。


「クソッ!」


覚悟の決まらない自分に腹が立つ。だが身体は自動的に飛び上がり、落下の勢いを乗せた唐竹割りで黒人間を二分割する。


地面に足が触れると同時に地を蹴って、2つになった黒人間の間を通って残りの黒人形の胸に突きを放つ。自動制御で放った突きは上手く胸骨を突き破り、風船を割った様な感触で心臓に突き刺さる。そのまま勢い良く身体を右に回転させて刀を斬り抜こうとして、突然の衝撃が俺と刀を壁に叩きつける。


肺が痙攣して呼吸が出来ない。後頭部を打った衝撃で視界がチカチカと点滅する。そのまま回復を待つ俺の視界に、黒人間が多数入り込んでくる。集まった黒人間達は俺を囲み、一斉に飛び掛かってきた。


暗くなる視界の中で俺が感じたのは安堵と、激痛と、無念だった。

次回、二の白~要求~

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