勇者にも変化
北方戦線。
結界都市カルディア。
空は澄んでいた。
風は安定。
視界良好。
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だが異変は静かに始まっていた。
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「……結界出力が揺れている?」
後衛のミアが眉をひそめる。
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通常あり得ない現象。
勇者がいる限り結界は絶対安定。
それが前提。
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アルテリオは黙って空を見上げる。
確かに揺れている。
極めて微細。
だが感覚として明確。
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「敵襲ではありません」
管制役が報告する。
「外部干渉反応なし」
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結界の揺れ。
原因不明。
これが異常。
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前衛のガルドが低く言う。
「魔族の新型か?」
ミアが首を振る。
「違う」
短い間。
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「……性質が違う」
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結界表面。
本来均一な魔力層に、
わずかな歪みが生じている。
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アルテリオが静かに問う。
「内部要因か」
管制役が困惑する。
「理論上、存在しません」
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勇者結界は内部誤差を許さない。
それが設計思想。
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だが現実として揺れている。
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ミアが小さく呟く。
「……分岐が増えている」
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アルテリオが視線を向ける。
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「未来の収束が甘い」
「あり得ません」
管制役は即答する。
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勇者系能力の根幹否定だから。
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だがミアは続けた。
「確率が閉じきっていない」
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空気が変わる。
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勇者アルテリオは、
初めてわずかに眉を寄せた。
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「原因を探れ」
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即座に演算展開。
広域観測。
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そして。
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「……該当因子、検出不能」
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勇者結界に干渉する存在。
検出不能。
この時点で規格外。
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ガルドが低く笑う。
「初めてだな」
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アルテリオは答えない。
ただ空を見る。
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揺らぎは続いている。
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微細。
だが消えない。
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ミアがぽつり。
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「……世界のどこかで、何かが増えた」
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断定ではない。
感覚。
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だがアルテリオはそれを否定しなかった。
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遠く離れた場所。
まだ彼の知らない地点で、
未分化型干渉が拡大し始めている。
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勇者はまだ知らない。
だが確実に影響を受け始めていた。
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空は澄んでいる。
敵もいない。
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それでも。
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結界は静かに揺れ続けていた。




